2021/06/08(火) 12:00 1 6
東京スポーツの前田睦生記者がGP・GI・GII・GIII・FI・FIIのレースの中から”思わず唸った”選手をピックアップする「今週の競輪好プレー」!
今回は特別編として引退を表明したある選手をピックアップ。前田睦生記者の直筆解説や思い出と一緒にぜひご覧ください。
シェーン・パーキンス(34歳・ロシア=オーストラリア)は、短期登録制度で長く日本に来て競輪を戦い、ファンにもなじみの深い選手だ。
「シェーン!」と声をかけると、ニッコリ笑って握手で応じてくれる。あのゴツい手の感触は今も残る。
取材もずっとさせてもらっていたので、この引退の報には当方も涙がにじむものがあった。思い出の好プレーとして、パーキンスには苦い思い出になるのだが、今回取り上げさせてもらう。
好プレーを行ったのは、あの小倉竜二(45歳・徳島=77期)だ。
だが、今回の小倉の好プレーはお預けとしておく…。
小倉は野原雅也(27歳・福井=103期)マーク。野原の逃げに、パーキンスが異次元の快速まくりで迫るが、3角で小倉はブロック。ピッタリ止めた。パーキンスは3着に我慢して決勝に進出したものの、ゴール後、小倉に対しやたらと怒っていたそうだ。「危ないやろ! 」。
ニッコリと受け流す小倉の笑顔が浮かぶ。
パーキンスの父・ダリルさんは1964年の東京五輪に出場している。「息子の自分も出られたら、奇跡だよね」。パーキンスはそう話し、2020東京五輪出場を目指していた。オーストラリアでは代表候補から外れたため、ロシアの国籍を取って(オーストラリアは二重国籍あり)、出場を目指した。 …だが、五輪の延期も含めその道はふさがった。
宇都宮に高野さんという伝説の記者がいる。
1964年東京五輪にアルバイトで参加したという人物だ。当時の1964年の東京五輪記念メダルを「オレにはもう必要ないから」とパーキンスに託し、ダリルさんに渡してほしいということがあった。私が取材でパーキンスに会う機会があったのでメダルを預かった。パーキンスは感動して「父もまだ健在で、本当に喜ぶと思う! 」。そして、帰国して渡すことができると、また日本に戻ってきてその喜びようを教えてくれた。
パーキンスが東京五輪を走る姿を見たかった。奇跡の時間は幻と消えたが、パーキンス親子が日本に残したものは、間違いなくかけがえのないもの。そういえば、お子さんがいたな…。なんかのイベントで一緒にウロウロしているのを見たぞ。今回はパーキンスの功績に★5つを勝手ながら送らせていただく。
すごいで賞=★★★★★(星5つ)