ーー『リンカイ！』の監修として携わってきた高木さんが声優としても出演することになったそうですね。

川村：実はこのアニメの仕事が決まって、競輪を勉強し始めた時期に観たのが、真備さんが優勝した2021年のガールズグランプリだったんです！ ついこの間までトップ選手だった方と共演者になるなんてめちゃくちゃ感激です。

高木：これまでも川村さんと葵さんとは、競輪場のイベントで共演する機会があったのですが、今回逆に私が2人のホーム(アフレコの収録現場)に行くことになったので、不思議な感じでした。

葵：私は真備さんの収録に立ち会わせてもらいました！ 収録が終わってからタクシーで移動しているとき「いま隣に真備さんがいる！」って実感できて嬉しかった〜。

高木：葵さんがいてくれて、すごく心強かったです！ 本番前はドキドキと嬉しさでついメイクさんに色々と喋っちゃいました(笑)。

●ワットバイクに乗ったお父さんの動画を共有

ーー葵さんのお父さんは、今年1月に競輪選手を引退した多田司さんなんですね。

葵：そうなんです！

川村：アフレコの序盤で「葵ちゃんのお父さんって60歳で現役選手(当時)なんでしょ、やばすぎじゃない!?」と伝えたんです。そしたら葵ちゃんは「そうかも〜」みたいなふわっとした反応で(笑)。葵ちゃんからしたらお父さんは身近な存在すぎて実感が薄いかもしれないけど、60歳まで現役スポーツ選手って、本当にすごいことですよね！

葵：ありがとう〜〜お父さん泣いちゃうかも(笑)。

川村：しかもお父さん、いろいろとアドバイスくれるんですよ！

葵：バンクの中でどれほど周りの音が聞こえているのか、レース中に相手の気配をどのように感じているのか。感情的なセリフの意図は汲み取れるんですけど、どうしても感覚的な部分は選手じゃないとわからないので、父にアドバイスをもらっていました。

川村：『リンカイ！』声優メンバーのLINEグループがあるんですけど、葵ちゃんがお父さんのワットバイクを漕いでいる動画を共有してくれて。こうやって息継ぎするんだ〜って参考になりましたね。

葵：「お父さん息ハァハァしているけど見て！」ってみんなに送りました(笑)。他にも、レース中に競輪場のモニターを見ると、選手同士の位置を把握できると教えてもらったり。

川村：真備さんも、レース中にモニターを見たりしていたんですか？

高木：私もやったことあります！ ただ、それで苦い経験をしたことがあって…。モニターを見て、「まだ大丈夫だな〜」と思っていたら抜かされてしまったんです。競輪場によってはモニターに遅延があるみたいで…それからは、あえて見ないように注意していました。

川村：競輪の世界は、1秒の遅延も命とりですもんね！

ーー最後に、みなさんが思う『リンカイ！』の魅力を教えてください。

川村：それまで競輪って男性が激しくやりあう雄々しいイメージが強かったんですけど、真備さんのレースを観たり、『リンカイ！』の脚本を読んでいくうちに、イメージがガラッと変わったんです。

　競輪界にも女性選手がたくさんいらっしゃって、しかも年齢も経歴も違う方が集まっている。例え、同期でも年齢が離れているところなど、多種多様な方が切磋琢磨しているのは声優業界とも共通している。『リンカイ！』を通して、女子選手同士の独特な関係が知れて、解像度がグッと高まりました。

高木：ガールズケイリンはラインがないので、個人戦な側面もあれば、他の選手に憧れやライバル心を感じたりと、男性選手と気持ちの持ちようが違うんです。『リンカイ！』では女性選手の機微がうまく描かれていて、現役時代を思い返しました。

　これまでは男性主体な競輪の作品ばかりだったので、『リンカイ！』ができたことでガールズケイリンの魅力が伝えやすくなりました！ アニメを観る中で応援したい選手が出てきて、ガールズケイリンにハマる人が増えてくれたらとても嬉しいです！

葵：私は父親が競輪選手だったので、競輪が日常に溶け込んでいたんです。家にウエイトトレーニングの機材があるのも、平日に父がいるのも当たり前だったので、ある程度は前知識を持っているつもりでした。でも『リンカイ！』を通して、より理解が深まったように思います。

　それまでも父が落車したレースは、両親が遠ざけていたのかちゃんと見たことがなく、この仕事が決まってから初めて見返したんです。『リンカイ！』を通じて改めて競輪に触れて、「お父さんはこんな頑張っていたんだ」と新鮮な気持ちになれました。アニメには父からのアドバイスが反映されているところも多いので、ぜひ競輪ファンの方にも楽しんでもらえたら嬉しいです！

　アニメ『リンカイ！』は、TOKYO MX、BSフジで4月9日(火)から放送開始する。また、U-NEXT・アニメ放題での配信も決定している。