2025/12/13 (土) 12:00 15
2025年12月14日に「競輪記者座談会vol.4」が公開予定だが、私はそこで「AIコメント」が2年後に生まれると指摘している。細かくは14日を待ってほしいが、私はAIはすごいと思っている。人間は、人類は“勝てない”と思っている。
そもそもが古くからある「ロボット議論」。チェコのカレル・チャペック(1890-1938)が書いた「R.U.R」という戯曲からロボットという言葉が生まれたと言われており、この戯曲は今の時代に絶対に読んでほしいものだ。映画「2001年宇宙の旅」(米・スタンリー・キューブリック監督)のHALにしても、コンピュータと人類の在り方を予言する名作だ。
近年は将棋でのAIの活躍も目を引いている。人間が読む、読めるレベルの先を行き、それについて語る棋士たちの言葉も面白い。AIと人類が有機的に接合している世界があると思う。
競輪もAI予想が展開されている。だが、現状は複雑さ、基礎となる情報の揺れ(条件の多さや変動性)が影響し、確固たるものとはなっていないと感じている。
“勝てない”と思う。
競輪は記憶のスポーツと言われている。ここは車券推理に関する話。Aという選手が逃げるのかまくりに構えるのか、を推理する時に、まず原点として以前のレースがどうか、がある。とにかく前受けからすべて突っ張って逃げようとしている選手なら、逃げる、と推理することになる。
加えて、対戦メンバー。Aと同じくらい逃げようと思っているBという選手がいた時。現在の競輪のルールでは車番が大きく、そのレースで逃げる選手、逃げられる選手、を左右する。Aが1番車、Bが5番車でAがSの早い選手なら、Aが逃げる可能性が高い。
AとBが踏み合えば、別のラインがまくりやすくなる。こんな感じで日々のレースの推理を進めるわけだが、人間の記憶は怪しい。締め切り時間を前に、「あれっこの選手この前逃げてたっけ?」と考え、調べる時間がないと決定的な判断ができない。
AIの強みは電気系統が壊れない限り、情報が消去されず、かつ正確に記録している点にある。推理データとして信用に足ると思う。人間は“勝てない”。
しかし、だ。上記の点などで人間が“勝てない”という部分はあるものの、“そぐわない”があると思う。(現時点で。現時点で、を強調する意味は後述する)データに関してはAIが明らかに上位に立つものでも、走るのはデータではない。参考にはなるかもしれないが、戦っているのは人間。
例えば、3年前の○月○日にDとEはワンツーを決めている、その時が15回目の連係で、ワンツーは8回目だった、といったデータは調べることはできるが、人間とAIではAIの精度や速度が上。こうした情報を調べる、提供するプログラムがあれば、瞬間だ。
で、久しぶりに16回目の連係になる明日のレースでワンツーは?
こうしたデータをもとに推理することもあるだろう。でも…。競輪の記者には違う視点もある。競輪への向き合い方はひとつではない。『当てる事』が第一義の人もいれば、楽しみたい、応援したい、外れてもいいから突飛な車券を買って騒ぎたい、時には、外れたい、など。ファンが求めるもの…。
このレースでDとEの2人がワンツーを決める意義、を記者は考える。このレースが地元記念の準決だった場合、地元ではない開催のFⅠ最終日の一般戦だった場合。FⅠ最終日一般戦はシンプルに力関係で推理しがち。地元記念の準決で強敵が揃っていても、心理的なものや、ファンにその2人の姿を凝視してほしい、シリーズの盛り上がりを考えても…といって、筆致が強くなる。
当たる当たらないだけではなく、競輪を楽しむ道を提供するのが記者の仕事と思っている。ファンも千差万別。いろんなものを提供する意義は常に失われていないと思う。記者の仕事の必要性はあると思っている。(そして、現時点で、の話へ)。
AIはそれを凌駕できる。推理する情報が基礎としてあり、そこにファンに提供するパターンを増やし、例えば2030年のファンの80%の心理に強く訴えられるプログラムがあり「2030年太郎」というAI予想が人気になるかもしれない。ガールズケイリンでは「2035年花子」というシステムが爆発的な人気になるかもしれない。
AIがその時その時のファン心理も解析している時代が来る。今までは記者が肌感覚でやってきたことを、AIははるかに凌駕するだろう。と、予想や推理について、ファンと記者の関係で書いてきたが、14日の座談会vol.4では選手の「AIコメント」について踏み込んでいる。その話については、またそこで。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。
