2021/10/12(火) 19:00 0 7
東京スポーツの前田睦生記者がレースの中から”思わず唸った”選手をピックアップする「今週の競輪好プレー」。今回は湘南ダービーから思わずうっとりする好プレーを紹介。 前田記者直筆解説と一緒にぜひご覧ください。
「じっくりとレース後に話を聞きたい」と思うレースだった。
10月4日、湘南ダービー最終日の特別優秀10R。「ああ、これか…」。そんな走りをしたのは大塚健一郎(43歳・大分=82期)。まずは鈴木庸之(35歳・新潟=92期)のコメントから。このレースで1着を取り、好プレーを見せた。
「緊張というよりワクワクしていた。飛び付くレースはしているけど、ジカ競りは初めてだったんで」。
小林泰正(26歳・群馬=113期)の後ろで、大塚と初手から競りになった。
小林が赤板で抑え先頭に。打鐘前の2角でペースが下がり、内に大塚、外に鈴木となった。基本的に競りは内が有利といわれる。しかし大塚は、下げる。外から追い上げる。「内からオレに勝っても納得しないんでしょうね。競りに行く時は外からって、昔のマーク屋ですよね」。鈴木はしみじみと振り返った。
勝つことが“すべて”ではない競輪がある。邪道な走りで勝ちを得ても評価されないことがある。スピード化した形態の中、あまりしっかりとした競りを見ることがなくなったが、大塚はこだわった。「自分のエゴに付き合ってもらい、西川(親幸、56歳・熊本=57期)さんには申し訳なかった」。これが大塚の弁だが、競輪に対する思いがストレートに伝わってくるものだった。
競り勝った鈴木は「オレからあんまり売れてなかったんでリスクも負って」と菅田壱道(35歳・宮城=91期)のまくりを止めてから差し切り1着。競輪の深いところで走っているな…と思った。鈴木の競輪に対する態度と走りに★3つ。大塚の分、また小林の「後ろが競りになっている以上、先行で」と形を作った姿、他の選手のせめぎ合いも見事な、すべてを合わせ実質★5つのレースだった。
すごいで賞=★★★☆☆(星3つ)