2022/12/02(金) 09:16
「三菱地所JCLプロロードレースツアー2022」の最終戦となる「第12戦・秋吉台カルストロードレース」が10月30日(日)、Mine秋吉台ジオパーク周辺特設コースにて開催された。
このコースは日本最大級のカルスト台地・秋吉台を貫くカルストロードに設定されたもの。過去には国体のコースとして使用されたこともある。昨年に引き続いての開催となるが、昨年は9月のまだ暑さが残る中でのレースであったが、今年はJCL主催レースの最終戦という位置づけになった。
絶景の中を抜けて行く
アップダウンが多く、クライマーが実力を発揮するコースだ
レースは、1周29.5kmのコースを4周回する総距離118kmに設定された。このコース内にはアップダウンが連続して現れ、登坂力がカギを握る。最大の難関にして、最高の見せ場は、ゴール前に控える「YMFG カルストベルグ」。激坂の部類に入る登坂であり、特に前半は15%前後の急勾配が続く。ヨーロッパのクラッシックレースに登場する上りに似ていることから坂を意味する「ベルグ」の愛称が付けられた。この坂の後半は、少しなだらかになるが、ゴールまでまったく気が抜くことのできない登坂区間となる。この1.3kmの坂区間をうまく戦うことが、レースの攻略につながる。
JCLの年間ランキングは、UCI(世界自転車競技連合)認定の国際レースである「ツール・ド・おきなわ」の順位が反映されたポイントが組み込まれ、確定するが、JCL主催レースとしてはこれが最終戦。選手がリーダージャージを着て走る姿も、今年の見納めとなる。
リーダージャージを着る小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)、渡邊諒馬 (VC福岡)らを先頭にスタート
個人総合首位を確定させ、その証である黄色いリーダージャージを着た小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)が最前列に並んだ。小野寺はスプリント賞首位も確定させ、ブルーのリーダージャージも守り切っている。U23の首位の証であるホワイトジャージは渡邊諒馬(VC福岡)、この日は出走していないが、赤いリーダージャージを着る山岳賞はネイ
サン・アール(チーム右京)が確定させている。
最終戦とあり、駆けつけたサポーターたちの拍手を受け、快晴の空の下、選手たちがスタートしていく。パレード走行を経て、審判者からフラッグが振られる。最終戦のスタートだ。最後に1勝を狙うチームの選手が、一斉にアタックを仕掛けていく。
冒頭からアタックの応酬が続く
だが、どれも決定的な動きには結びつかなかった。集団のままで最初のカルストベルグに突入する。このきつい区間は、絶好の仕掛けどころになると予想されていた。チーム右京のメンバーが積極的に飛び出していく。1周目から動きが激しく、ペースのアップダウンも大きくなり、早くも疲弊し、厳しい表情を浮かべる選手たちの姿も見られるようになっていた。
レースをコントロールする意思を示すチーム右京
2周目に入ると、先頭のペースが落ち着き、すでに集団から遅れてしまっていた選手も下りで合流することができた。集団はまとまりを取り戻し、安定した状態で周回を回る。ここで、久保田悠介(ヴィクトワール広島)が単独で飛び出し、集団も容認する方向に。
久保田悠介(ヴィクトワール広島)が独走する
久保田は単独で先行し、丸々1周回を走ったが、2回目のカルストベルグに差し掛かる頃には集団が追いつき、吸収されることになった。ここから、レースを支配するべくチーム右京が集団の先頭を固め、メンバーを減らして行くために、ペースを上げていった。
集団の先頭はレースを支配したいチーム右京とリーグのリーダーである宇都宮ブリッツェンが固める
頂上に設けられた、この日1回目の山岳賞は、山本大喜(キナンレーシングチーム)が1位通過。山岳賞のために先行したかに見えた山本大喜の動きに、小石祐馬、ベンジャミン・ダイボール、ベンジャミ・プラデス(以上、チーム右京)、山本元喜、花田聖誠(ともにキナンレーシングチーム)が続き、実力者揃いの集団を形成した。
山本大喜(キナンレーシングチーム)の動きに連動し、キナンレーシングチーム、チーム右京の主要メンバーが飛び出してきた
この後に、下り区間で追走してきた集団が先行メンバーを捉え、ふたたび一つの集団に戻った。2チームのメンバーによる先行は、両チームの強さとモチベーションの高さを強烈に示す形となった。
レースは、また一つの集団での展開に戻った。先頭はキナンレーシングチームとチーム右京が固める
続く3周目のカルストベルグも、登坂能力が抜きんでたダイボールが飛び出し、山頂をトップで通過。この後に山本大喜、プラデス、小石が続き、集団から飛び出した形になった。
集団から飛び出すベンジャミン・ダイボール(チーム右京)
キナンレーシングチームからは一人のみの先行となった山本大喜に、プラデスや小石らのチーム右京勢が波状攻撃を仕掛けるが、山本大喜はまた単独でこの動きにひとつひとつ反応して行く。ここにキナンレーシングチームのメンバーが合流、またもや2チーム間の戦いになるかと見えたが、さらに集団も追いつき、再度レースは仕切り直しになった。
先行する山本大喜に加勢すべく合流するキナンレーシングチームのメンバーたち
レースは不安定なまま、ファイナルラップへ。最終戦の勝利をかけた駆け引きはさらに激しくなった。
人数は大幅に減ったが、再びひとつの集団に戻り最終周回へ
※最後のカルストベルグへ突入。結末やいかに……!?
