2021/01/03 (日) 12:00 6
1月4〜7日に開催される2021年最初のグレードレース・立川記念。鳳凰賞典レースという冠で、競輪界の年始伝統のシリーズだ。
一昨年の2019年は単騎の戦いで3番手確保からタテ脚を伸ばして優勝。昨年の2020年は佐々木豪(109期=愛媛・24歳)の逃げに乗って連覇を飾った。ヒロト。清水裕友(105期=山口・26歳)。
ブルーハーツは心に実弾をぶち込んでくるストレートなパンクロック。俺は今、生きている、と訴えかけてくる。競輪は心をわしづかみにするハードストレートなギャンブル。強がりの裏に、寂しさがある。そんな時、ヒロトと一緒にいたいよね…。
清水、いや、ヒロトで通そう。ヒロトはコアな競輪ファンに支持される特徴がある。それは競輪のセオリーを見せてくれるから、また、薄汚れた辛子色のジャンパーが似合いそうなずんぐりむっくりとした昭和の男を感じさせてくれるから。いや、違う。
結果は脇本の優勝でヒロトは6着に終わった。だが、ファンはヒロトの次の走りを待った。早く次の曲を聞きたがった。
翌11月競輪祭決勝で3着に入り、静岡グランプリの切符を手にした。初出場のグランプリは、劣勢の6番車ひとり。赤板で単騎で動いて先頭に立った。ワッキーを先頭にした近畿4車が仕掛けてきて5番手。打鐘が鳴る。劣勢は、変わらない。
抗っても逆らえない壁はある。だが、そこに立ち向かう選手たちがいる。ファンは、ゴール、結果よりも、そこに立ち向かった選手に競輪を見る。最終バック前に踏み込んだヒロトは、2番手の後ろ辺りまで進む。アナログテレビのチャンネルを間違えた時の砂嵐のような大絶唱が場内を包んだ。
立川記念のS級S班は平原康多(87期=埼玉・38歳)、郡司浩平(99期=神奈川・30歳)とヒロトの3人。平原にとって1月はこの立川と地元の大宮記念のあっ旋が続くことが多く、グランプリから大宮までが平原の例年の年末年始となっている。郡司は…。
郡司は平塚グランプリのレース後、優勝した和田健太郎(87期=千葉・39歳)を称えつつ、もちろんのことだが、悔しさをにじませていた。勝ちにいって勝てなかった。何が自分に足りなかったかを考え、この立川記念から埋めにいく。
年始伝統の立川記念、鳳凰賞典レースは常に豪華メンバーだ。各地区を代表する選手が多く集結し、2021年を占うシリーズが繰り広げられる。だが、今年の主役はヒロト。激しいリフとシャウトで2021年の始まりを告げる。
ヒロト、今年も酔わせてくれ。ファンはお前の純度に、酔っている。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。