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【松浦悠士の信念】グランプリで目指すは“ただひとつ” 年初に書いた「賞金王」だけ

2022/12/27 (火) 20:00

 みなさんこんにちは、松浦悠士です。今回は小倉競輪『朝日新聞社杯競輪祭(GI)』と地元広島競輪『ひろしまピースカップ(GIII)』の振り返りを書いていきたいと思います。また、年末のKEIRINグランプリ2022に向けての意気込みや心境なども記していけたらと思っています。

地元連覇達成! 頂上決戦KEIRINグランプリ2022へ(撮影:島尻譲)

調子の“良し悪し”感じられなかった競輪祭

 まず初めに競輪祭についてですが、開催を通じて調子の良し悪しが感じられないシリーズでした。初日だけは調子の良さを実感しながら走れたのですが、あとの4走は調子が良いのか悪いのか、常に「?」がついている状態でした。例えば準決勝当日ですが、レース前のアップ中は「いい感じ!」とコンディションに自信を持っていたのですが、いざレースになってみると「あれ…重たいな…進みが悪いな…」となっていましたし、感覚がなかなか定まらなかったです。

 その準決勝ですが、事故レースにしてしまったことを反省しています。後ろから勢いをつけて踏み込んでいけば吉田君の外を超えていけるだろうと考えて走っていたのですが、踏み出した時から違和感があり、うまくいきませんでした。アクシデントの前、僕の想像以上に吉田君が上がっていたので、つい内に行ってしまい、その結果落車してしまいました。いつも落車のない安全なレースを心がけていますが、危険な判断でした。今一度気を引き締めて、事故のないレースを心がけていくつもりです。

最終周回ホーム付近、アップ時とレース時の感覚の違いに苦しんだ(撮影:島尻譲)

壮絶なもがき合いが印象的

 気持ちを切り替えて臨んだ最終日ですが、落車の影響は体よりも自転車に出ていた感じで、セッティングも不十分でした…。ただ1着を逃してしまった理由はレースを見過ぎてしまったこと。あのレースの菊池君と犬伏君のもがき合いは壮絶でした。レース判断としては「もがき合いの決着がつくまでは仕掛けられない」という感じでしたが、後ろから2人の張り合いを見ていて釘付けになってしまったのも正直なところです。ぶつかり合う意地と意地の迫力を眺めてしまいましたね。すごく印象的です。

「ダメだった次のレースが大事なんだ」と臨んだ最終日(撮影:島尻譲)

 この競輪祭でグランプリのメンバーが決まり、「難しい展開になってしまった」と感じました。僕は当然ですが裕友を応援していましたから、結果は本当に残念でした。でもそれを言っても仕方のないことですし、「グランプリのことじゃない、まずは目の前の地元記念だ」と考えを整理しました。広島に帰ってからしっかりとセッティングを修正・確認して、僕にとっては何より大切な地元記念に集中しました。

昨年とは違った地元記念

 競輪祭から帰ってからシリーズ中には出なかった痛みが出てしまい、1週間ほど練習ができない状態に陥りました。でも前検日の直前の練習では感触が戻り、昨年同様に気持ちを入れて開催に入っていきました。でも完全優勝した昨年とは違い、今年の地元記念は苦しい状態が続きました。初日6着の結果でしたが、レースで踏み込んだ感触は悪くなかったのですが、その後がイマイチ。どこが悪かったのかと振り返りましたが特に思い当たらず、「寺崎君も坂井君も強いから思い通りにいかなかっただけなのか?」と切り替えて2日目に臨むことにしました。ですが、この2日目で走りに違和感を覚えて、「すごく感覚が悪い…!」と気が付きました。1着こそ獲れましたが、これでは優勝は厳しいと感じる違和感でした。

 車輪に原因があると考えたので準決勝はグランプリでも使おうと思っていた車輪に交換して挑みました。それでも物足りない感覚は払拭し切れずに…。でも初日・2日目よりも良くはなっていたので、決勝も車輪を交換してベストを追求しました。この決勝でやっと満足のいく感覚を得ることができ、結果にも繋がりました。ただ、グランプリはどの車輪で走れば…? という問題が浮上したので、平塚には2つのタイプの車輪を持って行こうと思います。バンクや天候などあらゆる環境を考えて最適なものを選ぶつもりです。

準決勝レース後、ファンの声援に応える松浦選手(撮影:島尻譲)

大きな感謝を胸にグランプリへ! 広島、最高!

 決勝は研太朗につく選択もありましたが「自分でやる」と決めました。人の後ろにつかないと決意してからの研太朗は甘さがなく、テーマを置いて頑張っていることはレースにも表れています。選手は完全に自己責任の中で戦っているので、ブレない方針が固まるとレースの中でできることを探り、最善の力を発揮するようになる場合があります。同地区同級生として、今のスタイルを応援しています。とはいえ、この日は別で戦う以上は対戦相手です。絶対に負けたくないと思って走りました。

 レースは犬伏君が後ろからになったので、「犬伏君の3番手を確保しなくてはならない」と考えました。坂井君が切ってくるならそれを切るか、切ってこなかったら中団で合わせて出て行かないといけないな、とイメージして走っていました。そしてタイミングが来たので3番手確保に動いたと同時に、気配があったので確認すると研太朗でした。「あれ、研太朗は真後ろにはいなかったはず…」という感じ。研太朗が位置にこだわり取りに来ているのか、と思いましたね。ここにも甘さがなかった。

 打鐘付近ではペースも早く、犬伏君の先行は確定的でした。ホームでは研太朗も車間を開けていたし「捲りに行くだろう」と考えました。このあたりのレースはしっかりと見えていて、研太朗が行かなかった時には自分はここで行くというタイミングも見えていましたし、冷静にゴールまでのイメージができていました。

