アプリ限定 2025/10/17(金) 18:00 0 3
「共同通信社杯競輪(GII)」が終了し残るビッグレースもあと2つ。「寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」(以下親王牌)を控えたこのタイミングで、競輪界の中心的存在であるS班の活躍と次期S班の座を狙う有力選手について獲得賞金状況から考察した。(※賞金10月15日時点)
今年最後のGII「共同通信社杯競輪」は南修二悲願のビッグレース初制覇という結末で幕を閉じた。
賞金ボーダー上で争っていた南が10位と約3400万円の差をつけグランプリは決定的となりこれで残る切符は2枚。ここからは現在上位を走る有力選手は安泰なのか、そして残りの枠に滑り込む可能性を秘める選手を取り上げていく。
さて、ここで競輪界の頂点に位置するS班の賞金状況を見てみよう。7月から繰り上がってS班となった松浦悠士、そして24年末にS班から陥落した選手も含め、賞金ランキング50位以内に入っている11選手をグラフで紹介する。
まずS班の中で現状グランプリ圏内に位置しているのは古性優作、眞杉匠、脇本雄太、郡司浩平、新山響平の5人だ。
2位の古性は共同通信社杯の決勝で手痛い失格を喫したものの、先日の松阪記念では安定感抜群の走りで優出を果たすなど、引き続きコツコツと賞金を積み重ねている。25年終盤戦も近畿のリーダー格として強さを見せつける。
今年すでに2度GIを制している4位脇本は完全に良い時の凄味が戻ってきている。腰痛でサマナイを欠場するなどケガに悩まされていたが共同通信社杯で3勝、そして前走の京王閣記念決勝では絶望的な位置から異次元の捲りを放ち優勝を果たすなど、完全に王者の風格を取り戻した。共に近畿を支えてきた相棒の古性、同県の寺崎と共にさらに勢力図を拡大していく。
5位眞杉はサマナイを制し、グランプリ出場をほぼ確実なものとしているが調子のムラがやや気がかり。西武園記念で地元4車を粉砕する破壊力もあれば、京王閣記念の二次予選で末を欠き4着に敗れるなどやや危なっかしい部分もある。ただ、能力の最大値が高いのは誰もが認めるところで、あとはそのアベレージをどこまで上げていけるかが年末グランプリ奪取に向けての大きな課題だろう。
6位郡司は9月の青森記念で今年6度目の記念優勝を挙げるなどGIIIで無類の強さを誇っている。賞金は1億円を突破し、ビッグレース未勝利ながらグランプリ出場はほぼ当確の位置まで上り詰めた。あとはグランプリで共闘できる仲間を何人引き上げられるかが地元・平塚グランプリを制すための大きなカギとなるだろう。
9位新山は9月の地元記念で準V、そして先日の松阪記念で今年初Vを挙げるなどようやくエンジンがかかってきた様子だが、まだまだ安全とは言えないポジションであることには変わりない。親王牌は北日本から出場する先行型の選手は新山のみで酒井雄多の番手から獲った松阪記念のようには行かないだろう。この正念場を自力で乗り切れるか。
一方、現状グランプリ圏内から漏れているのは、犬伏湧也、岩本俊介、清水裕友、松浦悠士の4人だ。
11位犬伏湧也は序盤戦なかなかピリッとしない成績だったが近況は迫力が戻ってきた。岐阜記念で準V、共同通信社杯で3連対、そして平安賞ではらしさ満点のカマシ先行で優勝を果たすなどエンジン全開。カマシ先行が自慢の犬伏にとって前橋(親王牌)、小倉(競輪祭)とスピードが生かせるドームバンクが続くことは好材料なはず。残りの2つで必ずや結果を残してグランプリ初出場の権利を手にしたい。
14位の岩本俊介もクライマックスに向けて状態を上げてきた。前走京王閣記念の初日特選では岩本の他にも眞杉、脇本らSS4人が出場する豪華なメンバー構成となったが、その中で果敢に先行勝負に挑み上位と僅差の4着に逃げ粘るなど、見た目の着以上の上昇気配を感じさせる内容だった。南関は郡司、深谷、松井と強力な自力屋が揃っているだけに良い位置を回れるなら一発回答も十分にあり得るだろう。
上位陣が軒並み調子を上げてきている中、清水裕友・松浦悠士の中国ゴールデンコンビは窮地に立たされている。清水は前走の京王閣記念で事故の煽りを受けたとはいえ二次予選敗退、前走がケガからの復帰戦となった松浦は同じく京王閣記念に出走し準決勝で失格を喫するなど2人ともにリズムが悪い。さらに強力な味方である太田海也は世界選手権に出場する関係で親王牌には出場できないなど、あまりにも厳しい現状だが、豊富な経験を活かして何とか乗り越えていきたいところ。
