2025/07/02 (水) 12:00 22
7月3〜6日に小松島競輪場で「開設75周年記念 阿波おどり杯争覇戦(GIII)」が開催される。昨年大会が犬伏湧也(29歳・徳島=119期)、一昨年大会が松浦悠士(34歳・広島=98期)の優勝。2人は今年、S班に繰り上がった。松浦は7月からなので、この大会から赤いパンツに戻る形だ。
古性優作(34歳・大阪=100期)と岩本俊介(40歳・千葉=94期)がいてS班は4人。何といっても古性の存在感がすごく、犬伏と松浦としては、古性を迎撃できるかが課題になる。それを完遂することが、S班としての価値を示すことになる。岩本としては松井宏佑(32歳・神奈川=113期)がいるので、このタッグで結果につなげたいところだ。
S班繰り上がりに関しては、浅井康太(41歳・三重=90期)のコラムが分かりやすかった。犬伏は違反行為での剥奪があってからの繰り上がりなので、当然。ただ、松浦のケースは平原康多(43歳・埼玉=87期)氏の引退によってなので、そのままで良かったのではというものだ。
個人的には浅井の考えに沿うものだが、競輪界としては「S班9人」という看板を掲げてのファンサービスということなのだろう。開催の盛り上がりにつなげるためにも、その責を負う選手を9人。競輪界の顔として存在させる。ここの価値を大事にしているのかと思う。
犬伏が4月にS班になってから、結果以上にたくましくなっているのは明らかだろう。もちろん“GIで結果を残してこそ”はあるのだが、まず走りがどうなのかが競輪にはある。犬伏は真っ向からそこに挑み、奮闘している。その姿をもって、今回の地元記念に挑む。
中四国の選手たちとどうひとつになっていくのか。どんな物語を作り上げていくのかも、犬伏は背負っている。高知記念(よさこい賞争覇戦)で初日に落車しながらも戦い抜いた残り3走のように、スポ根感は強い。ドラマを背負ってこそ、競輪界の顔としての重みも増す。
そのためにも古性がいることは、シリーズの緊張感を変える。久留米記念で(高松宮記念杯競輪もだし、これまでもだが)南修二(43歳・大阪=88期)がすごい走りを見せていた。決勝の最終2センターで小さな立ちバックも駆使。今回の近畿勢は数が多くないので、古性が先頭で走るレースもまた楽しみだ。稲川翔(40歳・大阪=90期)にも、またこれからというところを示してほしい。
高松宮記念杯5日目の菅田壱道(39歳・宮城=91期)と佐藤慎太郎(48歳・福島=78期)のワンツーもすごかった。カズミチは自在な立ち回りを売りにしているが、39歳ながら気迫の逃げを打って、シンタロウはブロックで応えて、というワンツー劇だった。
カズミチがGIを取るために、の道のりもある。今回は守澤太志(39歳・秋田=96期)、そして復活を期す小松崎大地(42歳・福島=99期)もいるので、密度の濃い競輪をまた見せてくれるだろう。
2月小松島のミッドナイトGIIIを取材に行った時のこと。とある居酒屋では、趣のある格好をした店長が、ことあるごとに「ハッピータ〜ン」とつぶやいていた。HAPPYTURN。お菓子のハッピーターンには幸せが戻ってくるという願いが込められているそうだ。
しかしとにかく、競輪の世界では黙っていても幸せは来ない。戦ったものだけに、幸せは来る…。
寒い2月の徳島の夜。私は歌っていた。そのお店はみんなが楽しく歌うお店でもあり、しかもみんながすごく上手で楽しそうだったので、対抗して、私も歌った。全力で。だが、鬼のように場が凍り付いて、私にはハッピーがターンしてくることはなかった…。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。