2018/05/21 (月) 16:58
世間一般的に入学式シーズンは4月となるが、競輪の世界では5月になる。今年も未来のスター、オリンピックを夢見る男女が日本競輪学校の門を叩いた。内訳は男子115回生70人、女子116回生20人で、9日に入学式を終えると14〜15日には早くも試走会が行われた。タイムが特に優秀な生徒にはゴールデンキャップが与えられ、ゴールデンには届かないものの優秀な生徒は白帽といった具合に以下は黒帽、赤帽、青帽に振り分けられる。
今回はいつもと違うことがあり、思わず驚いてしまった。何かと言えば、優秀なタイムの生徒に報奨金が出るというシステムが導入されたのだ。競輪学校はプロの競輪選手になるための養成機関であり、ここを卒業しなければプロにはなれない。卒業までに試走会1回、記録会4回があり、ゴールデンキャップは1回につき20万円、要するに5回全てゴールデンキャップだと100万円。5回連続ゴールデンキャップだとさらに100万円の特別ボーナスまで付くらしい。白帽は1回10万円、ボーナスもある。このボーナスオプションは色々なパターンがあるのでここでは割愛する。
言いたいのは果たして生徒に現金を支給するということが妥当かどうかなのだ。報奨金自体は悪いことではないと考える。ただ、それは五輪や世界選手権、競輪で言うならばバンクレコードを出したなどの場合であって、競輪学校の生徒となるといかがなものか?生徒は間違いなくモチベーションが上がるだろうが、なぜ報奨金を出すのか意図が個人的には全く見えないのである。現役の選手とこの件に関して話す機会も得た。
「考えられないですね。じゃあ、今までは何だったのか?どうして今、お金を払う必要があるのか理解できない」
これは1人が語っていたことではない、複数の選手が同じような反応を示していた。
報奨金の意図は何なのか?この報奨金制度が発表されてからハッキリとした説明がなされていないように思える。生徒のモチベーションを上げるためだとしたら、それは大きな間違いであろう。百歩譲って記録会ではなく、ナショナルチームに直結するハイパフォーマンスディビジョンに選ばれた生徒に報奨金を出す方がいいと思ってしまう。そう、あくまでも百歩譲っての話しである。基本的にプロになるための学校で、鼻先にニンジンをぶら下げるやり方は違和感しか残らないのではないか?と、筆者は感じてしまうのだ。
結局、今回の試走会でゴールデンキャップ獲得者は出なかった。白帽に関しては女子で1人、男子が6人だった。115・116回生の生徒たちに聞くことはできていないが、生徒達は報奨金制度に大歓迎だろう。決して楽な道のりではないけれども、“高収入”というのも一つの魅力。それが競輪選手としてデビューする前から最高で200万円を得られる可能性があるのだから、目の色を変えてタイムを狙うのは当然だ。まだこの制度自体があまり知られていないが、今後、様々な意見を聞いたうえで議論が必要になるだろう。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター