2023/08/12(土) 09:00 0 8
東京スポーツの前田睦生記者がレースの中から”思わず唸った”選手をピックアップする「今週の競輪好プレー」。今週の好プレーはマーク屋河野通孝の見事なブロックの好プレーをお届けします。前田記者直筆解説と一緒にぜひご覧ください。
青森競輪場の夜に、1人のマーク屋が揺れた。ナイターFIの最終日は8月9日のことだ。
特選8Rに込められたのは強烈なブロックの一撃にとどまらなかった。主役は河野通孝(40歳・茨城=88期)で、石原軍団のオーディションには落ちたもののふんわり系2枚目俳優として活躍を目指し再起する俳優のような笑顔を持つ男だ。
この男、実はヤバイ。
デビューからは自力主戦でのし上がると、マーク屋に転じ堅実に頑張っている。歴史ある茨城マーク界の正統派で、先日は福井記念(不死鳥杯)の決勝で脇本雄太(34歳・福井=94期)のヨコに並ぶという意地を見せた。これは勇気のいることだ。
その走りが、青森3日間につながっていたのが好プレーを支えている。8Rで任せたのは雨谷一樹(33歳・栃木=96期)で、相手はニューカマー・大川剛(24歳・青森=121期)を先頭に北日本が4人並ぶという構成だった。
前受けの雨谷の戦術は飛び付きに思われたが、いったん突っ張るとそのまま駆けてしまった。これは明らかに「番手が河野通孝だったから」に尽きる。新人選手の隙を突いて、ラインの戦いを繰り出した。
応えるように河野は最終3角で大川のまくりをものの見事にブロック。勢いを完全に止める好プレーだった。もちろんこのブロックが★3つの好プレーなのだが、この動きに至るまで、河野がやってきたことが結実された「ただ1回のブロックではなく、周りに見えないものが集まった無想転生」だった。すべてを合わせて★4つとしよう。
河野とは「常に、マークとは、について話しています」という間柄なのが輪界屈指のマーカー・芦澤大輔(41歳・茨城=90期)で、この男をして、こう証言させる。
「ああ見えて河野は茨城で一番喧嘩っ早い。ヤバいです。ギャハハ!」
すごいで賞=★★★★☆(星4つ)