JCL第7戦・キナン古座川ロードレース

2022/09/20(火) 16:35

JCL第7戦・キナン古座川ロードレース

ジャパンサイクルリーグ(以下、JCL)が主催するサイクルロードレースのプロリーグ「三菱地所 JCL プロロードレースツアー 2022」は9月3日、和歌山県古座川町で第7戦「キナン古座川ロードレース」を開催した。

このコースを用いたレースは、今年が初開催となる。地域の名称になっている清流「古座川」は、熊野の主峰大塔山を水源とし、驚くべき透明度を誇る美しい川だ。レースのスタート地点には、大きくそそりたつ巨大な「一枚岩」が選ばれた。「一枚岩」は高さ100m、幅500mと、岩としては破格の大きさで、山とも見間違えるほどの存在感を放っている。この地域に広がる古座川弧状岩脈の岩々が織りなす景観は、神秘的で、美しく、唯一無二の絶景といえよう。翌日には、このレースコースを用いたサイクリングイベントも企画され、サイクルツーリズムとレースとを掛け合わせた開催が試みられた。

キナン古座川ロードレースの表彰ステージ
スタートゴールならびに表彰ステージは「一枚岩」前エリアに設営された。画角に収めきれないほどの大きさだ

自然豊かな古座川町は、面積の9割が山と川で占められており、地形をそのままに、アップダウンの多いダイナミックなコースが設営された。勝負どころは、登坂距離6km、平均勾配4%の「下露峠」になるだろう。このレースは1周41.6kmのコースを3周回する124.8kmの設定で競われる。登坂の厳しさに加え、下りもテクニカルであり、テクニックにも体力にも優れた総合力のある選手の戦いになることが予想された。

個人総合首位の証であるイエローのリーダージャージを着た増田成幸、スプリント賞首位のブルージャージを着た小野寺玲(以上、宇都宮ブリッツェン)、U23首位のホワイトジャージを着た渡邊諒馬(VC福岡)と、ホストチームであるキナンレーシングチームを先頭に選手がスタートラインに並んだ。
今季前半のUCI(世界自転車競技連合)認定レースで連続して総合優勝を飾ったネイサン・アールや、ベンジャミン・ダイボールなど、チーム右京の外国人勢が再来日し、レースに臨んでおり、現時点でリーグ首位を走る増田が、その地位を守り切れるかが注目されていた。

キナン古座川ロードレースのスタート
リーダージャージを着る選手とホストチームを先頭に一斉スタート

キナン古座川ロードレースの序盤戦
レースは序盤から激しい展開に。選手の飛び出しと集団による吸収が続き、ハイペースで進む

レースはスタートすると、1周目から集団から抜け出すべく、アタックが次々と仕掛けられる激しい展開になった。登坂区間に差し掛かると、勝ちに来たチーム右京が集団の前方を固め、ハイペースで牽引を始めた。早々に、このペースに耐えかねた選手たちが脱落していき、山岳賞地点を前に、早くも集団は完全に崩壊した。
下り区間を終えるころには、新たな動きが生まれていた。昨年の個人総合優勝者である山本大喜(KINAN Racing Team)と、宇賀隆貴、今年春のUCIレースを総なめにしたネイサン・アール、2019年までは世界最高峰のチームで走っていたベンジャミン・ダイボール(以上3名、チーム右京)という超強力メンバーが先頭集団を形成。早々に後続の集団と約1分の差を開き、2周目に突入した。レースは、一気にチーム右京に圧倒的に有利な展開になった。

猛スピードで駆けるネイサンアール
美しい古座川の流れの脇を猛スピードで駆け抜けるネイサン・アール(チーム右京)。序盤から勝利への意欲がみなぎるエネルギッシュな走りを見せた

リーダー増田を抱える宇都宮ブリッツェン、ホストチームであるキナンレーシングチームがこのままの態勢でフィニッシュを迎えられるわけがない。再び登坂区間に差し掛かると、後続集団から増田成幸、マルコス・ガルシア(キナンレーシングチーム)、さらに石橋学(チーム右京)がペースアップし、抜け出した。この実力者たち
も協力しながら先頭を追い、頂上からの下りで先頭グループに加わった。これで先頭を行くメンバーは、合計7名に。精鋭が揃った先頭グループは順調にローテーションを回し、ペースを保ちながら最終ラップへ突入した。

先頭集団
7名になった先頭集団

登坂力に極めて優れたメンバーが揃った先頭集団の面々だが、勝負どころとなったのは、予想通り、登坂区間だった。登坂力に長けたマルコスが早々にギアを上げる。ここでアールが先行し、追う増田、山本大喜が、わずかに遅れて山頂に差し掛かった。マルコスが先頭に躍り出て山頂をクリア、そのまま下り区間も単独で抜け出し、リードを稼ぐ。
下りから平坦区間に差し掛かる間に、増田、山本大喜が追い上げ、アールに合流し、3名のグループになった。チームメイトのマルコスが先行している山本大喜と、なんとしてもマルコスをとらえたいアールと増田とでは、思惑は異なるが、フィニッシュに向かう。アールと増田は強力な追い上げを見せて、マルコスに追いつく。ここで4名は、またひとつのグループに戻った。
マルコスはクライマーであり、ここまで独走し、力を使ってしまった状態で、スプリントに競り勝てる可能性は極めて低い。数的有利を保つキナンレーシングチームは、山本大喜にスプリント勝負を託す判断をした。マルコスが山本大喜を牽引し、先頭に立って決戦に向かう。

ラスト300m地点。個人タイムトライアルの全日本チャンピオンを何度も経験した独走力のある増田が得意のロングスパートを仕掛けた。アール、山本大喜がこの後に続く。そして、ジワジワと差を詰めたアールが、わずかに増田をかわし、僅差で勝利を獲得した。数々の国際レースを制してきたアールだが、JCLのリーグ戦としては、初勝利となった。

ネイサンアール
ゴール勝負に競り勝ち、一勝をもぎ取ったネイサン・アール

2位となり、ポイントを獲得した増田は、イエロージャージをキープ。地元で勝利を飾りたいキナンレーシングチームとしては悔しい結果になったが、山本大喜は3位表彰台を確保した。

シャンパンファイト
表彰式後のシャンパンファイト

ネイサンアールは表彰台で、「暑くてとてもハードなレースだったが、そんな中でもチームメイトがうまく動いてくれて、負けるわけにはいかなかった」とチームメイトへの感謝と、思いを語った。「スプリントには持ち込みたくなかったが、結果的にはチームに勝利をもたらすことができた」と満足げに語り、「とても難易度の高いコースだったが、素晴らしいコースレイアウトにリスペクトを感じた」と、主催者への配慮も忘れなかった。


山岳賞がネイサン・アールの手に渡ったが、それ以外のリーダーには変動なし。ここからの終盤戦にはどんなドラマが待ち受けているのだろうか

ブルージャージの小野寺、ホワイトジャージの渡邊は首位を守ったが、レッドの山岳賞ジャージは、体調不良から欠場が続いていた山本元喜(キナンレーシングチーム)から、この日の山岳賞ポイントを2カ所で1位通過、1カ所で2位通過してポイントを獲得したネイサン・アールの手に移った。

JCLリーグもそろそろ終盤戦に差し掛かる。この後も、高知、山口と、地元と連携したダイナミックなコースを用いたレースが続く。どのような展開が待ち受けているのか、楽しみだ。

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【結果】JCL第7戦・キナン古座川ロードレース
1位/ネイサン・アール(チーム右京)3:11'45"
2位/増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
3位/山本大喜(キナンレーシングチーム)
4位/マルコス ガルシア(キナンレーシングチーム)+0'07"
5位/ベンジャミン・ダイボール(チーム右京)+1'37"

【JCL各賞リーダージャージ表彰】
イエロージャージ(個人ランキングトップ)

増田成幸(宇都宮ブリッツェン)

ブルージャージ(スプリント賞)
小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)

レッドジャージ(山岳賞)
ネイサン・アール(チーム右京)

ホワイトジャージ(新人賞)
渡邊諒馬(VC福岡)

画像提供:ジャパンサイクルリーグ(JCL)

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(今年のJCLプロロードレースツアー)
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JCL第2戦・カンセキ宇都宮清原クリテリウム
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JCL第6戦・コーユーレンティアオートポリスロードレース(第2戦)(P-Navi編集部)

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