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【松浦悠士の詳細解説】失敗を後悔するよりも次の戦いに繋げていく! “負けに負けず”に成長したい

2021/09/29 (水) 18:00

今月は共同通信社杯・初日の振り返りがテーマ。2日目以降は1・3・2着とすべて確定板(撮影:島尻譲)

 みなさんこんにちは、松浦悠士です。前回のコラムから『平安賞(GIII)』と『共同通信社杯(GII)』を走りましたが、両開催とも勝ち上がりを逃す結果になってしまいました。起きたことを悔やんでいるだけでは、その経験は生かせないと思っていますので、今回のコラムではしっかりと『自分が勝ち上がれなかった理由』について書いていきます。

迷いが生まれてしまったことがすべて

初日、松浦選手と連係したのは柴崎淳選手、共同通信社杯ならではの珍しい連係が見られた(撮影:島尻譲)

 今回具体的にレースを振り返るのは共同通信社杯の初日です。僕は、何もせずに終わる、仕掛けられないで終わる、ということがないようにいつも気を付けています。近頃では仕掛けられないままに負けるレースは滅多になく、共同通信社杯の初日のような走りはありませんでした。

 あのレースでは“良くないこと”が重なってしまい、レース中に考えてしまい、迷い、何もできずに終わってしまった、と振り返っています。良くないことの一つは、開催直前の練習にあります。普段レースで乗っているフレームと違うものを使っていたり、練習方法を変えていたり、色々と試行錯誤していました。その結果、今までの踏み方と感覚的に違う部分が出てきてしまい、いざレースになって「ここで踏み込んで行けるのか?」と考えながら走ることになりました。

 選手としてフレームやセッティングを試行錯誤するのは当然で、このこと自体に後悔は一切ありません。でも次の戦いに向けて敗因を分析する上で、重要なポイントだとも思っています。

自転車のセッティングは選手の勝敗を大きく分けるもの(撮影:島尻譲)

勝ちたい気持ちについて

 もう一つの良くないことを挙げれば、それはメンタル面にあります。共同通信社杯の初日は「勝ちたい」という気持ちが強く出てしまって、「自分のレースをしたい」という気持ちを上回ってしまったように思います。

 正直なところ、小松島記念や向日町記念で勝ち上がりを逃した時も、この感覚に近いものがありました。

「勝ちたい、勝ち上がりを逃すことはできない」という気持ちが強いと、仕掛けのタイミングが「ここだ!」とわかっても、身体が反応せず、固まるような感じになってしまいます。「自分のレースをしたい」と集中している時は仕掛けのタイミングが「ここだ!」という瞬間には無心に身体が動き出しているので、勝ちに対する意識がマイナス方向に働いてしまったような自覚があります。

一瞬の迷いが命取り

 たとえ一瞬の判断とは言え、仕掛けるタイミングを見過ごして勝てるほどレースは甘くはありません。共同通信社杯の初日のレースを振り返ると、最終周回の2コーナーで行くタイミングがありましたし、その機会を逸したことで内に詰まってしまう展開を引き寄せてしまいました。勝ちにこだわって「ここで行って大丈夫だろうか?」という一瞬の迷いが勝負を分けました。

 フレームやセッティング、練習方法にも要因がありましたし、「勝ちたい」という気持ちを意識し過ぎて固まってしまい、それらが重なることで、勝ち上がりを逃す結果になってしまいました。

失敗を重ねていかないと成長はない

 僕を信じて車券を買ってくれた競輪ファンの皆さんに納得できないレースを見せてしまったので、これから復調できるように頑張らなくては! と思っています。

 初日の不調の理由として自転車のセッティングについて挙げましたが、共同通信社杯の二日目から最終日までを走る中で確認を続けられましたし、今はセッティングに関する迷いはない状態です。あきらめずに最後まで走ることで見えてくるものがあるので、平安賞も共同通信社杯も、全てのレースでセッティングにもレースの組み立てについても意図を持って走りました。

 負けた次の日は精神的にも落胆してなかなか切り替えも難しいのですが、失敗を重ねないと成長はないと思うので、トライし続けるしかありません! さきほども書きましたが、やったことに後悔はないので、「これがダメだったんだ…」ではなくて、次に生かすための「こうして行こう、こうすれば良いんだ」を見つけて頑張っていきたいと思います!

平安賞最終日の特秀戦では他を寄せ付けず貫禄を見せつけた(撮影:島尻譲)

読者の方から寄せられた質問に答えます

 それでは今月も質問に答えていきたいと思います! 今月は5問の質問に答えていきます!

今回は5問の読者質問に真っ向勝負!(撮影:島尻譲)

ーー好きな車番は何番ですか?やっぱり3番車・赤ですか?

 どの車番でも勝利を目指す気持ちは変わりません。でもやっぱり3番車は好きです。僕の地元・広島カープのチームカラーでもありますし(笑)。それと1番車も好きですね。

ーーS級S班の、“赤パン”を履くことのプレッシャーはありますか?

 赤のレーサーパンツを履くこと、S級S班として戦うことにプレッシャーは感じています。開催前のニュースなどで『SSが〇〇人参戦!』とか『決勝に残ったSSは〇〇人!』といった話題には当然敏感になりますし、意識が向いています。ただ、プレッシャーはありますが、ここで戦いたいと気持ちが強いですね。ふとした時に赤のレーサーパンツを見て「やっぱ(赤パンは)いいなあ」って思うこともあります(笑)。

ーー競輪選手として大切にしている考えや心構えは?

 前回のコラムで『岩津さんと良く話をする』と書いたんですが、岩津さんに『応援される選手になれ』と言われたことがあり、この言葉を考えの基本にしています。

 応援される選手になるためには、大多数の人に「良いレースをしているな」と思ってもらう必要がありますし、良い走りを見せられるように努力しなくてはいけません。あと、競輪選手としてと言うよりも『人として』ということを考えます。「予想に関するコメントはきちんと出そう」「受け答えが良い選手でいよう」などは大事にしていますね。

 レース以外ではなるべく人に気を使い、きちんとしたモラルを持っていたいです。(レースでは気の使い過ぎはいけないので、そこは勝負の世界を生きていきます笑)。

 その上で『弱さを知る、弱さを忘れない』ということを考えの軸にしています。僕はS級に上がってからA級に落ちるという経験をしているので、弱さについて多くを知っていると思います。強い選手は細かいことを気にしなくても、少しのミスをしても、強さでリカバリーできてしまいます。

 でも自分が弱いことを知っていれば、位置にもこだわるし、ミスをできないという意識も働きますし、そこに勝機が訪れます。他の選手を見ていても『自分が一番弱い』と思ってレースを迎える選手はやっぱり強いです。負けないと強くならないと思っています。

ーーファンの言葉に励まされることはありますか?

 もちろんあります! レースの後に温かい声をかけてもらったり、負けたときには「次頑張れ!」と応援してもらったりするので、いつも励まされています。

 最近の話ですが、僕のTwitterで「色紙などお送りしてもらえればサインを書きます」という企画をやったんです。コロナ禍でファンとの交流も減っていますし、何かできないかと考えてのものでした。その企画を通じてお手紙をもらうこともあって、インターネット以外でも交流ができた感じがしました。お手紙を読んでいると「応援してもらっているんだな」という実感が湧き、もっと頑張るぞと思えましたし、やっぱり嬉しいです。

ーースイーツを思いっきり食べれるとして、どのくらいの量を食べる?

 スイーツ好きを公言し続けた結果、皆さんから全国様々な名店を紹介してもらっています。最近みなさんに教えてもらった名店・名スイーツもチェックできないボリュームになってきています(笑)。

 スイーツ好きは間違いないのですが、食べる量は普通なので、せっかく教えてもらったのにチェックできないし、言い過ぎるのも良くないのかなと思ったこともあります(笑)。具体的にどのくらいの量を食べるというのも難しいんですが、ミスタードーナツなら10個はいけますかね!

年末のグランプリに向けて

 それでは今月のコラムはここまでにしたいと思います。今回の共同通信社杯では勝ち上がりを逃しましたが、SNSでも「グランプリに向けて頑張れ!」というコメントがありましたし、自分自身そこに照準を絞ってやっていかなければならないと考えています。

 同時に、次の久留米(GIII)、寛仁親王牌(GI)で、しっかり立て直したいという気持ちがあります。うまくいかないことがあっても対策を立てて修正していくのが僕の持ち味だとも思っているので、応援してくれるファンの皆さまにしっかり立て直した姿を見せられるように、日々精一杯頑張っていきます!

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松浦悠士の“真っ向勝負!”

松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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