アプリ限定 2025/04/15(火) 12:00 0 12
4月29〜5月4日に名古屋競輪場で開催される「日本選手権競輪(GI)」。3月初旬に出場選手が発表された。
競輪ファンには“ダービー”の通称で呼ばれる日本選手権は、今年で79回目を迎える。GIの中でも歴史が深く、格式高い大会だ。優勝賞金は8700万円とGIのうち最も高額で、優勝者は「ダービー王」の称号を得る。
この大会のひとつの特徴として、出場選手数が多いことが挙げられる。ほかのGIが108名であるのに対し、ダービーは総勢162名だ。では、どのような選手が出場できるのだろうか。
【日本選手権競輪 選考条件】※開催時S級在籍
(1) S級S班在籍者
(2) 日本選手権競輪で3回以上優勝した者(開催時S級1班在籍者)
(3) パリ五輪自転車競技トラック種目代表選手
(4) 選考期間において4か月以上JCFトラック種目強化指定(A)に所属した者(開催時S級1班在籍者)
(5)選考用賞金獲得額上位者(同額の場合は選考期間における平均競走得点上位者)
※選考期間は2024年2月〜2025年1月の12か月
選考の中で大きい要素であるのは(5)の「獲得賞金」だ。特別競輪ではそれぞれ特徴的な選考方法が定められているため、トップクラスの選手が選考漏れするなどのハプニングが起きているが、ダービーでは獲得賞金が選考基準となっているためよほどのことが無い限り順当に賞金を稼いでいるトップの選手の選考漏れはない。
一方で出場枠が多いことから、ビッグレース常連ではない選手も出走回数を増やして賞金が積めればチャンスが巡ってくる。
日本選手権の優勝賞金は8700万円とGIの中でも最高額、決勝2着でも4251万円と賞金争いにおいて非常に重要なレースだ。
直近5開催(2020年は新型コロナウイルスの影響により中止)でもダービーで2着となった選手はすべてグランプリに出場しており、特に昨年の岩本俊介はダービー以外のビッグレースで一度も決勝に進出していないのにも関わらずグランプリへの出場を果たした。それだけダービーの賞金はグランプリ争いに大きな影響を与えている。
以下、直近5開催のダービーで準優勝となった選手の最終的な賞金順位・年間獲得賞金の一覧を表にまとめた。
年 | 準優勝選手 | 賞金順位 | 年間獲得賞金 |
---|---|---|---|
2019年 | 清水裕友 | 4位 | 1億327万4000円 |
2021年 | 郡司浩平 | 3位 | 1億2952万9200円 |
2022年 | 佐藤慎太郎 | 5位 | 1億1224万7200円 |
2023年 | 清水裕友 | 7位 | 9896万1400円 |
2024年 | 岩本俊介 | 9位 | 8893万2274円 |
上記の表のなかでその年のGIを獲っているのは郡司浩平(全日本選抜)のみ。その他の4名はダービー準Vによる高額賞金が賞金ランキング上位キープに寄与したといえそうだ。
また、逆にダービー準Vにもかかわらずグランプリ出場が叶わなかった例で最も最近なのが2016年の吉田敏洋。その年、吉田は賞金9位とグランプリ圏内に入っていた。しかしリオ五輪出場で出走本数が少なく、賞金ランク外だった渡邉一成が全日本選抜競輪(GI)で優勝していたことによりグランプリ出場は叶わなかった。
さて、賞金重視の選考条件で、各地区の戦力に偏りは出ないのだろうか? 今年開催されたビッグレースと比較して、以下の表にまとめてみた。なお出場選手数が異なるため、人数ではなく割合で記載する。
地区 | 日本選手権 | ウィナーズ | 全日本選抜 |
---|---|---|---|
北日本 | 14.8% | 18.5% | 13.9% |
関東 | 14.2% | 19.4% | 18.5% |
