2019/06/21 (金) 20:30
中川誠一郎(熊本85期)が3度目の特別競輪制覇を飾った岸和田G1高松宮記念杯競輪。リオデジャネイロ五輪に、共に出場した脇本雄太(福井94期)が早目に先行した。一番強い先行型の番手を回れば、有利な展開になるのは想定内だろう。準決勝が終わった時点で、脇本の後ろは中川だと、コメントを聞くまでもなく、決まっていたと思う。中川も基本的には自力選手、九州地区の選手と一緒ならつくことはあろうが、他地区の脇本とは気心が知れていたからこそ目標にしたのだろう。リオデジャネイロ五輪では結果を残せなかった脇本と中川だが、それこそ2人にしか分からない絆を感じた。
タイトルは二つ獲って本物と、言われるが、中川は三つ目。それも2月の別府G1全日本選抜競輪に次いでの優勝だ。2019年になって、ここまでG1レースは3回行われているが、中川が2回、脇本が1回という結果に終わっている。また、ナショナルチームかと思うのは短絡的である。ブノア・べトゥがナショナルチームのヘッドコーチに就任して、本格的に始動したのはリオデジャネイロ五輪後からである。現在の脇本の強さはナショナルチーム仕込みではあるが、中川は違う。日々の鍛錬によるものが大きいのだろう。
岸和田競輪場は6月24日〜26日のF1開催後、約2年近くは休止になる。バンクを全面的に改装するという。岸和田は過去にKEIRINグランプリ2014を開催するなど、全国屈指の競輪場でもある。KEIRINグランプリ開催時は歌手の長渕剛にテーマソングを依頼し、当日は長渕が競輪場で歌ったと、記憶している。やることが大胆と言うか、ファンが何を求めているのかを分かっている印象。中途半端なイメージキャラクターは作らず、一点豪華主義に徹しているように思える。
売り上げは84億9,116万9,800円で目標の87億円には到達しなかったのだが、3日目を終わった時点で知人の記者は「80億円には届かないだろうね。70億台後半だろう」と、分析していた。恐らく、知人の記者に留まらずに関係者も70億円台は覚悟していただろう。それが終わって見れば、最終日に32億9,000万円以上を売り上げ、85億円に僅か届かずという数字にまで押し上げた。ここに岸和田競輪場の底力を改めて感じられた。確かに、目標額には届いていないが、成功といえる大会ではなかっただろうか。やはり、やる気のある施行者、ここで言うやる気というのは、ビッグの開催だけではなく、常日頃の開催からやる気があったということ。だからこそ今回の結果(辛うじてと、言わざるを得ないところもあるが)につながったと。
ただ、一つだけ残念だったことがある。最終日に行われたガールズケイリンのエキシビションレース=GIRL’S KEIRIN NEW COMERである。7月にデビューする新人の上位7人、日本競輪学校(現・日本競輪選手養成所)の在校成績上位が争ったレースだ。今や売り上げでも中心的な役割を担っているガールズケイリン。ファンは新人を興味深く見たかったはずだ。しかし、誰が誰なのか全く分からなかったらしい。筆者が知り得る範囲では、スポーツ新聞はエキシビションレースに出場する選手を掲載していなかった。
今回はエキシビジョンレースということで車券発売はなく、スポーツ新聞に求められている予想とは無関係だっかも知れないが、これではせっかく盛り上がったレースも意味があったのか?という疑問に感じてしまう。ファンに対する意識が高い岸和田競輪場だけに、ここだけはどうしても筆者は納得がいかなかった。これは岸和田競輪場の考えなのか?あるいはJKAの判断なのか?それは定かでないが、少なくともガールズケイリンの今を考えれば、出場選手の名前くらいはスポーツ新聞に載せるべきだったのではないか。もちろん、スポーツ新聞側の判断も疑問符がつく。日頃からガールズケイリンを大きく扱っていながら、エキシビションレースとなると無関心なのであろうか?これまでにも何度か指摘してきたが、業界の進むべき方向性が分かり難い。些細(ささい)なことではあるが、一層の注意を関係者に望みたいところだ。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター