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松浦悠士の“真っ向勝負!”

【松浦悠士の原動力】劣等感がある限り満足などできない! 結果よりも内容に目を向ける

2021/07/30 (金) 18:00 10

 みなさんこんにちは、松浦悠士です。前回のコラムから『高松宮記念杯(GI)』と『小松島記念(GIII)』、『函館サマーナイトフェスティバル(GII)』と戦ってきましたが、結果が思うように出せないレースも多々ありました…。良かったことも悪かったことも今回のコラムで詳しく振り返ってみたいと思います。

高松宮記念杯、考えていることと動きが一致しなかった

前半戦最後のGI高松宮記念杯に出場した松浦選手(撮影:島尻譲)

 最初に高松宮記念杯ですが、決勝には進んだものの、勝つことができませんでした。体の不調や疲れを聞かれることもありましたが、疲れていたのは「脳」だったと思います。前半戦をノンストップで走ってきて、頭をずっとフル回転させている状態のせいか、感覚がおかしくなっていました…。

 頭では「このタイミングで仕掛けるのがベストタイミングだ」とわかっていても、体がそれより早く動き出してしまったり、一旦この選手は出させてしまおうと考えながら、思い切り踏み込んでしまったり、頭で考えていることと反射的な体の動作がちぐはぐで…。僕は練習でもレース本番でも自転車を乗る上で感覚を研ぎ澄ましています。その感覚がズレてしまっていたので、普段では考えられないミスもありました…。

いつもの感覚が戻らない中でも死力を尽くして戦った(1番車・白が松浦選手 撮影:島尻譲)

 結果自体を受け止めて悔しかったことは言うまでもありませんが、改善しないと以降のレースにも影響してしまう…と危機感を覚えました。感覚が鈍るとそれはレース中の「迷い」に繋がってしまいます。「もっとこうしたら良かった」とレース中に走りながら思ってしまう感じ…。頭と体がかけ離れているような気持ち悪い違和感は、小松島記念でも続いてしまい、なかなか思うような走りはできませんでした。

真剣勝負の結果、レースではアクシデントがある

 小松島記念と言えば、書きたいことがあるんです。少し説明したいことがありまして。ニュースやSNSなどで取り上げられていましたが、小松島記念の二次予選。僕が藤木さんにブロックされ、藤木さんは押し上げによる失格というアクシデントがありました。あのシーンが「過度のブロック」とされている件についてです。

 あのレース、僕は後ろから仕掛けたのですが、競輪という競技の特性上、そしてバンクの構造上、後ろからの仕掛けにリスクがあることはわかっていました。そのリスクを回避するためには、しっかりと畑段君を乗り越えなくてはいけなかったんです。あのレースはそれができなかったことが敗因だと考えています。そもそも先に動いているのは僕で、3コーナー〜2センターで藤木さんのコースを奪いに行きましたし、藤木さんも自分のコースを守るために動いたという流れです。

 あの場面、選手は必死に踏み込んでいるため、藤木さんにも制御しきれないヨコの力がかかっていたと思います。故意に失格しようと思って走っている選手なんていないですし、真剣勝負している結果のアクシデントだということはお伝えしたいです。もちろん失格や落車といったアクシデントはお客さんに迷惑をかけてしまいますので、これからも『アクシデントをなくす』という意識は忘れずに走ります。

小松島、最終日に見えたもの

1年で1回の記念レース、小松島のお客さんに走る姿を見せたいと語る松浦選手

 小松島は二次予選で敗れてしまいましたが、多少の疲労は感じていたものの、走りに影響が出るレベルではないと思いましたし、コロナ禍で県外移動もままならない状況下で、会場に足を運んでくれるお客さんの声援にも後押ししてもらい、3日目も最終日も走ることができました。

 最終日は確定板こそ逃してしまいましたが、ずっと外でへばりついての競走となってきつかったんですが、タイム自体は悪いものではありませんでした。車券に貢献できなかったレースでポジティブなことは言えませんが、不調の解決の糸口を見つけられたというか「調子が戻ってきた感じがするな」という実感は得ることができました。本当に体の調子が悪かったり、自転車のセッティングが嚙み合っていなかったり、感覚がズレたままだったら、9着に沈んでもおかしくないレース内容だったように思います。

函館サマーナイトフェスティバルで完全優勝!

サマーナイト決勝、ゴール後には左手でガッツポーズを決めた(撮影:島尻譲)

 サマーナイトでは初日から最終日まで1着を獲ることができ、完全優勝という結果でした! 決勝は裕友が前で頑張ってくれて、後ろを固めてくれたのは阿竹さんと小倉さん。拳矢の突っ込んでくるスピードも良かったですし、抜かれなくて良かったです(笑)。シリーズを通して裕友と竜馬がレースを作ってくれたおかげで、勝つことができたと振り返っています。

 もちろん完全優勝という結果は嬉しいですし、ひとつ優勝を刻めたことは紛れもなく良かったと思っていますが、レース後には自分の改善すべきポイントを多々見つけていましたし、「こんな隙を見せていたらGIでは勝てない」と思う部分もありました。優勝という結果だけをみれば嬉しいのですが、僕個人の課題を考えると、決して手放しで喜べない開催でした。まだまだやることが山積みということを忘れずに頑張っていきます…!

