2024/11/20(水) 16:00 0 0
東京スポーツの前田睦生記者がレースの中から”思わず唸った”選手をピックアップする「今週の競輪好プレー」。今週は40歳になった男が見せた競輪祭で見せたカッコよすぎる走りをお届けします。前田記者直筆解説と一緒にぜひご覧ください。
小倉競輪場の大阪・関西万博協賛「第66回競輪祭(GI)」の初日、11月19日に武骨な男が、華麗な一撃を放った。岩本俊介(40歳・千葉=94期)は5月いわき平ダービーの準優勝で、初のグランプリ出場にボーダーの位置にいる状況だった。
「こういう状況にいられるだけでも」
前検日にも落ち着いていたもので、慌てず騒がずの平常心。それでいて、初日の一次予選1・10Rでは攻めた。同期の脇本雄太(35歳・福井=94期)がいるメンバーだ。脇本はランキングで岩本の上にいる。慎重にもなりたくなるところ…しかし、だった。
初手で和田健太郎(43歳・千葉=87期)が前から2番目の位置を確保していた。「和田さんがいい位置を取ってくれたので。後は、詰まったら行こう、と」。3番手にいて、先頭の酒井雄多(28歳・福島=109期)が踏んでいく。そこを、打鐘4角から、仕掛けた。
和田は「内を締めないといけないのもあって。でも不意を突かれた」と連結を外したものの、岩本はそのまま押し切って1着。「へっぽこなレースをするかと思ったら!」は最大の賛辞だった。この状況で、あの走り。同じ選手として、容易ではないことを多くの選手たちが感じていた。
直後の11Rを控えていた同県の山賀雅仁(42歳・千葉=87期)も胸を打たれていた。山賀も3着にしぶとく入る好走を見せたが「ムカつくけど岩本はカッコ良かった!カッコいいと思ってしまった自分にいらつく!」と相好を崩していた。
まだ戦いの途上。★は4つ。94期としてのデビューから脇本以上に期待を集めていた。4月に40歳になった男がようやく5月ダービーでGI初の決勝へ。そして準優勝。悔しい思いは数えきれない。そんな男が、悔しさばかりで築き上げられた肉体と度胸で見せた好プレーだった。
今はまだ開催中か。その先は、静かに見守ろう。
すごいで賞=★★★★☆(星4つ)