アプリ限定 2025/06/29 (日) 12:00 11
『競輪選手になるために、そして夢を叶えるために』今年は第129回生として男子72名、第130回生として女子21名の候補生たちが日本競輪選手養成所に入所し、2026年のプロデビューを目指している。この時期、“未来の競輪スター候補”と題して毎年お届けしている本シリーズだが、今年は10名の注目候補生へインタビューを実施した。今回は129回生・近内三孝(こんない・みつのり)候補生を紹介する。(取材・netkeirin編集部)
高校から始めた重量挙げ(ウエイトリフティング)から未経験の競輪界へーー。
東京五輪で7位入賞を果たした近内三孝は、3年後のパリ五輪を目指すも出場を逃してしまう。重量挙げの選手寿命は一般的に30歳前後。28歳だった近内は先のキャリアを考え、その年に引退を決断。さらには選手寿命の長い競輪界への挑戦を志す。重量挙げ選手としての最後の大会ではなんと2つの日本記録を樹立、有終の美を飾った。そして4年ぶりの特別選抜試験合格者として、競輪養成所への入所を決めた。
ーー重量挙げの引退がよぎったのはいつ頃でしたか?
正直なところ東京五輪が終わった後から「いつ引退しようか」というのはずっと迷っていました。東京五輪はコロナウイルスの影響で2021年に終わったので、そこから次のパリまでは3年。だったらとりあえずやっちゃおうかなと思いました。そこまでオリンピックに思い入れがあるわけではなかったので「続けられるなら続けてみようかな」くらいの軽いノリでした。
ーー残念ながらパリ五輪出場は逃してしまい、2024年10月に最後の大会を迎えました。引退してから競輪養成所入所までは、どのような数ヶ月でしたか?
前職は大学のコーチのような仕事をしていたのですが、しばらくは業務とトレーニングを両立していました。「とりあえず足を鍛えとけばいいだろう」という気持ちで、スクワットなどをやっていました。そういった前職の関係もあって、本格的に自転車に乗り始めたのは1月からでした。
ーー数か月、自転車に乗ってみて、重量挙げと「似てる」と感じる要素はありますか?
ギアが重くなった時に、足のパワーが必要だというのは感じます。でも、重量挙げで必要とされていたような瞬発力を、自転車に乗っている時に発揮できてる感覚は現時点ではまだないです。その辺りはこれからですね。
ーー結構分析をされるタイプですか? ご自身の性格をどのように思われますか?
分析まではいかないんですが、練習は考えながらやるタイプかもしれません。練習って本当にキツいので…「このメニューをやれ」と言われ「はい、終わりました」というわけにはいかない。何も考えずにただこなすだけの練習は地獄なので…(笑)
ーー効率を考えながら練習されているんですね。近内候補生は素晴らしい成績を残されて引退されましたが、周囲の反応はどんな感じでしたか?
重量挙げの関係者からは「引退してほしくない」という声の方が多かったですね。10月の大会はそこそこいい記録を出せたので、「ここで引退するのは勿体無い」と言われました。
ーーご家族はどんな反応でしたか?
そうですね。家族は少し寂しい気持ちもあったみたいなんですけど、「もう決めたから」と言ったら、最後は背中を押してくれるような感じでした。
ーー重量挙げは個人の競技ですが、競輪にはライン戦があるので完全に個人戦というわけではないと思います。そのあたりの違いはどう思われますか?
まだタイムトライアルのような形式でしか自転車に乗っていないので、競輪がどんなものなのかというのを実感することができていないです。現段階では未知の部分が多いですね。
ーー現時点で明確に見えている課題はなんですか?
今回の記録会では、卒業のための課題として「1,000mTTを1′13′′00以内で走ること」を掲げていたんですが、無事クリアできました。順位も下から始まることは分かっていたので、ここからどこまで上がっていけるか。ペダリングと乗車姿勢がまだまだですし、どんな姿勢でもがいているかを客観的に把握することが現時点で重要だと思っています。
ーーまずは現状把握、ということですね。 目指したい選手像はありますか?
いろいろなレースを覚えて、自分でレースの展開を変えられるような選手になりたいです。
ーーまだ学びの途中にあるのですね。そういえばInstagramで近内候補生のものすごい筋肉を見てしまいました。養成所に入ってから、早速筋肉の形に変化ありましたか?
ありがとうございます(笑) 今は携帯も見れないので以前の体との比較ができないですが、見た目的には意外と変わっていない気がしています。でもやっぱり、足腰やお尻周りは大きくなった感じはあります。
ーー足腰とかは自転車で酷使しますからね…。あの筋肉を見てしまったからか、とてもストイックなイメージがあります。趣味やリフレッシュのためにしていることはありますか?
美味しいものを食べることが好きです。パンケーキとか甘いものも食べに行ったりします(笑)。あとは焼肉も好きですね。
ーー甘いものがお好きなのは意外でした(笑) また競輪の話に戻りますが、近内候補生の直近の目標とデビュー後の目標をそれぞれ教えてください。
まずは記録会でゴールデンキャップを獲りたいです。デビュー後には、師匠の坂井洋選手(栃木・115期)と一緒のレースを走れるような選手になりたいです。
ーー坂井選手とはどういうつながりだったんでしょうか?
年齢は坂井選手が一つ上ですが、大学の同期でした。競輪を勧めてきたのも坂井選手で「やれよ、できるよ」と、そんな軽い感じで誘われました(笑)
ーー仲良しなんですね(笑) 最後に競輪選手を目指すにあたっての意気込みを教えてください!
養成所では下からの始まりとなります。どこまで伸びるかわかりませんが、下剋上できるように頑張ります!
引退もよぎる中で「とりあえずやっちゃおう」と3年後の五輪を目指す思い切りの良さ。一方で、買い被ることなく現実を見据える“冷静な眼”も併せ持つ近内三孝。第一回記録会では最下位70位(候補生72名中2名は記録会不参加)からのスタートとなったが、目の前の課題に全力で向き合い、静かに闘志を燃やす。地道な努力を知る男が、下剋上の狼煙を上げようとしているーー。
netkeirin編集部
netkeirin Editorial department
netkeirin編集部がピックアップする“未来の競輪スター候補”のインタビューをお届けします。