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太田りゆ“ノーメイクな私の本音”

【太田りゆのパリ五輪結果報告】一緒に歩んでくれた人達へ大感謝 自分の持っているすべての力で走ってきた

2024/08/28 (水) 19:00 20

日本代表としてパリ五輪に参戦した太田りゆ(写真:著者提供)

 ネットケイリンの読者の皆さん、今月もこんにちは! オリンピックを終えた太田りゆです⸜( '꒳ ' )⸝  今回のコラムは私にとってパリオリンピックがどのようなものだったのか? その結果報告をしようと思います。待ちに待って、望みに望んで勝ち取ったオリンピックの舞台。この8年の全てを懸けて、この日のために、ここを走るために生きてきました。

 レース当日は「そんな日が本当に現実にやってきたのか」と不安や緊張はもちろんありました。でも、その不安や緊張の何倍もレースをすることへの覚悟とか高揚感が強かったです。今までの競技生活の中で1番自分に自信を持って、スタートラインに立ちました。

羨ましかった東京オリンピックの拍手

 それでは、ここから1本1本を振り返ります。

 2着までの選手が勝ち上がることができるケイリンの予選ラウンド。私は中団スタートから、後ろの動きに合わせて自力で前へ。目標にしたいオランダの選手も前に上がってきて、「よし!2番手確保!」と思いきや、私の後輪が1番手にいた中国の選手の前輪からは出切っていなくて、内側を抜かれてしまいました。

 「あぁミスった」とは思いましたが、レース後にネガティブな気持ちは一切残りませんでした。「絶対に大丈夫。今のレースはかなり見えていた」という気持ちしかありませんでした。身体もよく動くし、気持ちも“今日の私、最高(◍´꒳`◍)”という感じで、敗者復活戦は「絶対、勝てる!」と確信めいたものがありました。

初戦5着も良好なコンディションを確認、敗者復活戦を前に「ここで終わりかもしれないといったイメージは1ミリも持たなかった」と本人談(写真:著者提供)

 そして敗者復活戦、私は1番前からのスタートでした。敗者復活戦も2着の選手までが勝ち上がるレースです。私は「2番手か3番手に飛びついて、その後勝負する」とプランを立てていました。そしてフランスの選手と対戦メンバーの中で1番目標にしたかったオランダの選手が私の前に来ました。「よし! 最終周のまくりはオランダに任せよう、そしてその先で自分が差す」と判断しました。時速70km近いスピードの中、瞬時の判断にも正確性が問われます。最後のゴール手前で、バッチリ計算通りに差しが決まり、「よし!1位だ!勝ち上がり!」と思ったと同時にジャンが鳴りました。

 「え? 絶対ゴールじゃん…!」と確信はありましたけど、私は“競輪選手”。ジャンが鳴ったらあと1周もがく習性あり。結局は審判のミスだったんですけど、何がなんでも勝ちた過ぎる私は万が一自分自身のミスだったらと怖くて、何も考えずにもう1周もがきました。脚、使った…(ノД`)・゜・。

 それでも「別にいい! オリンピックの舞台をたくさん走れた!」と捉えることができました。私にとってオリンピックの舞台で走ることはやりたかったこと過ぎて、アクシデントも小さいことで気になりませんでした。『ディズニーランドは楽しくて、たくさん歩いても特に疲れない』みたいなモードに入っていたので、特に脚にダメージを感じたわけでもなかったんですよね。

“潰れてもいい”覚悟で臨んだ五輪の舞台、アクシデントで動揺するメンタルではなかった(写真:著者提供)

 何より、オリンピックの舞台で1位を取った瞬間の景色は本当に最高でした! ゴール後にものすごい数の観客席から聞いた事のないような声援と拍手。東京オリンピックの時、日本の選手が走るたびに、客席から地鳴りのような拍手が沸いていました。その応援を受ける選手たちのことを、私は「羨ましいな」って気持ちで見ていました。その3年後、フランスの地でその“羨ましかった応援”をもらったような気がして、心の底からガッツポーズ! 日本から応援に来てくれていた私のママは泣いていました。

たとえ母国の選手が敗れても大喝采で勝者を讃えたヴェロドローム・ナシオナル(写真:著者提供)

涙は「本気だったから」全部全力でやった結果に後悔なし

 敗者復活戦の翌日、準々決勝を走りました。準々決勝はそれまでのレースと異なり、4位までの選手が勝ち上がりになります。今まで何度も敗退してきた“魔の準々決勝”。「4位でも勝ち上がれる」と楽観的に思うのは大間違いで、私にとって低くはない壁です。

 スタートは後方から。私の前にオランダ、さらにその前にイギリスのエマ・フィヌケンがいました。エマはここ最近、「最強」と言っても過言はない選手です。レース中の動きで私はエマの後ろを選択してスイッチしましたが、並走でもつれる形になりました。それでも前から数えて4番目でレースを走っていました。「お願い!何とかここ4番手にハマらせて! お願い…!お願い!」と必死に4番手の位置で踏んでいき、何とか必死に4位を確保。いよいよ準決勝まで進むことができました。

レースを冷静に見つめて“魔の準々決勝”でも勝ち上がりを逃さなかった(写真:著者提供)

 準決勝は最後方からのスタート。ここは3位に入れば決勝進出というレース。1番前から後ろまで全員大スター選手の並び。さすがオリンピック、これがオリンピック。私はジェイソンから『前の動きに付いて、自分のタイミングで仕掛けなさい』とレース直前に作戦会議で言われました。本当にその通りの展開になり、ラスト1周で絶好の私のまくりの出番!