南関東 | 13.0% | 11.1% | 12.0% |
中部 | 11.1% | 7.4% | 7.4% |
近畿 | 13.6% | 12.0% | 13.0% |
中国 | 9.9% | 7.4% | 9.3% |
四国 | 8.6% | 9.3% | 8.3% |
九州 | 14.8% | 14.8% | 17.6% |
※4月9日時点の出場予定選手を集計
※全日本、ウィナーズの平均と比較して青字は3%以上増、赤字は3%以上減
関東勢は3%減とかなり戦力が減ってしまったように映るが人数自体はウィナーズカップの21人と比べて今回は2人増の23人。全体の出場数が増えたことで相対的にパーセンテージが減っているだけでほぼ変わらない戦力で臨めると言っていいだろう。
一方で中部はウィナーズカップの8人から大幅増の18人でダービーに挑む。前期S班の山口拳矢をはじめ皿屋豊、志田龍星らの強力メンバーがビッグ戦線に帰ってくるのは非常に大きい。全体的に苦戦傾向にある中部地区だがこのチャンスをモノにできるか。
各地区の出場数を確認したところで、その中でタイトルを狙える選手はどれだけいるのか気になる方もいるだろう。今回は直近1年のGI(24年日本選手権競輪〜25年全日本選抜競輪)で決勝に上がった選手を地区ごとにを挙げてみた。
地区 | 選手名 |
---|---|
北日本 | 新山響平、菅田壱道、佐藤慎太郎 守澤太志、渡部幸訓 |
関東 | 平原康多、眞杉匠、吉田拓矢 佐々木悠葵、小林泰正 武藤龍生、諸橋愛 |
南関東 | 郡司浩平、岩本俊介、深谷知広 松谷秀幸、小原太樹 松井宏佑、和田真久留 |
中部 | 浅井康太、山口拳矢 |
近畿 | 古性優作、脇本雄太、寺崎浩平 窓場千加頼、南修二、三谷将太 村田雅一、村上博幸 |
中国 | 清水裕友、松浦悠士 河端朋之、桑原大志 |
四国 | 犬伏湧也 |
九州 | 荒井崇博 |
最も多いのは近畿勢の8名、今年の全日本選抜で6人が決勝に進出したのは記憶に新しいところ。それに続くのが昨年のダービー王・平原康多擁する関東勢、そして郡司浩平、岩本俊介ら強力メンバー多数の南関東勢が7名で続く。
四国・九州勢は1名のみと苦しい戦いを強いられているが、四国勢は松本貴治や石原颯、九州勢は伊藤颯馬に山崎賢人などポテンシャル秘める選手は揃っており、今後の活躍に期待だ。
今回、競輪ダービーの出場正選手162名の平均競走得点は108.56(高知記念終了時点)。最も高いのが寺崎浩平の118.86で、最も低いのは小堺浩二の98.61だ。9日時点で100点未満の選手は、月森亮輔と小堺浩二、渡辺十夢の3名だ。
月森は直近はやや成績を落としているが、選考期間中には松戸記念で準優勝などの成績を残している。24年の競輪祭にも出場しており、最終日の負け戦では捲り迫って2着に食い込むなどビッグレースでも戦える自力脚を持っているため点数が低くても侮れない存在だ。
渡辺も選考期間中の24年3月には2場所連続での優勝、一時は100点台後半の点数を持っていた実力者。近畿地区は強力な自力選手も多く、前の選手の頑張り次第で着に絡んでくる可能性は大いにある。
前述のとおり出場選手数が最も多く、6日制(4走)と長丁場で行われる競輪ダービー。勝ち上がりが厳しいのも特徴のひとつだ。
一次予選の勝ち上がりは3着権利、二次予選は2着権利で3着は泣き別れ(4名が準決勝進出、3名は特選1回り)となる。序盤で敗退すると3走で帰郷となってしまうため、初日からいつも以上に熱いレースが予想される。
29日から162人の猛者が高額賞金、そして「ダービー王」の称号を懸けて激しい争いを繰り広げる。連覇か、返り咲きか、それとも新・ダービー王の誕生か、選手が魂を削って創り出すドラマは一瞬たりとも見逃せない。