アプリ限定 2022/03/23 (水) 12:00 12
ガールズケイリン120期ルーキーの本多優・濱野咲。フレッシュな2人が立派な競輪選手として奮闘し成長していく姿をお届けしてきた交換日記もいよいよ最終回。厳しい世界は重々承知。それでも2人が競輪を続ける理由とは? 2年目からはいったいどんな未来を描いている?
ーーこの1年を振り返ってどうでした?
本多 ほんっとに“秒”でしたね(笑)。あっという間。練習してレース行って、練習してレース行って。デビューした頃は開催の4日間が長く感じていましたけど、最近はほんとうに早く感じます。
濱野 早かったですね。あっという間の19歳でした(笑)。その中でも“競輪”に慣れるのに時間がかかりましたね。養成所の競走とはスタイルもスピードも全然違ってましたから。本デビューしてから11月ぐらいまでは、なにがなんだかわからないままでしたね(笑)。
ーー1年前と変わったところはどこですか?
本多 レース中に考えることが増えました。1年前はついていかなきゃ、ついていかなきゃって必死でしたけど、最近は冷静に考えられるようになりました。この人がいるからこうなってこうなるから、ここでこう動いてこうしようみたいな、展開を頭の中で描けるようになりました。前日に番組が発表されてから寝るまでずっとレース展開のことを考えてます(笑)。あっ、寝るまでレースのこと考えるとドキドキしちゃうのは今も変わってないかな(笑)。一番緊張したレースはズタボロだった本デビュー戦(7/1 前橋)ですかね(苦笑)。初めて先輩たちと走るレースに加えて、地元っていうこともあって。めちゃくちゃ緊張しちゃいました。前橋は今でも緊張します。今度前橋(あっせんが)入ったんですよ、どうしよう(笑)。
濱野 気持ちが強くなりましたね。1年前は養成所で習ったことをそのままやってる感じだったのですが、今はシビアになりました。仕事なので。メンタルが強くなったと思います。
ーーこの1年で一番印象に残ったのはどのレースですか?
本多 ふたつあって、ひとつは地元初勝利のレースでしたね。勝った瞬間に会場中が拍手喝采でした。スタンディングオベーションっていうんですか(笑)? あれは嬉しかったですね。4日制でいつもより1日長いっていうこともあって、(いつもと違った)なにかをやりたいと、思い切って逃げたのが良かったのかもしれません。
もうひとつは、このあいだの落車(再乗)ですね(2/11 立川)。実は初めて落車したんですよ。一瞬テンパって“え… 何があったの…?” みたいな…。で、その時おしりから落車しちゃったんですけど、なんかスースーするなって思いながら再乗して戻ってきたんですが、レーパンが破れていて、おしり丸出しで走ってたみたいなんですよ…。しかもその日の立川、お客さんが結構いて…(恥)。それが一番忘れられないですね。
濱野 私もふたつ。ひとつは12月の取手初日で初めて確定板に乗った時です。強い選手がやりあってくれて展開が向いたのもあったんですけど(笑)、ずっと結果が出てこない中で、練習の成果が出てくれてよかったなあって思いました。あの開催は脚がめっちゃ軽くて、2日目は7着だったんですけど、上がりタイムは一番速くて!
もうひとつはその3日目初めて落車した時です。必死すぎました。いつも千切れるところが良いスピードで付いていけたので…。内じゃなくて、一旦外に出して、外からちょっと降りれば良かった、っていろんな選手からアドバイスをもらいました。特に中村(由香里)さんはすぐLINEくれて(しみじみと)。
ーーもうすぐ122期がデビューします。気になりますか?
本多 結構気になります! まだ情報は少ないんですけど、私と同じ“適性”組の畠山ひすい選手は気になります。すごく速いって聞いています。あとは同じ群馬の萩原瑞生選手、奥平彩乃選手、河内桜雪選手。群馬に3名のガールズレーサーが仲間入りしてくれて、本当に嬉しいです。一緒に練習しようと思ってます! とくに(河内)桜雪ちゃんは高校の時から知っていて、その時からめちゃくちゃ速くて。速いし可愛いし、私ひそかに憧れてました(笑)。
濱野 けっこう仲が良い子がいるので、会えるのが楽しみです! 畠山ひすい選手と、戸田瑞姫選手と、鈴木咲香選手と、養成所に入る1年前のガールズサマーキャンプ(2019年、現在の名称はトラックサイクリングキャンプ)で一緒になって。養成所の思い出話とか聞けたらいいな、って。
ーーもしアドバイスを求められたら?
