2021/09/08 (水) 12:00 14
2018年以来となる「蒲生氏郷杯王座競輪」が松阪競輪場で開催される。
松阪といえば、思い出されるのが林雄一(83期、引退)さんのアクシデント。それは共同通信社杯での初日2Rのことだった。6着でゴールした林さんだったが、意識を失い、1センター付近で落車した。危険な状態だとはすぐに分かり、医務室に運ばれた。
心停止の状態だったようで、懸命の救急措置がなされた。
医務室の外にいると、中から「林! 」「林さん! 」「起きろ! 」。
心臓マッサージを行った中村浩士(43歳・千葉=79期)は「ちょうど直前にAED研修を受けていたので」と、行動できた理由を後に語ってくれた。誰もがパニックになる中で、行動を起こせた意味は今も受け継がないといけない。
…とはいえ、シリーズの最中に何が起こるかは、まだわからなかった。
「容体が安定した」といった連絡が参加選手たちに開催中に届いた。同県の後輩の郡司浩平(31歳・神奈川=99期)…。開催中にお見舞いには当然行けないので、“終わればすぐに病院へ”と思っていた。それも、「優勝して」--。
南関のエースとして参加している立場。神奈川の先輩が重篤な危機に陥っている。できることは何か。
決勝に勝ち上がった郡司は、南関一人だった。3番手を取り、真後ろには平原康多(39歳・埼玉=87期)がいる。最終BS、平原にかわされる可能性は容易に想定されたが、立ち向かった。「僕たちは祈って走るしかなかったんで」。
林さんは今、競輪解説者として活躍の真っ最中。郡司が“松阪を走る”という姿に感慨がある。
郡司はいわき平のオールスター競輪、小田原記念(北条早雲杯争奪戦)と体調不良で走れなかった。松阪で復帰する意味は郡司の中で大きなものがあるだろう。戦国時代きっての『猛将』と呼ばれる蒲生氏郷の名前を戴く当大会。
復帰戦とはいえ、すさまじい暴れ方をしてくれるに違いない。
蒲生氏郷の辞世の句はまた強烈だが、今回は、それはさておく…。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。