JCXシリーズ第8戦 ざおうさまCUP

2025/02/27(木) 12:00

シクロクロスの国内リーグJCXシリーズの第8戦にあたる「ざおうさまCUP」が1月19日、宮城県蔵王町総合運動公園内の特設コースで行われた。過去にはUCI(世界自転車競技連合)認定の国際レースが開催されていたコースであり、シクロクロスの中では、よく知られたコースのひとつだ。JCXシリーズとしては、12月1日の松伏以来の開催となり、全日本選手権後、1カ月以上の間を開け、久しぶりに開催される国内シリーズ認定の公式戦となる。

蔵王町総合運動公園を舞台に、地形を生かしたテクニカルな特設コースで「ざおうさまCUP」が開催された

蔵王のコースはグラウンドや河川敷、調整池も含まれる公園の環境を生かして設計されている。地形に合わせ、3つのセクションが構成され、キャンバーと呼ばれる斜面を上下に這うように走る難易度の高いエリアが設けられているのに加え、「忍者返し」と呼ばれる急な上りや、シケイン(障害物)も設定されている。今大会からは新たにサンドセクションも追加され、まさにスキルとパワーが求められるコースが用意された。

蔵王は1月に開催されることが多く、過去には雪の中のレースも少なくなかったが、大会当日は晴れに恵まれ、気温は10度まで上がり、この時期の蔵王としては異例の暖かな日となった。朝は路面が濡れ、重い泥がまとわりつくようなコンディションだったが、晴天と高山から吹き下ろす風により路面が次第に乾かされ、午後開催のカテゴリーではドライコンディションへと変わったエリアも多かったと言う。 女子エリートの最前列には今季好調な石田唯(TRKWorks)、今月末にフランスで開催されるシクロクロス世界選手権に出場が決まっている渡部春雅(明治大学)らが並んだ。
好スタートを切り、最初にコーナーを回ったのは、渡部。これを竹村舞葉(SHIDO-WORKS)が追い、すぐ後ろには石田が迫っていた。グラウンド区間に入ると石田が竹村をかわし、先頭の渡部を追う。

他を寄せつけないペースで先行した渡部春雅(明治大学)

だが、渡部は揺らがない好ペースを守り、先頭を独走、石田を寄せ付けずにテクニカルなコースを走り続けた。
竹村にトラブルが起き、後退し、竹村と3位争いを繰り広げていた小田恵利花(NASKTrading)が単独3位に浮上、先行する2名を追った。

キャンバー(斜面)を這うように設計された区間を苦戦しながら越えていく

渡部は最終周回までペースを落とさず、2位以下を引き離した状態で、大きく両手を挙げてフィニッシュ。まもなく渡欧し、日本代表として参戦する世界選手権に向け、調子を上げていることを示した。

2位に1分以上の間を開け、優勝した渡部

2位には石田、3位には小田が入っている。

優勝した渡部、2位の石田唯(TRKWorks)、3位の小田恵利花(NASKTrading)

続く男子エリートのスタートラインに並んだのは、今季からシクロクロスの新チームを結成し、参戦している元王者小坂光(Utsunomiya Lux)、社会人レーサーながら、安定した力でレースに臨む加藤健悟(臼杵レーシング)、永野昇海(イナーメ信濃山形)ら。

スタートの号砲が響くと、57名が一斉に飛び出していく。この中で最初にコーナーを回ったのは岡山優太(Olanda Base/Watersley)。 2番手につけた加藤が岡山をかわし、先頭に立つ。

勢いよくスタートしていく男子エリートの選手

1周目が落ち着いたころ、松本一成(W.V.OTA)が加藤を追い抜き、単独で先頭に立った。MTBのプロ選手だった父を持ち、MTBのクロスカントリー競技のジュニアで全日本、アジア選手権を制しているサラブレッドだ。現在はスピードスケート選手としても活躍している「脚」の持ち主だ。

テクニカルなエリアも軽やかに、単独で先行する松本一成(W.V.OTA)

加藤が松本を追い、その後ろ、3位のポジションにはベテラン小坂が控える。先行する松本は順調に差を開き、20秒ほどまで広がった。レースは単独先行する加藤と、加藤と小坂の2位争いという構図に。

2位争いをしながら走る小坂光(Utsunomiya Lux)と加藤健悟(臼杵レーシング)

松本は順調にペースを守り、単独で先頭を走っていたが、キャンバー区間でタイヤが剥がれるトラブルが発生してしまう。
加藤をかわし、2位に浮上していた小坂は差を詰めようと走るが、松本は素早くピットに駆け込み、バイクを交換。再びコースに飛び出していった。
再スタートした松本は冷静さを失わず、落ち着いてコースに復帰。ハイペースを刻み、小坂は差を詰めることができないばかりか、また差が開いて行った。

ウィリーで独走フィニッシュする松本。エリートカテゴリーでの初勝利を上げた

松本はペースを守り、単独で最終周回へ。軽やかにウィリーを披露しながら、悠々とフィニッシュラインを越えた。JCXシリーズ初優勝とともに、エリートカテゴリー初となる1勝を上げた。
小坂が2位で入り、続いて3位の位置を守った加藤がフィニッシュし、表彰台を確保した。

優勝した松本、2位の小坂、3位の加藤

今季のJCXシリーズも、残すところ2戦。最終戦となる「シクロクロス東京(JCX戦はDay2に開催)」はレインボーブリッジを望むお台場海浜公園で開催。

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【結果】
JCX第8戦「ざおうさまCUP」
エリート女子

1位/渡部春雅(明治大学)44:12
2位/石田唯(TRKWorks)+01:18
3位/小田恵利花(NASK Trading)+04:42
4位/竹村舞葉(SHIDO-WORKS)+05:41
5位/安藤沙弥(SHIDO-WORKS)+06:03

エリート男子
1位/松本一成(W.V.OTA)58:55
2位/小坂光(Utsunomiya Lux)+00:44
3位/加藤健悟(臼杵レーシング)+01:08
4位/永野昇海(イナーメ信濃山形)+02:09
5位/松田賢太郎(SUPACAZ)+02:29

画像:Satoshi ODA

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【JCXシリーズ・レポート】
第3戦 御殿場シクロクロス
第4戦 幕張クロス
第5戦 琵琶湖グランプリ
第6戦 GHISALLO CUP
第7戦 松伏シクロクロス

(P-NAVI編集部)

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