2023/12/13(水) 19:15 0 13
「ボク、死にかけたんですよ」
衝撃のひと言から藤木裕との会話が始まった。情けない話なのだが“えっ”という言葉にならない声が出て、「どうしたの?」と聞き返すことが出来ず立ち尽くしてしまった。
「やっと病院の先生から練習OKのお許しが出て、ちょっとやってきましたよ」
ちょっと待って、ちょっと待って。あれっ、藤木裕って大ケガなんかしていたっけ…。そんな表情をしていたのだろう。丁寧に状況を教えてくれた。
「5月31日の伊東で落車をして、大ケガをしたんです。クモ膜下出血、脳挫傷、肺挫傷。もう少し落ち方がズレていたら…って言われました。昏睡状態にもなっていたらしい。でもケガを理由に辞めたくなかった。ボクは競輪選手のまま辞めたかったんです。だからすぐに復帰した。家族を養わないといけないし。やっと今月から、徐々に練習が出来るようになった。といってもハードな練習ではないですよ。それまでほとんど(自転車に)乗らなかったので、乗る事を前提にしたトレーニングを、村上義弘さんと練習メニューを考えて。トレーニングの大切さっていうのも学びましたね」
5月31日に落車して、6月7日が前検日の向日町記念に出場している。2日目は3着で車券にも絡んだ。3場所目の名古屋では2日目に1着を取り、ここまで3勝を挙げている。
「これまではみんなの前に出られる事が精いっぱいだった。(村上)博幸さんからも冗談交じりで「頑張ってこい」って言ってもらったし。今回から“第2章”じゃないですけど、とにかく競輪に失礼のないように、自分は一生懸命頑張るだけ。初日は稲垣(裕之)さんにくらいついていきたい」
これが藤木裕の生きざまなのだろう。すぐに激変というのは難しいだろうが、どんな状況であってもひたむきに、もがき、あがき続ける。(netkeirin特派員)