4番車が原田研太朗選手、その後ろ1番車が松浦選手(撮影:島尻譲)

 最終直線では坂井君が迫ってきていましたが、日ごろからあの最終直線の形は意識して練習もしているので、うまく走ることができたと思いますし、ハンドル投げも効かせることができました。ゴール直後は押し切ったよな? あれ行かれたのか?とわからなかったですけど(笑)。

 観客席のみなさんがすごく喜んでくれて本当に嬉しかったです。これから広島競輪場は改修となりますが、その前にみなさんに走りを見せることができ、連覇という結果を残すことができ、大きな満足感がありました。グランプリを前に精神的にも弾みがついたと思います。走って良かった地元記念! これからグランプリに向けて最終調整段階ですが、気持ちを入れてやり切りたいと思います。

連覇達成! にこやかに賞金ボードを掲げる松浦選手(撮影:島尻譲)

読者の方から寄せられた質問に答えます

 それではグランプリへの意気込みを書く前に今月も質問に答えていきたいと思います!今月は3問の質問に答えていきます!

今回は3つの読者質問に真っ向勝負!(撮影:島尻譲)

ーー松浦選手と清水選手の中国ゴールデンコンビがグランプリで観たかったです。どういった気持ちかを知りたいです。

 ありがとうございます。僕も裕友がいないグランプリは想像もしていませんでした。この1年間、裕友と一緒に戦うことを前提にグランプリを目指していたのは言うまでもありません。だから正直に言ってしまえば不安を感じています。でも残念がるよりも、その分しっかりと戦いたいと思っています。自分が勝つために何ができるのかを平塚に入ってから確定させて、グランプリに臨みます。そのための準備を今集中して進めています。たくさんの方にこの質問と同様の声をいただきますが、グランプリは今年の1回だけではないので、「今年はそれが叶わなかっただけ」と考えています。これからも僕たちの応援をお願いします!

ーーnetkeirinで平原選手と奥井選手が対談をされていらっしゃいましたが、その中で児玉碧衣選手は“お腹で踏む”、平原選手は"股関節で回しているイメージ“と自転車の乗り方について話をされていました。松浦選手はどのようなイメージ、感覚で自転車に乗っているのでしょうか。

 僕も“お腹で踏む”の感覚が近いですね。お腹や背中は重要なポイントになると思っています。ただ踏んでいく時に意識するのは「膝とつま先の動き」です。あくまでも踏む感覚はお腹なんですけど、「膝をできるだけ高いところからドーンと落とす感じ」を意識して回しています。太ももやふくらはぎといったペダルを回す筋肉にはまったく意識が向きません。より高い位置からしっかりと膝をドーンと落とし、そのエネルギーをつま先で感じ取って回していくイメージです。自転車の乗り方や感覚、意識って本当に選手によってそれぞれ異なるんですよね。

ーー今回のグランプリは単騎ですが、自分でやるのは即断ですか? 悩んで結論を出したのか、ほかの選手と話したりして決めたのかとかを教えて欲しいです。

 グランプリを走るメンバーが出た時に決めました。悩んでなく、即断です。他の選手と話し合いなどはしなかったです。グランプリはその年に9名しか出られない頂上決戦ですし、優勝賞金も1億円を超える大きな一戦です。名誉も高額な賞金も懸かった最高峰の一戦になるので、後悔だけはしたくありません。郡司君も平原さんもいつも対戦している相手ですし、声を掛け合ったり話をしたりの関係性もありますけど、普段から連係して走っているわけではありません。

 その条件の中では自分でやらなければ「後悔なくレースを終える自信」がないんですよね。まだレースの組み立て自体何も考えていませんが、単騎3人の戦略や思いが交錯して、自分たちを不利にするレースは避けたいです(笑)。自分が何をすれば勝てるのか? ここを研ぎ澄まして考えていこうと思います。

グランプリで会いましょう

共同会見時コメント「単騎で何でもやる」(写真提供:公財JKA)

 それでは2022年の最後のコラムはグランプリへの意気込みを書いて締めくくりたいと思います。去年のこの時期と今を比べると、かなり心境が違います。去年はとてもリラックスできていて精神的にとても良い状態だったことを思い出します。去年は『3回目ともなれば日々の過ごし方から発走機につくまでの流れもわかっているし、経験者としての強みも感じることができている』と感じていましたね。その気持ちはこのコラムにも書いていました。

 ただ今年は「不安」みたいな感情もハッキリとありますね。グランプリのことを考えると、レースパターンを考えては答えの出ないことを延々と頭を巡ることになるので、本当に平塚に入ってから色々なことを決めていこう、という感じです。一緒に戦う仲間がいないことや役割分担もできないということもそうですし、そもそもレースが読みにくいということ。いつもなら自分が一人でどこまでできるだろうというワクワク感があるんですが、今は「大丈夫だろうか?」という気持ちの方が大きいです。

 でも、優勝するために走るわけですし、平塚に入ってからは最善策を模索し、レースを組み立てていきたいです。しっかりと自分ができることをやってきます。今年1年を総合的に振り返ってみると、「去年に比べて良くなかったなあ」と思います。その気持ちを吹き飛ばすにはグランプリで最高の結果を出すしかありません。不安だろうが関係ない。ここは優勝一点を目指し、掲げてきた「賞金王」という目標を達するために、自分のすべての力を出して戦ってきます。ぜひ応援を届けてもらえたらと思います! では、いってきます!

勝つための最善策を現地で見つけ、それを実践するのみ! 狙うは“賞金王”ただひとつ(撮影:島尻譲)

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松浦悠士の“真っ向勝負!”

松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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