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脳裏に焼き付くほどの声援を浴びて…山原さくらが走り続ける理由ーnetkeirin特別インタビューvol.2

2021/08/06(金) 12:00 0 9

ガールズケイリン初期からトップ選手として活躍してきた山原さくらさん(104期・高知)。2019年11月、卵巣嚢腫茎捻転の緊急手術を行い、しばらくの間休場を余儀なくされました。2020年5月に復帰し、少しずつ調子を取り戻してきた彼女が感じてきた思いを伝えるインタビューの後編です。(取材・構成=netkeirin伊藤千裕)

撮影:島尻譲

◆期待に応えたいのに…気持ちと体が嚙み合わない厳しさ

ーー2019年の競輪祭直前、発病する前の山原さんはどんなビジョンを描いていたのでしょうか。

 2020年に向けて頑張ろうと意気込んでいたところでした。

 2018年に練習をすごく頑張って、2019年はさらに練習を増やしてガールズグランプリを狙いたいと思っていたんです。でも腰の調子が悪くなり、やっとよくなってきたタイミングで病気になってしまいました。

ーー手術直後の心境はどうでしたか?

 両親は辞めてもいいと言ってくれたんですけど、私は「まあ戻れるかな?」と、安易な気持ちでいました。落車で肋骨を折ったときと同じようなものかなと思っていて。

 手術前の痛みは人生で体験したことがないぐらいのもので、もちろん手術後も痛かったんですけど、退院して家に帰るときには「なんとかなるかな〜」って考えてました(笑)。

 医師から卵巣嚢腫茎捻転という病気について詳しく聞いたときは不安になりましたが、死ぬ病気じゃないと知って、よかったって思いましたよ。

ーー病気を悲観的に捉えなかったんですね。手術後から復帰前と、復帰後ではどちらがつらかったですか?

 復帰後の方がいろいろつらかったですね。メンタル的に。

 2020年5月に復帰した時は、「年内に優勝できたらいいな」ぐらいの気持ちでいました。でも、思ったより早く優勝できて。それで安心してしまったところがあったんでしょうね。

 調子がよくなって練習を増やすとお腹の調子が悪くなって、思うように体が動かない。車券を買っていただいてる方の期待に応えられず、練習もできず、自分が何のために走っているのかわからなくなってしまいました。

ーー想定していたより早く調子を取り戻せたことで、メンタルを乱されてしまったのですね。

 実は復帰戦、一番人気だったんです。「こんなに期待してもらえてるんだ!」と嬉しい反面、頑張らなきゃというプレッシャーはありましたね。早くみんなの期待に応えなきゃ、調子を戻さなきゃ、と。

 復帰してしばらくは、勝ちにこだわらずレースを楽しもうと思わなければ、苦しくなってしまうと覚悟していました。でも、みなさんの期待があったり、調子がよくなったりすることで「もっと勝ちたい! 思いに応えたい!」という欲が湧いてきて。その気持ちに、体が追いつかなかった。

 昨年、競輪祭が決まった頃が一番つらかったかもしれません。「今の自分の走りで出てもいいの?」と思ってしまいました。心身共に厳しくても毎日練習しなければならないし、レースも出走しなければならない…1日1日がしんどかったです。

 そんな状況でも、欠場せずに走り続けたのは結果的に良かったと思っています。もし休んでいたら戻れなかったんじゃないかなと思うぐらい、気持ちが落ち込んでいたので…。

撮影:島尻譲

ーー様々な苦悩があったなか、山原さんが諦めずに一線に戻ってこられたのはどうしてですか?

 家族の支え、先輩方のあたたかいアドバイス、そして応援してくれる方の存在があったからです。

 復帰後に初優勝した弥彦競輪場で、今でも脳裏に焼き付いているぐらいたくさんの声援をいただいたんです。レースが終わってバンクを周回している間、ファンの方々がずっと声援を送ってくださって。涙が止まらなくなるほど感動しました。

「このまま誰にも見てもらえずに終わっていくのかな…」と怖い思いが浮かんだり、消えてなくなりたいって思うぐらい折れかけていました。でも、調子に関わらずずっと応援してくれる人、自分のことを見ていてくれる人がいるんだと気づかされて。その人たちのためにも頑張らなきゃ、と。

 みんなが私に手を差し伸べて、引きずり戻してくれたんです。

ーー素敵な思い出ですね。病気を乗り越えて、自分の中で変わったことはありましたか?

 新しいトレーニングや食事・生活習慣を取り入れてみようという考えには、病気を経験していなかったら行きついていなかったと思います。

 本当に苦しかったですけど、考え方が変わって、これまでのことをポジティブに捉えられるようになったかもしれません。

◆オールスター競輪について

ーー競輪選手にとって、ガールズケイリン総選挙はどういう存在ですか?

 他のコレクションや大きいレースは自分の成績で出場権を獲得しなければいけませんが、ガールズケイリン総選挙はファンの方の1票で決まります。今回も、みなさんの投票のお陰でアルテミス賞を走らせてもらえるので…感謝しかないです。

ーー今回は勝ち上がりでないレースですが、いつもより緊張したりしますか?

 緊張はするけれど、わたしは一発レース、比較的好きですね。体のコンディションを整えて競輪場に入りやすいので!

 それに、こういった大きいレースはファンの方の声援がすごいんです。普通の開催では味わえない熱狂感に、またこの場に戻ってきたいと思わせられます。

ーー過去のドリームレースやアルテミス賞の思い出を教えてください。

 いい結果を残せなかったので、苦い思い出ばかりです…。いわき平との相性があまりよくないのかなと思っていたのですが、今年やっと優勝して苦手意識を払しょくできたかな? と思っています。

 他のコレクションと違って投票で選んでいただいて出走するので、結果を残してファンの方に恩返しできる一番の機会だと思っています。気合が入りすぎて空回りしてしまうので、落ち着いて走りたいです!

撮影:島尻譲

ーー最後に、応援してくださっているファンのみなさんにメッセージをお願いします。

 いつも変わらず応援してくださり、本当に励みになっています!

 私が病気から復帰した姿を見て元気をもらえたとか、自分も頑張れると仰ってくださる方がいて、笑顔でレースを走り続けることで喜んでくれる人がいるんだと嬉しくなりました。

 これらも笑顔でみんなの前に立てるように、恩返しできるように頑張ります!

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