本多 私もまだそんなに勝てていないのでアドバイスを送ったりする感じじゃないですけど… “デビューしてすぐはすごい大変で落ち込むと思うけど、我慢して頑張って努力すればきっと報われるよ”って言葉をかけてあげたい。
濱野 3人とも適性なんですけど、自分よりも強いんで。特にひすいなんかは、すっごい強いんじゃないかな。だからアドバイスできるとしたら、開催の時の過ごし方とかですかね。最初はそういう生活に慣れることも大変だと思うし、すっごい疲れると思います!
ーーこの1年の間に辞めていく選手もいました。厳しい世界ですが、どのように感じていますか?
本多 代謝対象の点数だったときは危機感を持ってレースを走ってました。その時はどうしよう、どうしようっていう感じで。47点はものすごく意識する数字でした。その点数があるかないかってすごく大きいです。47点ないと、守りの姿勢になって、それが走りを小さくさせて…。負のスパイラルですよね。決勝に乗れるようになって点数が47点を超えてきてからは怖じけることなくレースに臨むことができるようになったと思います。
濱野 落車してから、デビュー後ぐらいの点数に戻っちゃって、全然流れに乗れなくなって、焦ったりしますね。3期の点数っていっても、3期目に47点を取ればいいって話じゃないわけですから。(2期連続で競走得点が47点未満で、さらに直近3期分の競走得点を3で割った数値が47点未満。それに該当した最下位3名が代謝となる)今の自分はひとつでも良い着順を取ることが大事だと思ってレースをしています。点数を取らないと始まらないので。高木佑真さんが、私にとてもよくしてくれるんですけど、“位置取りにもっとシビアになった方がいいよ”って。自分がどこにいれば付いていけて、流れに乗れて着を取れるのか。佑真さんのアドバイスもあって、ひたすら考えるようになりました。あとは、ガールズケイリンのレースをずっと見ています。出走している選手がどんな走りをするのか、レースを見て学ぶことって結構あります。
ーーそんな厳しい環境の中、それでも競輪を続ける理由はなんでしょうか?
本多 デビューしてしばらくは点数も取れないし、1着も取れないし、辞めようかな…って思ったことも、実はありました。でも強い選手と一緒に走ったり、アドバイスをもらったりしていく中で、課題が見つかり、メンタルがどんどん鍛えられていって。今では練習も楽しいですし、レースに出ても達成感が得られるようになってきて。私、ほんとうに競輪が大好きなんだなって今、実感しています。
濱野 自分で選んだ道だし、努力して掴んだ職業なので、満足するまでやりきりたいから。あとは家族、師匠、練習仲間たちからの支えに応えて恩返しをしたいからです。なんといっても、私も競輪が大好きなんで。レースが好き。見ててもやってても面白いんで。
ーーどんな選手になりたいですか? デビュー前と今とで変わりはありますか?
本多 変わってますね。デビュー前は自力で勝てる選手になりたいって思ってました。今も自力で勝てる選手になりたいんですけど、なんでもできる選手になりたいです。まくり、先行とか、その時その時、臨機応変に対応できる選手になりたいと思っていますね。
濱野 私は変わりはないです。今も変わらず、心身ともに強い選手になりたい。
ーー2年目の目標は?
本多 安定して決勝に乗ること。そして初優勝です!
濱野 点数を取る! です。
ーー最後に“120期ルーキー交換日記”をやってみて、どうでしたか?
本多 文章を書くのがほんとうに苦手だったのでめっちゃ文章力が鍛えられました(笑)。でも、このコラムのおかげで、本当の私をファンの人たちに知ってもらえたのかなって思います。
濱野 楽しかったです! 自分の思ってること、考えていることがファンの皆さんに伝わるんで、やっぱりいいなーって思いました。
ーーお2人に憧れてガールズケイリンを志す選手が増えたらいいですね
本多 そうなったら嬉しいですね。そのためにももっともっと頑張ります!
ーー最後にお互いにメッセージを
本多 ええ…恥ずかしいな…(笑)。同期・同年齢で仲良しのさっぴーにはいつも助けられてます。元気で明るくて! 支えてくれてありがとう!
濱野 ええ…ウケる(笑)。そうですね、辛いときは、優ちゃんに一番に聞いてもらいたいし、一番に相談したい。優ちゃんはポジティブなんで。こんな考え方あるんだって思って、悩んでたことが馬鹿らしく思えるような。優しいんです。
本多優・濱野咲
ガールズケイリン120期。本多はスピードスケート、濱野はバスケットボールから転身し、適性試験から日本競輪選手養成所に入所した。2021年6月に本デビューを迎え、奮闘を続けている。