またS班陥落からの即復活を狙う選手たちも奮闘している。
深谷知広は2月の「全日本選抜競輪(GI)」の決勝で3着に入るなど上々の滑り出しで前半戦に5000万円以上の賞金を稼ぎ、かなりグランプリが近いポジションに位置していたが現在は8位とやや雲行きが怪しくなってきた。ただ、次に控える親王牌は2014年に優勝も果たしている相性のいい舞台だ。前走函館競輪で優勝した勢いそのままに躍動する。
山口拳矢も19位までジワジワと順位を上げてきている。共同通信社杯では準決勝で敗れるもその後松阪競輪、富山競輪と連続で優勝を果たすなど確実にデキは上向きつつある。地区全体の成績が低迷しているうえに、藤井侑吾(現姓:杉浦)が関東に移籍するなど、苦難の連続に悩まされている中部地区に希望の光をもたらしたい。
佐藤慎太郎は未だ50位圏外とかなり絶望的な状況だ。松阪記念の落車の影響で長い期間苦しみ、ようやく復調の兆しが見えてきた矢先にまたまた共同通信社杯で落車してしまう。普通であれば48歳という年齢で落車が続くと体もガタガタになり低迷していってしまうことが多い。しかしこの佐藤ならまた不死鳥のようにカムバックしてくれるはず…と期待しているファンも多いだろう。これまで幾度となく競輪ファンに希望を与えてきた不屈の男が限界を感じさせない走りでファンを魅了する。
最後に、S班以外の賞金上位選手を見ていきたい。
首位を走る吉田拓矢はかなり心配な近況。8月の西武園記念の準決勝で落車、共同通信社杯の予選ではガラポン抽選でまさかの初戦敗退を掴まされ、そして迎えた前走の京王閣記念の二次予選でまたもや落車に見舞われるなどあまりにもツキがない。地元・関東開催である親王牌で元気な姿を見せてほしいところ。
3位寺崎は「オールスター競輪(GI)」でビッグレース初優勝を果たすとその勢いのまま共同通信社杯でも準Vの好成績を果たすなど、さらにまた一つパワーアップしているように映る。初めてのグランプリに向けて今の良い流れを引き続きキープしていきたい。
必殺仕事人・南修二は共同通信社杯で悲願のビッグレース初制覇を果たし7位に浮上。賞金額は9600万円に達し、例年のボーダーを考えるとグランプリはほぼ決定的と言えるだろう。ヨコの強さはもちろんのこと、前走の青森記念の準決勝で単騎捲りを炸裂させるなど近況はタテ脚のキレも凄まじく、まだまだ勢いが衰えることはなさそうだ。引き続きタテ・ヨコ共にフル稼働の南らしい走りに期待だ。
10位浅井康太も勢い十分だ。共同通信社杯の予選を腰痛で欠場し、年末に向けてかなり厳しい戦いとなることが予想されたが復帰初戦の小倉競輪でいきなり優出、前走の地元・松阪記念でも二次予選、準決勝と連勝で優出を果たすなど全く怪我の影響を感じさせない内容だ。その松阪記念で賞金争いのライバルである新山に優勝を許してしまったことで約700万円の差をつけられているが、GI優勝ならもちろんのこと、決勝2〜3着でも十分に逆転可能な差だ。2018年以来のグランプリ出場に向けてこの大チャンスを逃すわけにはいかない。
12位松井宏佑、14位松谷秀幸も地元平塚の大舞台を目指す。松井は夏場にやや成績を落としてしまったが共同通信社杯では準決勝でわずかに届かずの4着、次走の玉野競輪では3日間連に絡む活躍を果たすなど、終盤の勝負所に向けてギアを上げてきた。ただ反対に松谷は前走の二次予選で落車事故に巻き込まれ、その後の佐世保競輪、松阪記念を欠場するなどかなり苦しそうだ。それでもプロ野球選手時代も含め、これまでか数々の大怪我を乗り越えてきた松谷ならこの苦境も乗り越えてくれるだろう。
最後に取り上げたいのが17位松本貴治だ。前半戦はダービー、宮記念で準決勝敗退とあと一歩足りないレースが続いたが、オールスターで優出を果たすとそこから走りのリズムが良くなってきた。前々走の大宮競輪では松本と同じくヨコの能力に長けた森田優弥との位置争いを制して準V、前走の松阪記念二次予選では前を託した取鳥雄吾が不発に終わるも自力で前に迫り2着とタテの鋭さも披露。四国を共に引っ張る犬伏も上昇ムードで大きな相乗効果が期待できそうだ。2人で力を合わせて2005年小倉竜二以来となる四国勢のグランプリ出場を目指す。
グランプリまでGIも残すところあと2つ。上位勢が順当に人気に応えるのか、それとも賞金圏外の“大穴”がまさかの一撃をお見舞いするのか、片時も目が離せない一戦となりそうだ。