2021/02/18 (木) 17:00 22
netkeirinをご覧のみなさん、福島の佐藤慎太郎です。はじめましての人も、競輪場で“しんたろう〜”と呼んでくれるファンも、マッチョ親父とか、中年の星、番手瞬殺屋なんてネットに書き込んでくれる人も楽しんで読んでくれたらと思いますよ。このコラムでは競輪のこと以外にも趣味のことや選手生活のことを書こうと思ってるけど、その時々書きたいことを書くとするよ。どうぞお手柔らかに。
1月に大宮記念と豊橋記念をまたぎ、全部で10日間、沖縄でナショナルチームの練習に参加したよ。元々ナショナルチームのブノワコーチに参加をお願いしていたこと、オレが冬場は暖かい沖縄を拠点にしていることがあって参加のハードルが下がった。ブノワもオレがいることで競技と漢字の競輪の融合を求めたのかもしれない。実際、オレが参加することで双方に良い科学反応があったと思う。
オレは阪神ファンなんだけど、昔の阪神のキャンプで、川藤幸三が軽く素振りをやってベンチを賑やかす感じでは全然なくて、新人のつもりで取り組むためにワッキー(脇本雄太選手)達と同じメニューをこなした。筋肉痛の上に筋肉痛を上塗りするという経験が新鮮で、気持ちも新人のようになったよ。ワッキーとかは、自分が強くなる事だけを考え、1本1本集中してもがいていた。
あと感心したことがある。新田祐大がチーム全体の事を考えていて、場の仕切り役だったんだよ。若手に真剣に指導している姿を過去何度も目にしているので、改めて流石だなって。今後も新田が持っているリーダーシップを発揮し続けて欲しいって思ったね。新田はそれだけの器がある男だし、オレが言うより、若手も言う事を聞くと思う。強さ・実力の面も含めて模範になれるはず。
(練習には)大宮記念の前検日の前日まで参加していたので、疲労もあったし、大宮記念では本来の走りとはいかず、応援してくれるファンに迷惑をかけてしまった。
豊橋記念の決勝のオレのブロックを各所で話題にしてくれてるが、ちょっと美談にされ過ぎている。せっかくのコラムだし本人解説を(笑)。正直なところ、あの時点でタテに踏んで伸びていく感覚はあまり持てなかった。自分の中では“きつくてふらふら”という感じが勝っていた。余裕があれば、もっとドーン! という感じで止めていたしね。
ブロックと言うより、浅井と引っかかってしまった感じで、賞賛されるようなブロック技術ではなかった。ただ、前で行ってくれた松浦のためになればという想いは当然あって、止めたいというマーカーの本能は無意識に出た。松浦に対しての礼儀、という感じ。
オレは『ラインは家族』だと思って走っている。それは即席ラインとか北日本とかのくくりではない(もちろん、北日本は新田を頂点に温かい家族になっているけどね)。これは違うかもしれないし、失礼になるのかもしれないが、グランプリの平原も似たような気持ちだったんじゃないかな。
今年は松浦、山田英、深谷、松本貴と、他地区の選手との連係も多く、本当に良い経験をさせてもらっているよ。番組マンへの感謝も常々忘れちゃいけないね。
最近は年齢について聞かれることも増えているから、この機会に少しだけ。残念ながらきつい練習は段々とできなくなってきた。科学的なトレーニングを取り入れながら、質を高めていかないとな、と思ってるよ。あと、限界って“思い込み”だと思うんだよね。ただ年齢のせいにしているだけなんじゃないのかな。競輪も人生も年齢のせいにして諦めたらつまらないっしょ!
競輪の良いところは、人それぞう違う目標をかかげる事ができる事。オレなら特別競輪の優勝、若い子ならS級入り、チャレンジのおじさんなら目の前の1勝。脚力が下がり、成績が落ちても、その時々の舞台で競輪選手はドラマの主役になれる。その価値基準は、色々とあるよね。
だけど、あと選手を10年、20年やるとして、そのために自分の限界を超える練習をずっとやっていくと思うと頭が痛くなるのも事実なのよ。毎日、勝つために自転車を漕がないといけないきつさはあるんだよね。UberEatsなら勝たなくてもお金もらえるけどね(笑)。
楽しむ競輪をやりたいけど、今の位置にいるとそれは無理。S級トップの選手は24時間、競輪の事を考えているんじゃないかな。寝ていても当然のように自転車のことを考えていると思う。絶えず新しい事、新しい方法、新しい考えを取り入れる。
それと年齢に勝つには好不調の波を小さくすることが大事になってくると思う。まず5月のダービー、その後のオールスターとか親王牌にピークの頂点を持っていけるように、年間を通じた調整も意識しなくてはいけないね。体作りと人作り、これが競輪選手としての基本なので、年齢も受け入れながら目の前のことをこなしていくつもりだよ。
たまに記者や解説者、いわゆる業界関係者への興味を聞かれるんだけど、山口幸二さんも加藤慎平も若くして辞めて大変な部分もあるでしょう。周囲にいろいろな気を使いながらやってると思うしね。自分を高める事だけに集中すれば良い競輪選手の方が、今のオレは性に合っているから、当分ナイかなって。でも何があるかわからないから、デイリースポーツには一枠あけておくように言ってありますけどね(笑)。
全日本選抜競輪、精一杯戦ってきますよ。全日本選抜の前になると、過去に優勝していることもあって、新聞やテレビが取り上げてくれる。あの時の気持ちを思い出して懐かしくもなるし、良い高揚感もあるね。グランプリを除けばオレにとって唯一のタイトルだけど、勢いだけで取った気がしてて。
あの頃は自分の事しか考えず、1着を取るのが全てだと思っていた。それが選手としての価値だと思っていたんだよね。まあ若気の至りっていうとそれまでだけど、競輪って違うじゃないですか?っていうのを今は知ってて。なので今年は今年の全日本選抜をきっちり走ってくるよ。
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佐藤慎太郎
Shintaro Sato
福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界の第一線で活躍し続けている。2019年、立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現で常にファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。麻雀とラーメンをこよなく愛する筋肉界隈のナイスミドルであり、本人の決め台詞「限界?気のせいだよ!」の言葉の意味そのままに自身の志した競輪道を突き進む。