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満員の熊本競輪場 熱気帯びる8年ぶりの本場開催に見た「ファンに愛される公営競技の姿」

2024/08/27(火) 16:30 0 32

7月20日、平成28年熊本地震により被災し本場開催を中止していた熊本競輪場がついに再開した。実に8年ぶりとなる本場開催には、この日を待ちわびた地元ファンが詰めかけていた。編集部は再開初日の熊本競輪場を取材した。(取材・構成=netkeirin編集部)

『Re:スタート』待ちわびたファンの姿

 朝9時。すでに熊本競輪場の正門前には、今か今かと開門の時を待つ競輪ファンたちの姿があった。

 2016年4月に街を襲った熊本地震。熊本競輪場はバンクがひび割れ、施設の天井や壁が崩落するなどの被害を受けた。競馬などほかの公営競技がないことなどからもともと“競輪熱”が高い地域であったが、この地震で日常は奪われた。

震災でヒビが入った走路

熊本競輪 Re:スタート』を待ちわびたファンは朝早くから競輪場に集まり、再開セレモニーでは市長らの挨拶に「再開ありがとう!」という声も飛び交った。この日は最高気温35度の猛暑日だったにも関わらず、メインレースに近づくに連れて観衆は増え続け、入場者数は約3,000名にのぼったという。

 入場口ではトップ戦線で活躍する伊藤旭や、ガールズ西島叶子ら現役選手がうちわを配り出迎えた。ファンに「頑張れよ!」と声をかけられ満面の笑顔で応える姿が印象的で、選手もファンも同じ思いでこの日を迎えたことが伝わってきた。

再建されたメインスタンド

 地震で窓ガラスが割れ、天井が崩れてしまったバックスタンドは取り壊され、メインスタンドは柱等の躯体のみを残し大規模改修を行い、管理棟は被災前のものを残す形で再建された。地震でひび割れた走路も、美しい姿でお目見えした。

 メインスタンド1階と2階は無料エリアで、投票所やトイレ、一休みできるベンチなどがある。ピカピカの新しいモニターで各場のレースが放映され、地元選手を紹介するパネルや競技用自転車の展示もされていた。猛暑となったこの日は冷房の効いた屋内も、涼を求める多くの人であふれていた。

 メインスタンド2階とつながる無料観覧席の前方1列はバンクにほど近く、走行音や選手の息づかいまで聞こえてきそうだ。ゆったりした間隔で並んだ椅子には背もたれがあり、リラックスして観戦できるのが嬉しい。

入場料は無料。屋外の観覧席は無料エリアだ

 後方は通路を挟み4段の観客席がつらなる。最後列は立ち見が可能なほか、観客席の両サイドや1階にも手すりのついた観覧エリアがあり、さまざまな角度からレースを楽しめるようになっている。

 メインスタンド3階の特別観覧席は入場料1,000円(本場開催時。場外は500円)で利用可能。前面ガラス張りで眺めがよく、400バンクに生まれ変わった美しい走路を一望できる。

メインスタンド3階・特別観覧席からの眺め

 かつての500バンクの“滑走路”とゴール位置を変えず、長い直線を生かす形で再建されたバンク。選手たちからは口々に「カントがきつい」と聞かれ、再開シリーズ2日目には8レースで万車券が飛び出した。レース展開を余すことなく見られる特観席はバンク特徴を把握し、予想に生かすのにもぴったりだ。  

“ほっ”と温まる競輪場グルメも

 1コーナー近くの離れには『輪音食堂』がこの日めでたくオープンした。かわいらしいオレンジ色ののれんに「よってって」、扉には熊本弁で「食べていかんね」と気軽に入れる心遣いが。

 出迎えてくれたのは明るいスタッフさんたち。店内には次から次へとお客さんが訪れ、大盛況の再開シリーズに瞳を輝かせていた。カウンターにはテイクアウトのお弁当やからあげ串が並び、どれもおいしそう!

 編集部は「チャンポン(800円)」と「肉ごぼうごはん(500円)」を注文。チャンポンは太麺にうまみが詰まったスープが美味! たっぷりの野菜に、大ぶりのちくわが入り食感も楽しい。肉ごぼうごはんは甘めな味付けでほっとする味。どちらもおいしくいただいた。

多彩なメニューの「輪音食堂」。村上義弘さんからお祝いのお花が!

 焼き魚やアジフライ、とんかつなど定食類も充実していて、競輪場メニューの定番「ホルモン煮込み(500円)」も人気だそう! アルコール類の販売もあるので、飲む・打つを存分に楽しめる。

大盛況の再開シリーズを終えて

 熊本の競輪ファンの“熱”と“愛”を随所で感じられた今回の熊本競輪再開シリーズ。再開までの道のりは一筋縄ではいかず一時は廃止案も含め検討されたが、無事ファンのもとに「競輪のある生活」が戻ってきたことを心から喜ばしく思った。

 大盛況の開催を終え、地元代表として開幕シリーズに参加した中川誠一郎は「あの雰囲気の中で走れて、これまで踏ん張ってきて本当に良かった」と万感の思いを語った。

 令和5年度から競輪場再開を担った西真一郎所長は「ファンと選手との距離が近く、スタンドからの熱い声援が熊本競輪場の魅力のひとつであることを今回の再開で改めて実感できた。これからも、たくさんの人が訪れ、愛される施設を目指していきたい」と率直な心境を述べた。

 いつまでもこの熱気とともに、愛される施設でーー。満員の熊本競輪場を前に、公営競技はファンとともにあることを身に染みて感じた。

 今後も9月2日から男女の上位選手が集う本場FI開催が、10月には熊本記念が控えている。競輪を愛する皆さんにはぜひ一度、熊本競輪場に足を運んでみてほしい。


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