閉じる
前田睦生の感情移入

【競輪新時代】必要なのは何か…もはやWi-Fiは血液

2025/11/26 (水) 12:00 41

ファンの熱気はすごかった

年々進化している

 阿部拓真(35歳・宮城=107期)の衝撃のGI初優勝という結末が待っていた「第67回競輪祭(GI)」(11月19〜24日)はまさに大盛り上がりだった。総売り上げが148億8072万9200円で、総入場者数が6万951人。昨年、一昨年と場内の盛り上がりを感じていたが、今年はさらにすごかった。

 年々の進化がある。競輪全体の売り上げの伸びと、新規ファンの増加。そして課題だった本場の入場者を増やし、ライブの競輪を楽しんでもらうことが明らかにうまくいっている。グレードレースを中心に、全国の競輪場が豪華なイベントを準備。「えっ、こんな人を呼べるの?」という大物が来てくれたり、施行者が「家族連れに来てほしいんですよ」と子ども向けの企画を用意したりして、『誰もが来やすい競輪場』が生まれている。

 競輪新時代、と言っていいと思う。昔の、殺伐とした空気、鉄火場と言われるような緊張感が好きな方もいるだろうが、令和の競輪場は明るく、誰もが親しめる場所。そこに、選手たちの汗と涙が、その戦いが、旋律としてファンの胸に溶け込んでいく。

阿部拓真の504番目

阿部拓真が改めて競輪を教えてくれた

 それにしても競輪のドラマは複雑だ。まさか…だった。GIの決勝で3連単504通りの504番目。そんなことが…。競輪の奥深さというか、単純に面白さを伝えてくれたと思う。多くのファンが、この伝説の一戦を記憶して、これからの競輪にまた打ち込んでほしい。

 躍起になって取り返す、ではなく、取り返すチャンスも競輪にはあるので、のびやかにしなやかに車券を楽しんでほしい。選手同様、夢がある。そんな夢を…。

 大事なことがある。

 競輪新時代。目の前の課題がある。競輪祭の最終日に4階コンコースを1周し、場内の様子を見て回った。いつもホーム側に多くファンが集まって、バック側は少ないものだが、そちらの券売機でも車券を買うには5分ほど並ぶ状況だった。うれしい限りが一番でも、おっと、これは手を打たないと、だった。買い漏れて好配当が手にできなかったでは、そのファンは浮かばれない…。

 今の成功を、先の成功につながないといけない。

もはやWi-Fiは血液

ファンが離れてしまわないように

 券売機の増設は、基本的に厳しいと思う。キッチンカーのような移動式のもので、臨時券売機を準備し、グレードレースを中心に、来場者が多くなりそうな開催を回っていく。これも困難を感じるが、本場で車券を買うのも体験として興奮するし、払い戻しが叶えば、“あの音”は心を蘇らせる。手を打つ段階に来ている。

 Wi-Fiは競輪場だけでなく、世の中にとっても血液といえるほどのものになっている。並ばずに買えるのは、大きな武器。今やスマホで車券を買えるようになっておくことが、新規ファンのリテラシー。その時に電波がつながらない…は避けないといけない。

 正直言って、私もこんな時代になるとは思ってもいなかった。通信に詳しいわけでもないので、多くのファンが集まることで「Wi-Fiがつながらない!」という事態があるということも分かっていなかった。

 ビッグレースでこうした話を聞くことが増え、今回の小倉のように、これだけの人が集まるのか…という時代になって。すごい6日間だったと喜ぶとともに、この先のために必要なことがあると痛感した。競輪新時代、ひたすら手を打つことでファンをつなぎ、さらに盛り上がる競輪界にしないといけない。

 モップスの曲で「永久運動」というものがある。「血は、止まれば死ぬ」という歌詞で、あやしげなシャウトが響く曲なのだが、競輪を永久運動にしていくためにも、いろんな手を打ってほしい。


X(旧 Twitter)でも競輪のこぼれ話をツイート中
▼前田睦生記者のXはこちら

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

バックナンバーを見る

質問募集

このコラムでは、ユーザーからの質問を募集しております。
あなたからコラムニストへの「ぜひ聞きたい!」という質問をお待ちしております。

前田睦生の感情移入

前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

閉じる

前田睦生コラム一覧

新着コラム

ニュース&コラムを探す

検索する
投票