2018/03/29 (木) 10:26
久しぶりに日本競輪学校の卒業記念レースに足を運んだ。
修善寺の競輪学校で行われるのかと思っていたが、最近は学校ではなくて、南関東地区の競輪場で行われているそうだ。なぜ南関東に限定されているのかは分からないが、今回は伊東温泉競輪場であった。
第113回生(男子)、第114回生(女子)の卒業記念レースは桜が満開に近い状態の中、3月22日〜23日の2日間。今回、注目を集めていたのは第114回生の日野未来(奈良)で、入学直後でもある昨年5月の記録会において200mFD・400mFD・1,000mTT・2,000mTTの全種目で素晴らしいタイムを記録。今期生で唯一のゴールデンキャップを獲得した逸材でもある。しかし、タイムが良くても勝てないのが競輪の難しいところだ。在校中の競争訓練成績は女子21人中で9番手。結局、日野は卒業記念レースでも予選(3回戦の着位が少ない上位9名)を突破できず。4走目となる選抜戦、学生生活最後のレースでも勝てなかった。ゴールデンキャップの名が泣くとまでは思わなかったけれども、残念だと思うと同時に、改めて競輪は深いものだと痛感した。
第114回生の優勝は栁原真緒(福井)で、この栁原を指導する師匠はG1優勝歴もある市田佳寿浩(福井76期)である。予選1回戦で不覚を取っての3着スタートとなった栁原だが、2回戦と3回戦は圧勝して、決勝も落ち着いた走りで見事に頂点へ立った。栁原以外で気になったのは寺井えりか(北海道)と佐藤水菜(神奈川)の2選手。シクロクロスの女王(全日本選手権で8回の優勝)という肩書を持つ豊岡英子(大阪)は決勝には進んだものの、決勝戦ではいいところが見せられなかった。自転車競技歴が長いというアドバンテージの反面、シクロクロスと競輪では自転車の漕ぎ方からして全く異なる。それを約1年でかなり修正していることからセンスは伺えるのだが、37歳という年齢を考えた時にこれからトップに立つのはかなり難しいのではないかなと、個人的に感じたりもした。
第113回生は順天堂大出身の藤根俊貴(岩手)が決勝戦を制したが、正直なところ第114回生と比べると若干おとなしい印象。一概には言えないが、男子で今後の活躍が期待できそうな生徒は現時点では絞れなかった。
卒業記念レースを初めて競輪場で観ることになったのだけれども、プラス面とマイナス面があったように感じている。まずはプラス面だが、この日の伊東温泉競輪場は場外発売を行っていた関係で、場内では数多くファンの姿が見受けられた。競輪学校での卒業記念レースならば、観戦するのは生徒の家族や友人、練習グループ程度に限られている。車券を買いにきたファンが、その合間に生徒のレースを観ることができる。また、走る生徒たちも目の肥えたファンの前の走ることで、いい緊張感を保ったままレースに臨めたに違いない。
逆にマイナス面だが、これは本当にお粗末なもので「あと5分で車券の発売を締め切ります」のアナウンスが平気で入る。そして、その後はお決まりの音楽(車券販売の締め切りを知らせるために徐々にテンポアップ)が流れ出した。さすがにレースは車券販売の締め切りの時間帯と被りそうな時は一時中断していたが、それこそバンク内での表彰式で日本競輪学校校長・滝澤正光が表彰状を読み上げている際だったり、総評時にもアナウンスは場内どころかバンク内にも響き渡っていた。
約1年間に及ぶ学生生活の総決算、辛いことや苦しいことを思い浮かべながら3着までに入った生徒たちにはもちろんのこと、他の生徒たちにもあまりにも失礼ではないか。表彰式の時間をずらすか、アナウンスを車券売り場近辺だけにするとか、少し考えれば良さそうなものである。こう思うのは筆者だけかも知れないが、生徒たちの心情を察すると本当にかわいそうだった。晴れ舞台を台無しにされたと、感じた生徒もきっといたことだろう。
卒業記念レースをどこでやっても構わない。ただ、実施する以上は細心の注意を払うべきであろう。このレースの主役は誰なのか?は言わずとも知れている。主役の生徒たちが最後まで気持ち良く走り、一生の思い出に残る卒業記念レースにするための努力を一層、関係者に望みたいものである。
Text/Norikazu Iwai
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター