アプリ限定 2025/09/11(木) 12:00 0 15
「オールスター競輪(GI)」が終了し残るビッグレースもあと3つ。今年最後のGII開催である「共同通信社杯競輪」を控えたこのタイミングで、競輪界の中心的存在であるS班の活躍と次期S班の座を狙う有力選手について獲得賞金状況から考察した。(※賞金9月8日時点)
後半戦最初のGI「オールスター競輪」は寺崎浩平のGI初制覇で幕を閉じた。
オールスター前からグランプリ圏内に入っていたとはいえ、まだ確定的な位置ではなかった寺崎が正式にグランプリへの切符を手に入れたことで9つの枠のうち、さらに1つの枠が埋まった。
すでにグランプリ出場が決定的な選手とピンチに陥っている選手、それぞれを今一度おさらいしていきたい。
さて、ここで競輪界の頂点に位置するS班の賞金状況を見てみよう。7月から繰り上がってS班となった松浦悠士、そして24年末にS班から陥落した選手も含め、賞金ランキング50位以内に入っている11選手をグラフで紹介する。
まずS班の中で現状グランプリ圏内に位置しているのは古性優作、眞杉匠、脇本雄太、郡司浩平の4人だ。
2位の古性は7月のGII「サマーナイトフェスティバル(以下サマナイ)」で落車したケガが完治していないのにも関わらず、オールスター準Vと鉄人っぷりを発揮。GI未勝利でも賞金はすでに1億5千万円を突破し例年の1億円付近のボーダーラインを考えればほぼグランプリは確定していると言えるだろう。
3位眞杉はサマナイ、西武園記念を連覇を達成し賞金は1億2千万円を突破、例年のボーダーを考えればグランプリは当確だろう。昨年制した共同通信社杯はあっせんが止まるため出場できないが、その悔しさを年末にぶつけたい。
4位脇本はグランプリは確定しているものの、サマナイを欠場するなど状態面の方が心配されたがオールスターでその不安を一掃。準々決勝、準決勝では「これぞ脇本!」とファンを唸らせる破壊力満点の自力脚を披露し、決勝戦では同県寺崎浩平を優勝へ誘った。持病の腰痛の具合が心配ではあるが年末に向けてさらに状態を上げていきたいところ。
6位郡司はオールスターでは優出こそ逃したもののドリームレース、シャイニングスター賞を制すなど高いレベルで安定した成績を残し続けている。賞金も1億円目前でグランプリはほぼ当確状態だが、あとはボーダー付近にいる仲間たちをどれだけ引っ張り上げられるかも地元・平塚グランプリ制覇に向けて重要な課題と言えるだろう。
一方、現状グランプリ圏内から漏れているのは、新山響平、犬伏湧也、岩本俊介、清水裕友、松浦悠士の5人だ。
10位新山はオールスターで準決勝まで勝ち進むも、新山以外の北日本勢は準々決勝までに全員敗退し、援護がない状態での戦いとなってしまったため苦しい結果に終わった。西武園記念決勝でも番手を回ったのは近畿の南修二と、新山を援護する北日本の絶対的マーカーが不在であることが徹底先行型の新山にとっては死活問題だ。3年連続のグランプリ出場へ向けて成田和也、佐藤慎太郎、永澤剛あたりがしっかりと状態を戻して新山と共闘できるかどうかが大きなカギとなる。
11位岩本俊介は地元・松戸記念を見事制し、ボーダーまでわずか300万円の位置まで迫ってきた。郡司、深谷の番手を回れるなら大チャンスが訪れそう。
14位犬伏湧也と15位清水裕友も岐阜記念決勝でワンツーを挙げるなど、ようやくギアが上がってきた。圧倒的な存在感を誇る18位太田海也とも力を合わせ、中四国全体でこの良い流れに乗っていきたいところだ。
ただ、その中四国のリーダー的存在である松浦は苦しい。サマナイ初日での落車の影響は大きくオールスター、さらに共同通信社杯まで欠場といまだに復帰のメドが立っていない。来年以降のことも考えると無理はできないが、中四国にとって松浦の離脱が痛手であることは間違いない。
またS班陥落からの即復活を狙う選手たちも奮闘している。
深谷知広はオールスターでも安定感を発揮し、松戸記念でも岩本俊介を優勝へ誘う大活躍。それでも4月末時点のの4位からジリジリと後退し現在は7位に位置している。ボーダー下10位の新山とは約1300万円差とまだ賞金的には多少余裕はあるが、共同通信社杯で大幅に賞金を加算できれば安心して年末を迎えられそうだ。
22位山口拳矢は8月に入って富山記念優勝、オールスターでもオリオン賞を制し西武園記念では3連勝で優出を果たすなど、近況は上昇ムード。初めてビッグレースを制した思い入れのある共同通信社杯の舞台で、さらなる飛躍に期待したい。
佐藤慎太郎は依然50位圏外でグランプリは黄信号。ただ新山響平の頑張り次第でタイトル奪取のチャンスが巡ってくる可能性は十分あり得る。48歳でもまだまだ走りはフレッシュ、不屈の闘志でこの逆境も乗り越えていけるか。
最後に、S班以外の賞金上位選手を見ていきたい。
首位を走る吉田拓矢はまさに順調そのもの。今年は高松宮記念杯以外出場したすべてのビッグレースで優出を果たす抜群の安定感を見せている。今後はすでに3名以上のグランプリ出場が決定している近畿勢に対抗するべく、こちらも3人目の仲間となる選手を出場圏内に引っ張り上げられるかがグランプリ本番を戦う上での大きなカギとなる。
6位寺崎浩平は前述の通り、オールスターで初のGI制覇を果たしグランプリ出場を決めた。もとより赤パンを履けるだけのポテンシャルを秘めていた才能の塊がようやく開花し、ここからどこまで突き抜けた選手になっていくのか、そして年末にどのような走りで魅せてくれるのか非常に楽しみなところ。
輪界屈指の仕事人・南修二も圏内の8位にランクイン。オールスターでは5走すべて確定板に入り、西武園記念では準決勝で絶望的な位置から2着に食い込み優出を果たすなど、44歳とは思えないキレ味抜群の動きで存在感をアピールしている。意外なことにグランプリ出場はいまだ0回、今年こそはこの絶好のチャンスを掴み取る。
年明けからずっとグランプリ出場圏内で踏ん張っている9位の浅井康太にも注目だ。オールスターではオリオン賞、シャイニングスター賞と連日確定板に食い込み、さらには先日の岐阜FIで優勝するなど力強い走りで中部地区を牽引している。藤井侑吾、村田祐樹、纐纈洸翔と若手が軒並み不調に陥っているのは手痛いが、前が不発でも熟練の技でコースを見つけて強襲する。
12位松谷秀幸、13位松井宏佑も地元グランプリを目指して奮闘中。松谷は特段大きな実績はないものの安定感は抜群でコツコツと賞金を積み上げている。松井はオールスターでは一度しか着に絡めないなど、らしくない走りが続いたが岐阜記念では初日、2日目と連勝で勝ち上がりやや調子は上向いているとみて良さそうだ。
最後に取り上げたいのがワールドクラスのスピード備える18位太田海也だ。実力は今すぐにでも赤パンを履けるレベルであることは間違いない。ただ、グランプリ出場へのストーリーとしてファンが太田に期待するのは、GIIIやビッグレース優出などでコツコツ賞金を積み重ねていくというよりは、何か一つタイトルを奪取しさらに一つ殻を破って堂々と年末の大舞台に立つ太田が見たいはず。10月の寛仁親王牌には出場できない分、ここで数少ないチャンスをモノにしたい。
12日から開幕するGII・共同通信社杯の賞金は2900万円と間違いなくグランプリ争いの大きな影響をもたらすだろう。上位勢力が圧倒するのか、それとも下剋上はあるのか、ぜひ賞金争いという点にもぜひ注目して楽しんでいただきたい。