2025/11/24 (月) 15:00 5
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は小倉競輪場で開催されている「朝日新聞社杯競輪祭」の決勝レース展望です。
【競輪祭】と合わせて開催されていた【競輪祭女子王座戦】は、佐藤水菜選手の完全優勝となりました。これで佐藤選手は女子選手としては初めてとなる、「年間グランドスラム」の達成ともなりました。
佐藤選手は10月にチリのサンティアゴで行われていた、「2025年UCI自転車トラック世界選手権大会」の女子スプリントで準優勝し、女子ケイリンでは連覇も果たしています。
競技選手としても世界トップクラスの実力を持っている佐藤選手だけに、この結果も納得がいくところです。また、今大会が競技で走り慣れている、屋内バンクの小倉競輪場で行われていることもまた、この偉業の後押しになったのではないのでしょうか。
勿論、屋外バンクに変わっても、佐藤選手の強さに変わりはありません。年末の【ガールズグランプリ】でも圧巻のレースを見せて、「年間グランプリスラム」を達成してくれることでしょう。
先ほども書いたように、風の影響を受けない屋内バンクでは、佐藤選手のようなナショナルチームの選手たちが台頭してきます。
【競輪祭】には現ナショナルチームの太田選手、中野選手、山崎選手が出場。また寺崎選手、新山選手、深谷選手といった旧ナショナルチームも、スピードに秀でた走りで大会を沸かせていました。
ただ決勝の9名の顔触れは、ナショナルチーム経験者が武器としている「先行力」ではなく、捲りを得意としている選手、そして番手の仕事ができる選手となりました。
これは予選から激しい主導権争いが繰り広げられてきたからであり、細切れ戦かつ、徹底先行不在となった決勝戦は、かなりの混戦ともなっています。
その並びですが、同じ地区での並びとなったのが、①古性選手-④山田(久)選手の近畿ラインだけであり、⑨松本選手-②荒井選手は中四国ライン。一方で荒井選手とは同じ九州地区の⑦山田(英)選手は単騎となります。
北日本地区も2つに分かれて、③松井選手の後ろには⑧渡部選手。⑤吉田選手の後ろには、同期(117期)の⑥阿部選手となりました。
【競輪グランプリ】の権利を取っていない選手からすると、残された1枠に入るべく、それぞれが思案を重ねた決断となりました。
この中では最もラインの結びつきが強いのは近畿の2人です。古性選手は決して本調子では無いと思いますが、位置取りの上手さはさすがであり、連勝で決勝へと進んできました。
ただ、古性選手としては他のラインに動いてもらってから、流れに応じたレースをしたいと考えているはずです。ここまでのバック回数では松井選手が11本。吉田選手が4本となりますが、今大会を見るとバックを取りながら安定した成績を残している、松本選手の先行意欲が強いと見ています。
車番的には1番車の古性選手が前受けをしてきそうですが、渡部選手もスタートが早いだけに、この辺は流動的と言えます。
車番的に後方となりそうな吉田選手が前のラインを抑えに行って、先行するのは松本選手。その3番手を取ったラインが有利に運べるでしょう。
ここで3番手に入っているのは、立ち回りの上手い古性選手が取っていそうですが、吉田選手がすんなりと回れていたのならば、優勝のチャンスが出てきます。
今大会は1勝ながらも、ここまでの走りを見ていると調子は良さそうであり、捲ってくる時のスピードは、この9名の中でも群を抜いています。
スピードでは吉田選手と甲乙つけがたい松井選手ですが、4日目のダイヤモンドレースでは先行しながらも、他のラインに飲み込まれる形で7着に敗れています。
ここで松井選手は小田原記念で先行してもらった、番手の郡司選手を引っ張り切るような走りを見せておくべきでした。松井選手も元ナショナルチームながらも、ここぞというレースでは、消極的になってしまう印象を受けます。
この決勝は番手となっているのが、他地区の渡部選手であり、思い切ったレースはしてこないと見ています。それだけに吉田選手や古性選手からすると、先行したラインの動きに集中したレース運びができるはずです。
印としては◎⑤吉田選手、〇⑥阿部選手、△②荒井選手、×①古性選手に打ちます。吉田選手の番手に入った阿部選手、そして、先行した松本選手の番手から早めに抜け出してきそうな荒井選手も、展開次第では優勝の可能性が充分にあります。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。