函館を盛り上げるマスコットりんりんと1着ポーズ(撮影:島尻譲)

オールスターはリラックスして

 8月のオールスターはファン投票の結果、ドリームレースの出場権利を手にすることができました! 投票してくれたみなさん、ありがとうございました! 結果は2位で、1位の平原さんと299票差でした。「もう少しで1位だったのに!」と悔しい気持ちがないわけではありません(笑)。でも、平原さんが1位というのは仕方がないというか(笑)。今後良いレースを観てもらって、さらにファンの皆さんに支持してもらえるように頑張っていこうと思います。何よりも得票数が増えたこと、その事実が嬉しかったです。

昨年のオールスター競輪は脇本雄太選手と壮絶なデッドヒートでファンを沸かせた

 連覇のかかるオールスターになりますが、このコラムを書いている今、「きちんとリラックスして臨もう」と考えています。それを意識して練習内容も変えています。力を入れて「連覇を狙う!」という感じではなく、ちゃんと休養も取り入れながら、万全にケアをして。力の抜き過ぎには注意しますが(笑)。自然体のまま乗り込んで、ベストパフォーマンスできるように調整を頑張っています。ぜひ応援よろしくお願いします!

読者の方から寄せられた質問に答えます

 それでは今月も質問に答えていきたいと思います! 今月は5問の質問に答えます! みなさん面白い質問をありがとうございます!

今回は5問の読者質問に真っ向勝負!(撮影:島尻譲)

ーー影響を受けた人や言葉があれば教えてください

 一流のプロスポーツ選手の考え方や言葉はかなり参考にしていますし、影響を受けていますね。本もたくさん読んでいますし、常に競輪に繋がる学びを探しています。

 王貞治氏の言葉で『プロは絶対にミスをしてはいけない』というのがあるんですが、その言葉を競輪に落とし込んで考えてみることがあります。「人間なのでミスはするものだ」という方が大多数ではあると思いますが、そういう意識ではミスをしてしまうということだと思います。僕の敗因の多くはベストを尽くした上での自らの脚力不足、相手の力やレースを見誤る判断ミスによるものです(脚力不足も判断ミスに入るものもありますが)。

 こういったものとは別に、『レースを見過ぎてしまった』、『仕掛けるべきタイミングで仕掛け損じた』ようなミスは絶対にしてはならないと思っています。相手がいることなので、全てのレースで勝てるわけではありませんが、全てのレースでベストを尽くさなくてはいけません。その中で、ミスをしていてはベストを尽くしたとは言えないと肝に銘じています。

 これまで数多くのミスをしているので、まだまだその領域に達しているとは思っていませんが、今までの経験を糧にミスをしないようにレースを走っています。イチローさんも『ミスなしでは深みはでない』ということを言っていますし、失敗の積み重ねがあり、それを乗り越えてこそ、成功(ミスをしない)や、いい走り(深み)があると思っています。

ーーダービー王・松浦選手は町田太我選手をどのように見ていますか?

 今年連係もしていますし、サマーナイトでも町田君のレースを見ていましたが、純粋にトップレベルになる素質がある選手だと思っています。今後連係することもあるでしょうし、期待大の選手ですね。

ーー松浦選手が対戦してみたいドリームレースを組むとしたら? 9選手を並びとともに教えてください

 これは難しいというか、まず9選手を挙げられませんし、並びなんてまとめられません(笑)。でもGIとか記念とかではなくて、企画レースのようなものがあるとして、こんなレースを走ってみたいと考えるものはあります。どういうものかというと『中四国9人のレース』で、取鳥雄吾、松浦悠士、清水裕友の三分戦です(笑)。質問にあるようなドリームレースにはならないと思いますが、中四国のメンバーで戦ってみたいなあって考えたりしてますね(笑)。

ーー目標にしてきた日本選手権を優勝して、モチベーションを維持するのが難しいと思います。どのようにモチベーションを管理していますか?

 これは困りました(笑)。と言うのも、モチベーション維持するのが難しいと思ってないからです(笑)。具体的に言うと、日本選手権のことを挙げると、結果こそ優勝できましたが、僕の中ではいくつも悔しいポイント・改善点があるんです。僕は脚力をつけるための練習は皆がしていることなので、レースで勝つための技術練習や、考え方(意識)の向上、自分の持っている能力でどうやったら脚力が上がるか、スピードを出せるかを考えた練習しています。

 自分に何が足りないかをしっかり把握して補うことが大事だと思っているので、自己分析はとても大切です。でも脚力というのは簡単に付くものではなく、少しずつ少しずつ付いていくものです。なので、レースでは体の使い方や戦術で補うほかないんです。結果だけ見れば勝てたレースでも、脚力のなさに凄く劣等感を感じる時があります。勝ったとしても負けているような感覚になることも…。もっと脚力をつけて頭で描く戦術を実現していきたいです。

 その劣等感がある以上、『モチベーション維持するためには〜』なんて語れません。何か自分が言えることがあるとすれば「結果よりも内容を見る」ということになるのかな…? という感じです(笑)。

ーーオリンピックの自転車競技・日本代表チーム(脇本選手・新田選手)を競輪選手としてどのように見ていますか?

 日本代表チームの選手は物凄い脚力を持っている選手たちですし、世界の強者を相手に戦っている強さがあります。僕は脚力では到底かなわないので、競輪で勝負する時はラインだったり、戦術だったり、体の使い方だったり、いつも総力をあげて戦っています。世界と戦える脚力を持った選手に競輪で戦っていくぞ、勝つぞ! という意識で、ナショナルチームの選手と対戦しています。

 ただ、競輪と自転車競技は別物ですし、普段は敵として戦っている相手ですが、オリンピックとなれば応援しています。代表メンバーは競輪のレースに出場せず、競技に集中してきた人たちです。その成果を発揮して、東京五輪でメダルを獲って日本の競輪に帰ってきて欲しいなあ、という気持ちですね!

みなさんの質問を大募集しています!

 それでは今月のコラムはここまでにします! 次回も質問に答えていきたいと思いますので、ぜひぜひお気軽に質問を寄せていただけたら! よろしくお願いします!

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松浦悠士の“真っ向勝負!”

松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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