最後のカルストベルグに、もしも集団で入れば、スプリント勝負に持ち込まれ、登坂をこなせたスプリンターが勝利を奪ってしまうだろう。登坂に入る前に先行し、逃げ切って優勝するチャンスを得ようという選手たちが、決死の覚悟で仕掛け始める。往路では決定打は出なかったが、復路のワインディング区間で山本元喜、クライマーの堀孝明(宇都宮ブリッツェン)、石橋学(チーム右京)、昨年のモンゴルチャンピオンであるエンクタイヴァン・ボローエルデン(レバンテフジ静岡)の4人が集団から抜け出した。4名はこのままフィニッシュを目指すべく、全力でペダルを踏み込んでいく。
山本元喜、堀孝明(宇都宮ブリッツェン)、石橋学(チーム右京)、エンクタイヴァン・ボローエルデン(レバンテフジ静岡)が抜け出した
最後のカルストベルグへ突入。この時点で集団とのタイムギャップは10秒を残していた。
山本元喜がダンシングでペースを上げ、他の3名を振り切りにかかる。他の3人はこの動きに反応することができなかった。
狙いを定め、集団から飛び出しを図る山本元喜
山本元喜の優勝が決まったかと思われたとき、メイン集団からプラデスがキレのいいアタックを繰り出した。
山本元喜に迫るベンジャミ・プラデス(チーム右京)
プラデスはすばらしい加速を見せ、先行していた3名の選手たちを次々と交わし、先頭を行く山本元喜との距離を単独で縮めていった。
残り300m地点。ついにプラデスが山本元喜を捕らえ、ふたりの一騎討ちに。
山本元喜をかわし、先行するプラデス
残り150mから、プラデスはさらに加速、山本元喜を置き去りにすると、そのままフレッシュな走りでフィニッシュまで駆け上がった。悠々とウィニングポーズを決めながら優勝。すぐ後に、山本元喜が入り、3位には追い上げた山本元喜の実弟である山本大喜が入った。上位は、チーム右京とキナンレーシングチームのメンバーが固める結果となった。
笑顔でフィニッシュラインを越えるプラデス。チーム復帰後2週間で初勝利をあげた
優勝したベンジャミ・プラデスは、かつて日本で長く活動しており「ベンジャ」の愛称で親しまれていた。今年10月18日にシーズンも終盤ながら、チーム右京への電撃復帰が決まり、レースに参戦し始めたところだった。
プラデスは「今日のコースは試走した段階から自分に向いているコースだと思ったので意気込んで臨んだ」と語った。終盤、先頭はかなりのスピードで走って、追いつくのは不可能かとも思ったが「なんとか自分の得意な展開に持ち込むことができた」と振り返る。「来日してすぐに結果を出すことができて非常に嬉しい」と、満面の笑顔で喜びを語った。
表彰台のプラデスと山本兄弟
山本大喜は今年を最後に移籍すると報じられていおり、山本元喜が同じチームで走るのも、このレースが最後になる。山本大喜は「シーズン通して積極的なレースができたので、充実した年だった」と語った。
JCLの今季のリーグ戦については、このレースを持って終了となった。ツール・ド・おきなわの結果が加算されるが、各カテゴリーのランキング首位も確定となっており、12月11日に丸ビルホールで開催されるアワードセレモニーで表彰される予定だ。
この日も積極的な走りを見せたホワイトジャージの渡邊諒馬
個人総合首位を守った小野寺には、スイスの高級時計ブランド「CVSTOS」の300万円の時計が授与される
来年は新チームも発足し、選手の引退、移籍も多く、ロードレース界には大きな動きが起きることになるだろう。来季のJCLのリーグ戦に関しては、現時点で発表がなく、これからの動向を見守っていくことになりそうだ。
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【結果】JCL第12戦・秋吉台カルストロードレース
1位/プラデス・ベンジャミ(チーム右京)3:06'52"
2位/山本元喜(キナンレーシングチーム)+0'03"
3位/山本大喜(キナンレーシングチーム)+0'15"
4位/ダイボール・ベンジャミン(チーム右京)+0'15"
5位/石橋学(チーム右京)+0'23"
【JCL各賞リーダージャージ表彰】
イエロージャージ(個人ランキングトップ)
小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)
ブルージャージ(スプリント賞)
小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)
レッドジャージ(山岳賞)
ネイサン・アール(チーム右京)
ホワイトジャージ(新人賞)
渡邊諒馬(VC福岡)
画像提供:ジャパンサイクルリーグ(JCL)
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(三菱地所JCLプロロードレースツアー2022)
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