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【松浦悠士の状況報告】競輪選手の“やりがい”と欠場の“さみしさ”を痛感! 「走らない限り出番ない、練習しても面白くない」

2023/09/29 (金) 18:00

 みなさんこんにちは、松浦悠士です。いつもこのコラムではレースの振り返りを書いていますが、オールスターを途中欠場してから休んでいるので、今回は状態面の報告をしたいと思います。読者の方にいただいた質問にも答えますね!

オールスター競輪の途中欠場から回復に向けて取り組んでいる(撮影:北山宏一)

とにかく痛かった! 今は少しずつ緩やかに回復中

 オールスターで落車したその日に病院に搬送され、即入院になりました。鎖骨と肩甲骨が折れていて、「要手術」の診断でした。選手になり初めて全身麻酔を経験したんですが、麻酔が解けると「こんなにも痛いのか!」と驚くほど痛かったです。術後は一切何もできなくてホントに困りました…。落車の衝撃を受ける瞬間が痛いのは言うまでもありませんが、手術後もかなりの痛みでしたね。

 上半身の怪我でしたし、退院直後から「脚は絶対に落としたくない!」と考えて下半身のトレーニングを始めました。でもとにかく痛みが強くて質の高い練習はできず…。本来の練習には程遠く、あくまでも“リハビリ程度”という毎日でした。

レース復帰に向けて退院直後から下半身のみトレーニングを開始(撮影:北山宏一)

 ここ最近は骨折そのものの症状自体は良くなってきており、自転車に乗っている時に感じる痛みも少し軽減してきました。ただ、肩腱板(肩の骨と筋肉の間の筋)が損傷か断裂をしている状態なので、その部分には痛みが残り、まだ動かしにくいです。エコーで撮った時には内出血がひどく、状態が映らなかったくらいでしたし、この部位の痛みは「少し長引くだろうな」という想定で練習をしています。

松浦悠士の“しなやかさ”を象徴する肩周辺の可動性にどんな影響があるか(撮影:北山宏一)

久留米に照準合わせるも未知数

 とはいえ、熊本記念in久留米は出場したいですし、自分の状態を確認しながらできる限りの準備をしています。(数値に表すのは難しいですが)感覚的には60%ぐらいの回復状態にあると思っています。脚力そのものはあまり落ちていない感じで、そこは本当に安堵しています。

 でもこんなに長く休んだこともないですし、広島バンクが改修工事中でバンク練習の機会がないので、久留米に向けてどこまで戻せるかは未知数です。開催前にバンク練習の機会を作れたとして、今の60%を70%〜80%にするくらいが限界だと思いますし、100%の状態での復帰は難しそうです。

 復帰戦では「レース感覚がどうなっているのか?」や「どんな風に動けるのか?」も含め、ひとつひとつを確かめながらのシリーズになりそうです。未知数ですが最善を尽くして走り抜き、その先の弥彦GI寛仁親王牌に繋げていきたいです。

未知数の中でも最善を尽くす(撮影:北山宏一)

さみしい、つまらないという感情

 無理をしても仕方がないので欠場しましたが、青森の共同通信社杯は本当に走りたかった…です。「誰が優勝するんだろう?」とか「今の展開なら自分だったらこう走るかな?」とか考えながらレースを観ていました。その時間はずっと『さみしさ』に襲われていましたね。焦りとか不安とかではなく「さみしい」の感情が本当に大きかったです。

 競輪選手という職業は走らない限り自分の出番がない。練習しても披露する場所がなければ面白くないし、つまらない。お客さんの前で走ることで、そこではじめてやりがいって生まれるんだなって。当たり前のことですけど、本当に痛感しました。療養中に宮崎のトークショーに行かせてもらえてお客さんと会うことができました。それはすごく良かったです。でも僕は選手だから、やっぱりレースでお客さんに会いたい。

 走らないと戻りが延び延びになってしまう感覚もあるので、久留米は走る方向で気合を入れています。前述したとおり未知数の状態ですが、勝負できるように最善を尽くします。精一杯頑張りますので、みなさん応援よろしくお願いします!

状況はどうあれ精一杯の“真っ向勝負”をする(撮影:北山宏一)

読者の方から寄せられた質問に答えます

 それでは今月も質問に答えていきたいと思います!

