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前田睦生の感情移入

【岸和田キング争覇戦in和歌山】醤油と豚骨のバランス

2021/01/08 (金) 12:00 3

 1月7日に最終日を行った立川記念は、平原康多(87期=埼玉・38歳)の優勝だった。2021年最初の記念制覇で、今年も平原、をアピールした。何より初日特選で先行した姿に、平原の本領があった。すぐに9〜12日の4日間、和歌山競輪場で“岸和田記念”が開催される。「?」。場所は和歌山でも、今回は岸和田記念だ。

和歌山ラーメンの味わいこそが…

岸和田競輪場は今夏、生まれ変わる

 岸和田競輪場は大改装工事中で、今年の6月に再オープンの予定。開催ができないため、和歌山競輪場を借りて、記念を行う。昨年の平塚グランプリを制した和田健太郎(87期=千葉・39歳)、松浦悠士(98期=広島・30歳)、守沢太志(96期=秋田・35歳)のS級S班3人を軸に、稲川翔(90期=大阪・35歳)、古性優作(100期=大阪・29歳)ら、大阪勢が多く参加するシリーズだ。

 競輪は地元を大切にする。場所は和歌山でも、大阪勢にとっての地元戦。もちろん、結束の強い近畿地区なので、近畿の選手みなにとって大事な戦いとなる。和歌山、大阪、近畿のまとまり方が、シリーズの流れを左右する。つまり醤油と豚骨のバランスが独特のクセを生み、気が付けばまた足を運んでしまう和歌山ラーメンのようなものだ。岸和田記念、競輪を、がっつり、味わってほしい。

ライン 並びを決める意味

 昨年6月の(GI)高松宮記念杯が和歌山で開催された。長く伝統の宮杯を開催していたびわこ競輪場が2011年3月に廃止になった後、他場での開催となり、近年は岸和田に定着してきていた。昨年は岸和田も工事中で使えず、和歌山で。その決勝に稲川は勝ち上がった。脇本雄太(94期=福井・31歳)と稲垣裕之(96期=京都・43歳)と近畿3人。

 稲川は脇本の番手。逃げた脇本の後ろで、まくってきた松浦を3角でけん制した。そこでやや踏み遅れたところを松浦に入り込まれた。脇本優勝で松浦が3着。稲川は5着に終わった。仕事をすることが、番手を回る意味。稲川は「必要なかったっすね」と苦笑いしたものだが、あの仕事をしなければ、脇本の番手を主張することはできなくなる。誰かが、いや誰もが、見ている。

昨年の宮杯を振り返る近畿勢

 その時に松浦をマークしていたのが、実は和田(2着)。広島の選手に地区の違う千葉の選手がマークした形だ。和田はその時、悩みに悩んだ末に、松浦につけることを決めている…。

ひと口ごとに濃さを増す味

「和歌山ラーメン、こんなに濃かったかな…」と思ったアナタ。とりあえず、和歌山ラーメンを食べに行く前に、この岸和田記念「岸和田キング争奪戦in和歌山」を堪能してほしい。和田は他地区につけるなどとはまして、同地区の自力がいても、自力を出すという決断をした時期すらあった。

 和田はグランプリ優勝後に、その自力宣言の時を振り返り「別に謀反を起こそうとかそういうのじゃなかったんですよ」と笑った。ただ、どうしても後ろについていて納得がいかないことがある…。そんな時に仲間に相談して、自力を出してみてはと勧められたという。そして、南関の自力選手につけずに自力で戦うこともあった。(千葉生まれのよしみで福島所属の小松崎大地につけたことはあったが)

 そこまで踏み込んでラインというものを考え抜いていた和田が、松浦マークを決めるまでには時間がかかった。あの時、準決3つのレースが終わり、検車場では「和田はどこに…」という感じだった。控室で千葉の先輩たちと話し込んでいたそうだ。そこで、和田の置かれた状況や松浦の走りなどを考慮すると、マークしていいのでは、との結論に至ったという。

和田(左)は悩んだ末に松浦につけることを伝えた

感じ取ってほしい選手たちの思い

 ラインを組む、並ぶということに、競輪選手はプライドをかけ、思いを乗せている。ぜひ、今回の和歌山での4日間の戦いでは、そうした選手たちの結びつきをレースから感じ取ってほしい。和歌山ラーメンは醤油と豚骨のバランスが味を生み出す。競輪は選手たちの血と汗と涙が、その重みを生み出す。

 その姿に、ファンは賭ける。7日、1都3県に緊急事態宣言が発出され、再び厳しい環境に向き合わなければならないが、選手とファンのつながりをもって、乗り切る力に変わるだろう。

▼岸和田キング争覇戦in和歌山の情報はこちら


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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