2018/12/19 (水) 19:56
ガールズケイリンのアイドル的存在として活躍していた小川美咲(静岡106期)が9日にツイッターで引退を発表。15日には地元の伊東温泉競輪場でトークショーを行い、ファンに引退を報告した。集まった数多くのファンからは引退を惜しむ声ばかりで、中には涙ぐむファンもいたとのことだ。
2012年7月、ガールズケイリンが華々しく復活した。1期生には加瀬加奈子(新潟102期)、中村由香里(東京102期)、渡辺ゆかり(山梨102期)、小林莉子(東京102期)など実力に加え、他競技での経歴も凄い面々がデビュー。2期生は女王の石井寛子(東京104期)らが。そして、小川は3期生だった。3期生も高木真備(東京106期)、奥井迪(東京106期)などタレントは豊富だったが、真っ先に脚光を浴びていたのが小川だ。アイドル顔負けは言い過ぎかも知れないが、普通に可愛く、愛くるしい笑顔でファンの心を鷲掴みにした。高木とのポスターは森の妖精をイメージしていたもので、そのポスターをファンが取り合った。今では超レアなものとなっているだろう。
デビューは2014年5月で、その年のオールスター競輪で行われたガールズケイリンコレクションにはファン投票で選出された。この時は元モデルである1期生の田中麻衣美(新潟102期)も選ばれており、さながら人気投票の様相ではあったが、男子もファン投票で選ばれるオールスターなのだから問題はなかっただろう。ただ、小川自身は相当悩んだらしい。選ばれたことは素直に喜べたが、周囲の目が厳しかった。「実力もない小川や田中が何でビッグレースに出られるんだ。優勝経験者やコンスタントに決勝に勝ち上がっている他の選手がいるだろう」との声が上がった。小川自身が好んで走るのではない、ルールに則り選ばれただけなのに、やっかみは半端ないものであった。スポーツ紙の記事からだが、小川は集団でゴールできればいいと、考えていたそうだ。
当時のレースをグリーンドーム前橋でライブ観戦したが、小川は5着と、力を出し切ったように思えた。2年後も選ばれたが7着、この2レースが小川のキャリアハイとなった。
可愛いだけではない、優勝こそなかったが、車券の対象になる成績は残していった。ところが、突然の結婚と妊娠。小川ファンは奈落の底に突き落とされた感じであったことだろう。相手は野原雅也(福井103期)で、高校時代から付き合い始め、愛を育んできたという。2017年には長女を出産、そこから1年以上を要して、懸命に復帰を目指してきたのだが……結果的には「小川はバンクに戻ってくるのだろうか?」というファンの不安が的中した形になった。本人は最後の最後まで復帰を目指していたらしい。しかし、夫の野原雅也が落車をして鎖骨を骨折、その夫の姿を見て引退を決断したとのこと。
デビュー前から新聞やテレビで注目され、ガールズケイリンPRの中心的な役割を担ってきていた。正直なところ、彼女の走る姿はあまり印象に残っていない。前述のコレクションの時くらいだろう。どうしてもガールズケイリンではなく、他のメディアで取り上げられていたことを思い浮かべてしまう。それは彼女にとって本意ではなかったかも知れないが、競輪界においては重要なことであっただろう。4年間で挙げた勝利数は8勝と、特筆するような多さではない。それでも、小川がガールズケイリンに残した大きく確かな足跡はズッと、忘れられることはないだろう。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター