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ほろ酔い放談 -競輪の因数分解-

【競輪偏差値70の男】年末特別企画 中川誠一郎が選ぶ「2024年・極私的10大ニュース」♯44

2024/12/25 (水) 12:00 37

2024年もあとわずか。競輪界は30日に行われる一大イベント「KEIRINグランプリ2024」へ向けてまっしぐら。そんななか過去2回、出場したことのある元グランプリレーサー、中川誠一郎が1年を振り返ります。もちろん今年のグランプリに関する話はゼロ。恒例企画もマンネリ化は否めず来年はどうなるか…。【構成=塩次洋太(九州スポーツ)】

ーー今年もお疲れ様でした。

 今年もこのようなコラムをご覧いただきありがとうございました。恒例企画なので一応箇条書きのメモをつくり、10個考えてきました。

ーー毎年、競輪の話が少ないですよね。今年はお願いしますよ。

 その前にひとつ。今年も1年の世相を表す「今年の漢字」が発表されたでしょ。あの、京都のお寺がやっているやつ。

ーー今年は「金」でした。

 あれをウチの下の子どもとあらかじめ予想をしたんですよ。そうしたら、子どもが当ててしまい3,000円を取られました。

ーー年末に何をやっているんですか。

 そうしたら、そのやり取りを見ていた上の子までも手を出してきて2人で6,000円。0.6トンですか。小遣いをせびられ元グランプリレーサーはマイナスです。厳冬ですよ、もう。

ーー時事問題を掘り下げると思ったら、そんな個人的な話でしたか。さあ今年の10大ニュース、お願いします。

【10位】2024年、スタートダッシュに失敗(1月)

ーー今年の仕事始めは1月の大宮記念でした。

 年の初めに羽田空港の滑走路で衝突事故があったでしょう。その影響で福岡空港に5、6時間足止めを食ったんです。あんなことってなかなか無い。最初はダービーに出るために今年はちゃんと頑張ろう、とか思っていたんですよ。だけど、走る前にくじけるという。

ーー打席に入る前にくじけてしまったと。

 スタートダッシュでコケたのが最後まで引きずりましたね。気持ちも落ちて、また今年も本数を走れなかったです。

【9位】コラムレギュラーの荒井さんが相変わらず強い(ー月)

ーー何か想像がつきますが、別にニュースではないですよね。

 自分の生活に大した動きが無いものだから、コラムはどうしても荒井さん頼みになってしまいました。

ーー人に寄生するあたり、このコラムの真骨頂です。

 荒井さんはGI戦線のレギュラーだし、競輪祭の決勝後の動画みたく常に話題を提供してくれますからね。このコラムの年間MVPですよ。コラムは読んでいない設定だけど、来年もよろしくお願いします。

【8位】スコア「100」を切る!(7月)

ーーゴルフの話ですか。

 はい。これまで疑惑の100切りは何回かあったんです。パー70のコースで97を出したのでプラス2をしても99だからいいや、とか。でも、それだと周りからはニセの100切りだとかイチャモンが入ったりして認められないんですよ。

ーー純正の100切りではない、と。

 競輪で言えばGIIIと一緒ですよ。ビッグの裏開催か開設〇〇周年かで評価も変わるでしょ。ゴルフも2打の差に心理が働くようです。ちなみ競輪じゃ、ワタクシは純正で達成しています。しかも、ちょっと上のランクになるGIっていうのも取りましたが。

ーー立会人はいましたか。

 高木(竜司)さんと弟子の(吉田)悟ですね。7月16日です。100を切りワタクシも一人前になりました。ここまで長かったなぁ。ウイニングボールの写真でも掲載しておきましょう。

ーーコラムでもゴルフを楽しむ写真が頻繁にアップされていました。

 今年だけで20回以上は行ったと思います。亡くなった矢村正さんとも行ったし、いろいろ思い出ができました。

【7位】ドラクエのイベントに参加(1月、11月)

ーー極私的感が出ています。

 1月にドラクエのスマホフェスっていうのが東京で、11月にドラクエウォークのイベントが熊本であったんです。

ーー両方に参加したのですね。

 もう熊本であんなにデカいイベントが開催されることなんて無いと思ったので参加できてよかったです。

ーー時期的には。

 競輪祭の前あたりですね。一流どころが今年最後のGIに備えて準備しているなか、こっちも最後の聖戦とばかりに一生懸命取り組んできました。

【6位】競輪界に新たな貨幣単位が誕生!?(ー月)

ーーこれは、まったくわからないです。そもそも貨幣単位とは。

 一、十、百、千、万…とかあるじゃないですか。あれですよ。競輪選手の間で、ある単位が認知されているんです。

ーーどういうことでしょう。

 クオカードってあるでしょう。競輪業界ってクオカード好きが多くて業界に結構出回っているんです。記念やビッグレースになると施行者が宣伝用に作るやつで、新聞社がファンプレゼントとかするでしょう。あれです。

ーー競輪場の抽選会で当たる、とかはありますが選手たちがクオカードに触れる機会ってあるのですか。

 例えばテレビインタビューとか、優秀戦や決勝に乗ると場内で選手紹介とかあるじゃないですか。ああいうときに「ありがとうございました」って感じで記念品として1枚もらえるときがあります。

ーークオカードの話はわかりましたが、貨幣単位とはどういう話ですか。

 だから、競輪業界では一、十、百、クオ、千、トンと。百と千の間に「クオ」っていう単位が入るんですよ。1枚500円だから。百と千の間に。

ーーそんな扱いなのですか。

 とんでもない後輩になると、夕飯代やタクシー代をこっちが出すと、次の日に申し訳なさそうにクオカード1、2枚を持ってきて「昨日はごちそうさまでした」って言ってくるやつもいます。

ーーすでにお金と同等の扱いじゃないですか。

 焼肉食って酒をバンバン飲んで、終電無いからタクシーにまで乗せて、クオカード1枚っておかしいでしょ。

ーー言われてみれば変ですね。

 その後輩の財布には必ずクオカードが常備されていて、会計になると「割り勘にしましょう」とか言って支払うふりしてクオカードを1、2枚取りだすんですよ(笑)。

ーーとんでもないですね。

 払う気がないくせに払おうとするその風情が面白くて「クオカード芸人」と名付けたほどです。世の中、クオカードさえあれば何とかなると思っているんですよ。

【5位】「僕のヒーローアカデミア」の連載が終わる(8月)

ーーこれはなんでしょうか。

 少年ジャンプで連載していた大好きな漫画なのですが、無事に最終回を迎えました。大好きだったんですよ。

ーーそうですか。

 単行本に作者の後書きが書いてあったんですけど、それを読んでいたら涙が出てきたんです。

ーー最近、涙もろいですね。何があったのですか。

 「読んでくれる皆さんがいたから頑張ってここまで書けました」というような記述があったんです。そこに感動してしまいました。でも、こっちから言わせてもらうと書いてくれるから読めるわけじゃないですか。

ーー読者からすると、読ませてくれてありがとうですね。

 ニワトリが先か卵が先かじゃないけど、お互いに思えるっていいなって。競輪でもあるじゃないですか。勝利者インタビューで「ファンの声援のおかげで1着が取れました」みたいな。

ーー自分に重ね合わせたのですね。

 逆の立場、つまりファン目線になったとき、やっぱり推しがああいう感じで感謝してきてくれると、うれしいというか。オレも誰かのヒロアカになってくれればいいな、と。いろんなことが頭をよぎって号泣するという。

ーー深読みしすぎですよ。

 今までは気楽に使っていた言葉だったですけど、決してそうじゃなくて。久しぶりに誰かに伝えたい感動でした。珍しくマジメな話題ですね。

【4位】中川家、存亡の危機 (ー月)

