2025/09/27 (土) 16:00 11
奈良競輪場で「開設75周年記念 平安賞in奈良(GIII)」が9月25〜28日に開催されている。向日町記念が奈良で行われているわけで、改修工事などがあるとこうした「代替開催」がある。記念だけでなく、びわこの後、岸和田に定着している「高松宮記念杯競輪(GI)」が和歌山で行われたり、また震災で開催できなかった熊本記念、FIを久留米で開いたり…と多くのケースがある。
岩本俊介(41歳・千葉=94期)は松戸で開催されたGIIIを5回優勝しているのだが、内訳は松戸記念2回とGIIIを1回、取手記念と千葉記念の代替開催を制している。なんとも珍しい感じであって、それでいて松戸との相性ってあるんだな…と実感する。
今回の平安賞は京都勢にとって、あまりにも特別なもの。窓場千加頼(34歳・京都=100期)が初日のレース後に話していて面白かったのが、「平安賞なんですけど、やっぱり控室が奈良なんで、なんか違いますね」と笑っていたことだ。空気感はやはりある。もちろん、そう笑いながら平安賞への責任の重みの変わらなさを強調していた。
GIやGIIは小倉の競輪祭や岸和田の高松宮記念杯といった定着しているものはあっても、なかなか地元で走る機会はない。記念は年に1回行われるので、多くの選手はそこでの活躍を胸に秘める。
FIやFIIでも当然、地元勢の意気込みは違う。日々の戦いに“地元”の意識が強く反映されるのが競輪の特徴でもある。
と、ある時…。多くのレースで番手勝負をしている選手がいた。番手勝負に行くということは、他のラインを分断する形になるため、嫌がられる、煙たがられる、もしくは仕返しもある、というリスクもある。
そんな選手に「地元にも行くんですか」といったことを聞いたことがあったが、その選手の回答は「俺には地元はないんで」だった。ちょっとしたヤサグレ感がカッコよかったものだが、色々と聞いているとその選手は中学校では生徒会長をしていたとのことで、人生複雑だな…と思ったものだ。
生まれてから転々としているケースもあるだろうが、多数の人は“地元”がある。先日、大阪の門真(かどま)という地域で酒を飲むのがプロだという話を聞いて、門真に向かった。門真を地元とする人たちに迎えてもらい、ディープな時間を過ごさせてもらった。
彼らの地元愛に美しさを感じたし、羨ましく思った。自分は鹿児島、小倉、熊本と長く九州にいたが、もう20年近く離れていて、地元でのんびりするということもない。故郷を離れて…。そんな時に、競輪で車券を買う時に、地元が同じということが後押しすることがある。
というよりは、競輪を覚えたてだとか、どうやって競輪を覚えれば…という時に「まず、出身が近い選手を応援する」というやり方を勧めたい。地元感をともにすることで、その選手の成長を応援し続けることも競輪の醍醐味なのだ。
門真で過ごした時間が、なんだかノスタルジックなコラムを書かせている。ぜひ、皆様におかれましても、一度、門真へ。門真へ、GO!
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。