 思いっきり踏んだ、全力で。あれ以上はない。「これで前に出切れれば残れる!出て!出ろ!踏め!踏め!お願い出て!」自分の中でそう思って走りました。たぶん日本で私を応援してくれている全国各地のみんなも、そう思ってくれていた瞬間だったと思います。でも出切ることは叶いませんでした。

自分のタイミングで仕掛け、最大限のパワーで踏み込み勝負に出た(写真:著者提供)

 あの日、あのレースの一番の勝負所。私は間違いなく強かったと思います。でも世界のトップたちはもっともっと強かった。まだ順位決定戦を走らなくてはいけないのに、涙がボロボロ出てきました。東京オリンピックの後から「悔しくても人前で泣かない」って誓ったのに。慰められることで満足してもどうしようもないから。なのに、涙が止まらなくて。メダルに本気だったから。それを手にするためにやってきたのだから。

「パリ五輪でメダル獲得」は実現しなかった(写真:著者提供)

最終結果はケイリン9位、スプリント20位

 順位決定戦はなんとか気持ちを切り替えて挑みました。決勝ではないけど、このメンバーだって正直相当エグい対戦相手です。レースは3位で、私のケイリンは全体9位(※)でした。3位でゴールを通過したとき、「ここが決勝だったら銅メダルだったな」って思いました。

 でも私の持っている力を全部全力で出し切った結果だったし、後悔なくケイリンを終えました。その後のスプリントは1回戦敗退。もっともっと走りたかったと思います。でも、対戦では積極的なレースをして、自分の勝負ができたし、ここも後悔はなく、「私の実力だった」と納得しています。(※編集部注…女子ケイリン史上最高順位)

スプリントでは開催国フランスの有力選手マチルド・グロと対戦(写真:著者提供)

 そして、すべてを終えた私は閉会式に参加しました! 閉会式はスタジアムで行われて、8万人の大観衆からお疲れ様の拍手をもらうという超ご褒美タイム♡ あの“トム・クルーズが空から降ってくるやつ”も生で観ました!

 オリンピックを自分の中で総括すると、世界最高峰の緊張感と集中力を味わって、そこからは逃げずに、すべて受け止めて、それらをすべて楽しむことができました。間違いなく積極的に勝負することもできました!

 メダルこそありませんでしたが、私の人生にとってかけがえのない経験をしました。素晴らしい景色を見ました。素晴らしい雰囲気を味わいました。この経験をこれだけに留まらせず人生の糧にして精進していきたいと思います! オリンピックという、私の大きな夢を一緒に見て、共に戦い、一緒に歩んでくれてファンのみんなに本当に感謝しています。いつも応援はしっかり届いていました。本当にありがとう。

大観衆からの“ご褒美”を全身に感じて(写真:著者提供)

帰国後のオールスター競輪「やばい、泣く」

 さいごにオールスター競輪のことも書くね。オリンピックから帰国後、その足でそのままオールスターへ。初日の選手紹介で「りゆちゃん、お疲れ様ー!」「りゆちゃん、おかえりー!」の声があまりに多くて。「やばい、泣く」と思いつつ(笑)。みんなの声援のおかげでやる気も湧いて、なんとか3日間のシリーズを頑張れました。

 2日目のレースで私は失敗しちゃって、決勝に乗れるか危なかったけれど、投票順位のおかげで勝ち上がることができました。ファンのみんなに救われて走った決勝は2着。もちろん優勝したかったけど、ひとまずは車券に貢献できて良かったです。今回のコラムはオリンピックを中心に書きましたけど、オールスター競輪もたくさんの応援をありがとうございました。

 次のレースは9月29日からの川崎競輪です。ぜひ“生”太田りゆを観にきてください(^^)♡ さて、今月のコラムは以上です♡ 私の今後についてはまた機会を改めて報告しますね!

ガールズケイリンで会いましょう(写真:著者提供)


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太田りゆ“ノーメイクな私の本音”

太田りゆ

Ota Riyu

埼玉県上尾市出身。112期生のガールズケイリン選手。2017年7月、高松競輪場でレースデビューし、初勝利を飾る。同開催では3連勝を果たし、デビュー場所で完全優勝という快挙を成し遂げる。また日本代表・自転車競技選手としても活躍しており、2019年にはワールドカップに出場し、ケイリン種目で銀メダルを獲得。2020年11月には全日本選手権女子スプリントで優勝。国内外のハイレベルな戦いに華麗なダッシュで挑み続けている。2021年・東京五輪ではリザーブ選手として日本代表に選出、2024年・パリ五輪では正代表選手として日本代表に選出されている。趣味はメイクとファッション、パワーの源はコカ・コーラ。

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