ーー家庭崩壊のようなセンシティブな見出しですね。

 崩壊はしませんけど、似たようなもので。個人的なことですけど、おカネって使うと減るんだなと。

ーー当たり前じゃないですか。

 オレって、ここ2年ぐらいまったく成績が振るわないじゃないですか。オワコン的というか。

ーー2年前の名古屋「共同通信社杯」の落車からすべてが変わりました。

 だから今、中川家の収益が減っているんですよ。2年前までは財政的にかなり潤っていたけど、稼ぎが減ったせいで2年連続赤字なんです。

ーー稼ぎがあったときと同じ感覚で散財してしまうからでしょうか。

 それに子どもも大きくなったし学費やら税金もかかる。やっぱり、おカネは使えば減るんだなと。

ーー住宅ローンとかも残っているのですか。

 ローンは無いんですよ。2年前の10大ニュースで「住宅ローン返済」ってやったでしょ。昔はローンを返しながらも、それ以上に稼いでいたから財政難を感じなかったんです。

ーー何か寂しい話です。

 競輪界は売上も順調で選手の賞金も上がってインフレ状態なのに、中川家はそんな流れにポツンと置いていかれているんです。まさにポツンと一軒家。

ーー冗談のキレも欠いています。

 みんな景気がいいのにオレは赤字で…。もう寂しい限りです。

ーー得意のアルバイトで穴埋めしなければいけないですね。

 もうアルバイトじゃ追い付かないぐらい。予算委員会で小遣いの見直しが入りました。飲み代に監査が入ったので、もうひもじくなるかも。来年はしっぽり飲むので、皆さんワタクシを誘わないでください…。

ーーそれでも飲みたいのでは。

 調子に乗ってシャンパンを入れるとか、もうできませんから。小さなスナックでハウスボトルを飲みながらしっぽり。女の子の一杯も渋ります(笑)。

【3位】神山さんが電撃引退(12月)

ーー神山雄一郎選手ですね。取手を走ったあと引退を発表しました。

 正真正銘のレジェンドですよ。オレも接点があったしビックリしました。

ーー接点というと。

 神山さんのナショナルチーム時代に被っているんです。一緒にお酒を飲ませてもらったりしましたが、レジェンドなのにとても親しみやすかったです。けっこう、毒舌で(笑)。

ーー当コラムでも中川選手が500勝を達成したときに声を掛けてもらったエピソードがありました。

 そうでしたね。神山さんが通算900勝に足踏みしていたとき「お前はいいよなあ〜。オレ、なかなかできねぇんだよ〜」ってボヤいていました。一緒に写真を撮ってもらったのもいい思い出です。

ーーレースで個人的な思い出は。

 神山さんの全盛期ってオレは下を走っていたから、同じステージを走る機会は少なかったんです。あ、そうだ、久留米の温泉でばったり会ったこともありました。

ーー偶然ですか。

 ですね。オレが全裸で露天風呂に入っていると、生まれたままの姿のレジェンドが入ってきて「おぉ!誠一郎。こんなとこで何やってんの〜」って。生まれたままの雄一郎と誠一郎で色んな雑談をさせてもらったのがいい思い出です。

ーー生まれたまま、を言いたいだけじゃないですか。

 引退会見の日に優勝できるなんて、裸の付き合いをした者としては感慨深いものがありました。競輪界のひとつの時代が終わった感がありますね。ものすごく自転車が大好きな方ですし、引退後もあたたかく競輪を見守ってほしいです。

【2位】熊本競輪場が8年ぶりに再開(7月)

ーーやはり、こちらは外せませんね。

 開幕と記念の2回走ったし周りからの祝福もありました。ああ、戻ってきたなって。

ーーいつ走っても感慨深いものですか。

 ですね。7月の再開に合わせてファンの人が横断幕を新たに作ってくれたりして、ああいう後押しもあると頑張らないと、って感じます。

ーーモーニングからミッドナイトまで大盛況ですね。

 そうだ、森内(章之)さんがミッドナイトのテレビ解説をやっているでしょう。あれが気になってしょうがないんですよ。

ーー引退した森内さんですね。

 テレビを付けると出ているので見てしまうのですけど、たまーに黙り込んで放送事故みたくなるときがあるじゃないですか。

ーーかつて世話になった先輩が出ているとホッとしませんか。

 ぜんぜんホッとしませんよ。むしろ心配ですよ(笑)。放送事故にならないようにと願いながらヒヤヒヤして見ています。

【1位】老いを実感(12月)

ーーこれは字面の破壊力もあって深刻な話です。

 12月に辰兄(田川辰二)と松尾(正人)さんの一門の合同忘年会があったんです。そこへ呼んでもらったんですよ。

ーー中川一門は吉田悟選手と2人ですね。隠れ田川一門としてですか。

 11月の武雄で(佐藤)壮志に誘ってもらって、田川一門の総代として出席しました。

ーーそこで、老いに関する何があったのでしょう。

 一次会は居酒屋だったのですけど、生ビール5、6杯と日本酒2、3杯ちょっとでベロベロに酔ってしまい記憶が飛んだんですよ。

ーー許容量としてはもう少し強そうですが。

 そうなんですよ。これぐらいでは酔っても記憶が飛ぶまではないんです。だから誰かに一服盛られたんじゃないかとか思ったりして(笑)。

ーー誰が盛るんですか。

 トイレから帰ってきてチャック全開で飲んでいたらしく、悟から「オリンピアンがチャック全開はダメですよ」って怒られたっていうんです。もちろん、覚えていないけど、それはオリンピアンじゃなくても全開はマズいと思うんです(笑)。

ーー吉田選手の突っ込み方も変ですね。

 二次会にも行ったらしいけど、やっぱり記憶が無くて。周りに言わせると財布をケツポケットに入れられなくてそのつど落とすもんだから、入江(航太)が何度も拾ってギャグやボケを繰り返す“天丼”みたいなことを何回もしていたそうです。

ーー相当、楽しい宴だったからではないでしょうか。

 あとは(宮崎)大空にからんで“競輪は気持ちだ!”とか“心で走るんだ”とかわけのわからないことを言っていたみたいで。

ーーいずれも中川選手らしくないフレーズですね。

 大空は最初、オレが珍しく競輪の話をしているから正座で聞いていたけど、あまりに長くダラダラしていたので、最後は足を崩しますって。鼻くそをほじりながらでも聞いていたんでしょう。

ーーそんなことないでしょう。

 そんなことがあったから粗相があったかもしれないと不安で、後日、競輪場で松尾さんや辰兄がいたから答え合わせをしたんです。だけど、松尾さんも辰兄もみんなぶっ壊れていたようで誰も覚えていなかった。だから、まったく答え合わせができなかったんですよ。

ーー真相は誰も知らない、と。

 一次会で記憶飛ぶって、以前に(高田)隼人さんに注意をしたことがあったけど、まさか自分がなるとは…。記憶の飛ぶ周期が早まっているし45歳の曲がり角。老いを強く感じました。皆さん、記憶が飛んだら要注意です。よいお年をお迎えください。

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中川誠一郎

Seiichiro Nakagawa

中川誠一郎(ナカガワセイイチロウ)。熊本県熊本市出身。日本競輪学校第85期卒業。日本競輪選手会熊本支部所属。師匠は従兄の瀬口慶一郎。 実妹の中川諒子は女子競輪選手、義弟の吉成晃一も競輪選手。2000年8月15日、ホームバンクの熊本競輪場でデビューし1着。後2日間も勝利し、デビュー場所で完全優勝。2016年日本選手権競輪(静岡)、2019年読売新聞社杯全日本選抜競輪(別府)、高松宮記念杯競輪(岸和田)を優勝している。好きな食べ物は寿司。

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