アプリ限定 2025/06/26 (木) 18:00 5
『競輪選手になるために、そして夢を叶えるために』今年は第129回生として男子72名、第130回生として女子21名の候補生たちが日本競輪選手養成所に入所し、2026年のプロデビューを目指している。この時期、“未来の競輪スター候補”と題して毎年お届けしている本シリーズだが、今年は10名の注目候補生へインタビューを実施した。今回は129回生・松田祥位(まつだ・しょうい)候補生を紹介する。(取材・netkeirin編集部)
2024年パリ五輪で自転車トラック競技(中長距離)日本代表のリザーブ選手に選出された松田祥位候補生。ロードレースとトラック中長距離種目で世界を相手に戦ってきた逸材が特別選抜試験をクリアし養成所に入所した。このタイミングで競輪への挑戦を決めた理由とはーー。
ーーこれまでナショナルチームに在籍して自転車競技選手として世界を相手に戦ってきました。このタイミングで競輪選手になろうと思ったのはなぜですか?
昨年オリンピックが終わって、次のオリンピックを見据えた時、また同じような4年間を過ごすよりも、新しいものを吸収しながら過ごしたいと思いました。そういう意味でもオリンピック明けの今年は“ちょうどキリがいい”とも感じたので、養成所に入って競輪に注力してみようと思えるタイミングでした。
ーーまだ入所して1か月も経っていませんが、養成所生活はいかがですか?
めっちゃ楽しくやっています。年下には高校を出たばかりの人もいて元気で面白いし、年上は大人でメリハリがあって落ち着いています。年齢もバッググラウンドもバラバラなこの環境はとても楽しいです。僕は若い人と仲良くやっていて、バカな話をしながら楽しくやっています(笑)。
ーー松田候補生は昨年のパリ五輪では日本代表リザーブ選手に選出されるなど、自転車競技の中距離種目で日本屈指の実力を持っています。養成所で学びたいことはどんなことでしょうか?
「全部」ですね。自転車競技での実績はまったく関係なくて、実績なんて「なし」だと思って取り組んでいます。鉄フレームの扱いもそうですし、競輪に対する意識もイチからです。「自分は自転車を知っている」とかじゃくて、わからないことをみんなに聞いて回ったりもしています。わからないことを調べて回るのって楽しいですし、それが自転車の醍醐味だと思うんです。今はとても新しい体験をしているって感覚ですね。
ーー実績があるとか経験者だぞといった感じではないのですね。
はい、まったく。すべてに学びがありますよ。そしてそれが面白いです。
ーー松田候補生は楽しそうに語りますね。充実していることが伝わってきます。
実際に楽しいんですよね。養成所って“学校”じゃないですか。「社会に出て自由にできるぞ!」と解き放たれていた自分が養成所のような環境に戻ってきて、毎日何かを調べながら生活している。すごく面白いと思います。なんだろう、「しっかりやっているのが面白い」っていう感じでしょうか。
ーー厳しい規律のある生活も面白いですか?
その点こそ面白いところなんです。衣食住が揃っていて、特に食事も提供されるのはとても嬉しいです。それに分刻みでスケジュールも決まっていて、移動導線まで決められています。人によっては厳しく感じる部分なのかもしれませんが、僕はあまり厳しくは感じません。すべて決められていて「自分で何も選択しなくていい」のはとてもラクだなとも思います。
ーーちなみに引き続き自転車競技にも取り組みながら、二刀流のようなスタイルでやっていくのでしょうか?
そのつもりです。国際大会などに選ばれるとしての話ですが、養成所が許可をすれば国際大会にも参加するという感じですね。自転車の団体競技も競輪の候補生としての生活もどちらも頑張ろうと思っています。
ーー話は変わりますが、松田候補生の性格はどんな性格でしょうか?自己紹介のつもりで教えてください。
真面目ではないな、とは思っています(笑)。なんでしょうね、性格。難しいな。臨機応変にやろうとは常に心がけていますね。何が来ても動じない気持ちは大切にしています。ロードレースなんかでは臨機応変にやるっていうのが大切になるので、レースにも繋がる話かもしれませんね。
ーー趣味はありますか?
釣りです。海なし県(松田候補生は岐阜出身)から海あり県に来たので、海釣りが面白くてハマっていますね。小学生の頃は池で釣りをしていました(笑)。そこからめっきりやらなくなってしまいましたが、こっちにきてやってみて「お、できるぞ」って楽しくなっちゃって。
ーー今後も自転車競技に取り組んでいくわけですが、もしも競輪選手として競輪デビューしたときにどんな選手になっていたいですか?
お客さんに応援してもらえる選手になりたいです。自転車競技はスポーツというか、自転車競技を見たい人が見てくれる感じなんですが、競輪は公営競技なので、自転車競技とは違って、色々な動機でレースを見ると思うんです。
ーーたしかにその点は違いがありそうですね。
はい、結構違うんじゃないかなって想像しています。そもそも「かけているもの」が違いますしね。今はまだ鉄フレームの自転車にも慣れていないので大きなことは言えませんが、いつか強くなって競輪のレースを走るなら、応援されたときに「俺にまかせろ!」って胸を張れるような選手を目指したいですね。
ーー公営競技すなわち車券の対象になることにプレッシャーはありそうですか?
どうなんでしょうね。それこそ今は競輪を勉強中の身ですから「俺にまかせろ!」なんて言えないし、それは想像上の話です。でも新しい応援のされ方があるんだろうなって言う点では面白そうだなって思っています。S級とか強い選手になってレースに挑戦できる時には「俺にまかせろ!」とは思っていたいなと。
ーー今日は話を聞かせていただきありがとうございました。最後に養成所生活に向けての意気込みをお願いします。
ありがとうございました。自転車競技も競輪もどっちも頑張ります。でも養成所には競輪を学びに来ました。ここでやる間は競輪に集中して、生活も楽しもうと臨んでいます。活かせる経験もあると思うので、新しいことを吸収しながらやっていきます。
2024年、アジア選手権トラックで個人パーシュートで金メダルを獲得。個人種目も団体種目も数々の国際大会でメダルを獲得している松田候補生。その輝かしい実績を紐解きながら話を聞こうと思っていたのだが、「養成所生活が楽しい」と“今の話”をたくさん語ってくれた。競輪のことも自転車のことも規律正しい生活からも「全部をイチから学びたい」と語る表情はにこやかで、自転車競技の実績などは一切持ち込まない姿勢で臨んでいた。これから1年弱、松田候補生は何を得ていくのだろうかーー。次の取材が待ち遠しく、早く話を聞きたい。
netkeirin編集部
netkeirin Editorial department
netkeirin編集部がピックアップする“未来の競輪スター候補”のインタビューをお届けします。