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《TIPSTAR通信・選手インタビューVol.10 野口裕史選手》

2025/01/18 (土) 10:00 6

さまざまなバックグラウンドを持つ選手が多い競輪界。野口裕史も、その1人。陸上競技のハンマー投げで日本選手権(15年)を優勝し、日本一に輝いたトップアスリートだ。しかし、世界大会の参加標準記録の突破は叶わず、目指していたリオ五輪を断念。競輪界に飛び込んだ。恵まれた体格を生かしたダイナミックな先行力が売り。ブレない戦法を武器に戦う野口の競輪観を聞いてみた。(取材日・立川記念最終日)

ーー陸上競技ではハンマー投げで全国クラスの実績でした。競輪界に転身したキッカケは?

ずっと競輪は見ていました。大学の先輩や後輩をはじめ、陸上関係で選手になった人も多かったので。海老根恵太さんはもちろん、後輩でハンマー投げをやっていた高橋幸司とは一緒に練習もしていたし、吉澤賢さん、佐藤清之さん、吉田昌弘あたりですかね。

10年間実業団で競技をやって、世界に行けなかったら辞めようと決めていた。その目標を達成できなかったので、1回だけ競輪学校(現・養成所)を受験してみようと。適性試験があれば1回で受かるだろうし、なかったら受からないんだろうなぐらいの感じでした。

ーー適性の受験で32歳の時に競輪学校に合格。奥さま、娘さん、ご家族がいました。

嫁には「受けるわ」と伝えると「あ、そう」って感じで止められることもなくて。周りの先輩たちからは止めとけと相当言われましたね。吉井秀仁さんにも。たしかに今になって思えば、適性で入ってもチャレンジで終わる人もいっぱいいる。リスクはあるなと。たまたま、ここまで来られたから良かったですけど。

ーーデビューして8年目、ここまで自己評価はいかがでしょう?

うーん、競輪選手としての意識は低いのかなと。

ーーどういう点が?

勝ちにこだわるレースをしていないというか。レースは練習の成果を出すところだと思っていて、戦法にこだわっているところがある。「それって競輪選手なのかな」と自分の中でずっと葛藤はあります。自分の好きな練習しかしていないので、今のような(先行の)戦法しかないんですよ。

ーーそもそも「先行」という戦法にたどりついたのは?

最初はカマシをやってみたり、学校の時も捲りをやったりしていた。だけど、結局、自分がやっている練習的にも1番力を出せるのは「先行」だなと。

ーー「生涯、先行」の思いはありますか?

はい。とりあえず、やれるところまでは。

ーー最近はコンスタントに1着も。成績は上向きに見えます。

ここ3、4場所で座り方を変えて、その結果が松阪では出たと思う。股を痛めてから乗り方がおかしくなったので。今は良かった時期の感じで踏めていますね。

今回(の立川記念で)荒井崇博さんにも「呼吸の入れ方」を指摘されたり。客観的に見ても、藤井(侑吾)君や清水(裕友)は上手くできているなと。

ーー結構、他の選手を観察したり、研究されるんですか?

はい。それこそ、取手開催の時に引退された神山雄一郎さんの体の折り方、フォームにピンときて。平原(康多)さんやグンちゃん(郡司浩平)も似ているんですよね。神山さんにいつか話を聞きたいなぁって。

ーー競輪JPに掲載されているデータで、昨年は「逃げ」と「バック数」の二部門でトップ。野口選手自身こだわりはありますか?

途中から意識する感じですね。後半になってきて1位が獲れそうなら、意識的に頑張ってみようぐらい。一応、年始めに「今年はどう戦っていこうかな」と考えるんですけど、「まぁ先行か。先行で1年間やっていくか」みたいな感じです。

ーー町田太我選手もよくランクインされていますが。意識している機動型の選手っていますか?

マッチー(町田)はそうですね。でも、誰かっていうより「ラインの後ろの人に迷惑をかけないように」という意識の方が大きい。

ーーモットーってありますか?

…、安全第一(笑)。

ーーそれは大事ですね。

最近、怪我をしていないのは大きいと思います。ウエイトトレーニングの数値も上がってきて、そういう積み重ねを感じられるのが楽しくて。

ーー競輪選手になって良かったですか?

それは思います。自分の好きなことばかりやっているので。

ーーご家族とは競輪の話はされますか?

全くしないですね。家族は何も見ていないし、家にいたらいたで「まだ家にいるの?」みたいな感じです(笑)。

ーー趣味の話も聞かせてください。観葉植物にはまったキッカケを教えてください。

4年前ぐらいですかね。もともとブーツが好きで。松岡健介さんがブーツに詳しくて浅草あたりのブーツショップを紹介してもらって、松岡さんとよく話をするようになってから。「それよりも、植物ええぞ」と言われて。たしかに気になっていたし、1つ買ってみて。そこから、どっぷりです。

ーー相当な数の植物を育てているそうですね。ご家族はどんな反応ですか?

最初はみんなでショップに行っていたりしたけど、最近は呆れて「そんなに買ってバカじゃないの」みたいな感じですかね(笑)。

ーーどこの家も厳しいですね(笑)。最後に、今年の目標をお聞かせください!

去年はただ、「バック数を取ろう」とかだったけど、最近ここ1か月ぐらい良かった頃の体の使い方に戻ってきて楽しくなってきた。それを競走で生かせるように走りたい。荒井さんに言われた呼吸の仕方もだし、自分の理想の動きをやれるように考えて。焦らずにやっていければ、もうちょっと結果が出そうな手応えがあるので。

無理して死に駆けだけじゃなく、行かれたら行かれたで次にさっと動けるような走りをできるように展開も考えてやっていきたいですね。

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