今回は3つの読者質問に真っ向勝負!(撮影:北山宏一)

ーー競馬やボートレースがお好きとのことですが、馬券や舟券はどんなところを見て買っていますか。応援している馬や騎手がいたらぜひ教えてください。

 最近は賭けてなくて、結構“見るだけ”になっていますね。食事をご一緒したり、交流のある矢作調教師の馬を応援しています。矢作調教師も僕をすごく応援してくれるので、やっぱり矢作厩舎は特別に見ちゃいますね。騎手は菱田裕二君が仲良くて、菱田君の馬は毎回応援しています。よく買っていた頃はレース展開を推理していました。そこに馬の性格や競馬なら騎手、ボートレースなら選手の性格や心理状態、走り方みたいな要素を自分なりに想像して買い目を決めていましたよ。

ーー自分は緊張して「いざというときに力が出し切れないこと」がよくあります。松浦選手は常に平常心で力を出し切っているように見えます。レース前やレース中の緊張をどのようにコントロールをしていますか?

 僕は基本的に「結果を考え過ぎないように」と心がけています。普段の練習は「勝つために!」とか「優勝したい!」とか考えるんですけどね。でも、いざレースのときは「練習の成果を出すだけ、自分の力を出すだけ」って気負わずにやっています。やっぱり「勝った後のこと」とか「負けた後のこと」とか“後の結果”を考えてしまうと緊張してしまうと思うんです。

 プランを決めておいて、その瞬間、瞬間でしっかり判断すること、集中してゴールまで自分の力を出し切ることが大事だと思います。プランって事前に決めていたものが一つでも崩れてしまったら頭が真っ白になると思うんです。

 だから何かが崩れても、「このときはこうするぞ」っていう“次の引き出し”を準備しておくのも重要かな。例えば、落車で怪我をしてしまった今、アクシデントへの意識も含めて練習に取り組んでいます。結果を考え過ぎないこと、事前に徹底した準備に取り組むこと、この二つが緊張を和らげてくれると思います。

ーー以前開催された立川記念の決勝は関東が5車並びました。松浦選手か清水選手がいたらスンナリという展開ではなく、いい意味でかき回してくれたのではないか?と感じながら見ていました。Ifの話ですが、立川記念決勝を単騎で走るとしてどのように走りましたか?

 相手のデキやその場の空気感、バンクの環境面とか色々な要素で判断してレースを走るので、「もしも自分が走っていたら」を書くのは無理ですね!「立川の決勝単騎でどのようなレースをしたか?」というのは当事者になってみないとわからないです。

 たしかに僕が単騎の時は数的有利なラインに対して「自由にレースをさせたくない」と臨むことが多いですね。でもプランを描けても、それを実際にできるのかどうかは別の話で、「どうにもならん!」というレースになることもあります。「一石を投じたい」みたいな意識を持ってレースを動かしたり位置を求めたりを基本的な作戦として組むことが多く、『何もしないで終わり』を避けるべく頑張っています。

 あと、「展開向いて勝ちました」っていうのは競輪のレースにおいて良くあることなんですけど、僕のスタイルじゃないというか、展開向いての勝利は喜べません。GIタイトルやKEIRINグランプリなら、さすがに喜べそうですけどね(笑)。

さいごにおまけトーク「やっぱりダービー折れてた」

 読者のみなさんに状況報告できたので、今月はここまでにします。さいごにおまけの話がありまして(笑)。今回の鎖骨・肩甲骨の骨折でCTを撮って発覚したんですけど、ダービーの時に「骨は折れていないという診断が出ました」と言っていたんですが、やっぱり肋骨は折れていたみたいです。今回の怪我でその時の骨折痕が確認されました(笑)。わからないものですね…。

「肋骨が痛むので本調子には遠い」とコメントしていたが、まさか折れていたとは…(撮影:北山宏一)

 あと驚いたのは肩甲骨って案外なんとかなる部位ということです。僕は鎖骨も折れているのでどうしようもなかったんですが、肩甲骨だけだったら結構乗れちゃうと思います。病院の先生も「もう肩はズレることはなさそうだな、乗っていいよ。痛いとは思うけどね(笑)」とか言うんですよ。

 鎖骨はワイヤーも入れるので時間がかかるんですけど、肩甲骨に関しては先生も比較的緩かったです(笑)。なので、みなさんも鎖骨はダメですけど、肩甲骨だけなら練習して大丈夫ですのでご参考に! (その前に骨折しない毎日を!ですけどね)

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松浦悠士の“真っ向勝負!”

松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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