2017/12/23 (土) 07:20
12月10日、ビッグニュースが海外から飛び込んできた。遠く離れた南米のチリ・サンティアゴで開かれていた自転車のワールドかカップ(以下、W杯)第4戦ケイリンで、脇本雄太(福井94期)が金メダルを獲得(現地時間では12月9日)したというものだった。日本人としては14年ぶり3人目の快挙。脇本は昨年のリオデジャネイロ五輪にも日本代表として参加したが、結果は散々なものに終わった。今年に入り、深谷知広(愛知96期)が東京五輪を目指すため、新田祐大(福島90期)が率いるドリームシーカーに加わったことが刺激、ライバル心に火が点いたのかも知れない。
脇本だけでなく、第4戦ではオムニアムの梶原悠未が第3戦(カナダ・ミルトン)に続き優勝。女子のチームパシュート(橋本優弥・古山稀絵・中村妃智・鈴木奈央=静岡110期)は3位。男子のチームパシュート(今村駿介・近谷涼・一丸尚伍・沢田桂太郎)は2位。競輪学校に在校中の橋本英也はオムニアムで2位。結果、金2・銀1・銅2=計5個のメダルを第4戦では獲得した。日本がW杯1大会で5個のメダルを獲得したのは過去最高である。
しかし、残念なのは日本におけるメディアの扱いだ。平昌(ピョンチャン)五輪を控え連日、スピードスケートは新聞やテレビで大きく取り上げられていた。それなのに脇本の金メダル獲得はどうだったか?彼の偉業に触れたところは少なかった。触れたとしても目立つところではなく、新聞で言えば、なぜか競輪の面に掲載されていた。
確かに脇本は競輪のトップライダーであることは事実だ。だが、競輪の面に記事が載ることに、その新聞社の見識を疑ってしまう。W杯は競技の大会で、もしも脇本が来年3月の世界選手権(オランダ・アペルドールン)で優勝した場合も扱いは競輪の面になってしまうのか?もっと言えば、五輪でメダルを獲ったケースでもそうなのか?
これはメディアのみならず関係団体の責任もあると感じてしまう。知り合いのライターに聞いたら「帰国の記者会見もしょぼかった。本来ならもっと話題になってもいいのに、国民が脇本君の金メダル獲得を知らない。ライター仲間でも知らなかった人間が相当いたしね」とのことだった。
競輪の人気をいかに回復させるか?これは競輪関係者が口を揃えて言う言葉である。そうならば脇本の金メダルは競輪ファンのみならず、一般にもその偉業を知らせるべきであろう。「W杯で金メダルを獲った選手を観に行きたい!」と、競輪場に足を運ぶ人間も少なからずいるに違いない。
2020年東京五輪を控え、いまだ自転車競技に対する国民的関心度は低い。五輪競技でありながら、あまり注目されないのはなぜか?関係団体による広報活動の不備もあるのではないか。今回の脇本の快挙、偉業をいかにして国民に知らせるべきかという意識が高いとは思えなかった。可哀想なのは脇本やメダルを獲った選手たちである。国の代表として臨んだ世界的な大会だったのに……。
Text/Norikazu Iwai
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター