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山口健治の『競輪 時代の輪郭』

【新連載コラム】ダービー王・吉田拓矢は“真の一流”まであと一歩「GIは3つ獲ってホンモノ」

2025/05/30 (金) 12:00 10

今月から新たなコラムがスタート! “江戸鷹”の愛称でおなじみの競輪評論家・山口健治氏が、競輪界の出来事をテーマに今と昔の比較をしつつ、競輪の、そして競輪選手の魅力を伝えていきます。

ダービーは最高峰のGI トライアルで出場権争った時代も

 みなさんこんにちは! 山口健治です。今月からコラムを担当させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。

 第1回目のテーマは「日本選手権競輪」、通称ダービーについて。ダービーは一番格式が高い最高峰のGIといわれており、「ダービー王」は最も栄誉のある称号というのが共通認識だと思う。それくらいダービーとは競輪選手にとって特別なのだ。

“ダービー”は競輪選手にとって特別(撮影:北山宏一)

 今は基本的に1年間の獲得賞金上位者に出場権が与えられるが、かつてはダービートライアルというものがあって、そこを勝ち上がることでダービーの出場権を得ることができた。今のように年間を通して活躍することで出場権を手にするというのも素晴らしいことだが、トライアルで結果を出さないといけないという緊張感やプレッシャーを乗り越えてつかんだ出場権は、非常に重みがあったように思う。

 様々な理由でトライアルは廃止になったが、個人的にはまた見てみたい気もするかな(笑)。とにかく当時はトライアルも含めての「ダービー」であった。

GIは3つ獲って“ホンモノ”

 先日行われた今年のダービーは茨城の吉田拓矢が優勝した。GI優勝は2021年の競輪祭以来で2つ目。初優勝から少し時間が経ってしまったが、もともと力はある選手。ダービー王の称号もとても似合っているように思う。

眞杉匠とタイトルをたらい回しにする未来も(撮影:北山宏一)

 今回の優勝は眞杉匠のまくりに乗ってのものだった。2年前の西武園オールスターで眞杉のGI初優勝に貢献したことが返ってきた形で、これから前後を入れ替えてタイトルをたらい回しにする、なんてこともあるかもしれない。なんといっても今の競輪、特にビッグレースでは強力なラインを組めた方がかなり有利に戦えるからだ。

 また、昔から“GIは3つ獲ってホンモノ”という風潮が競輪界にはある。これで満足せず、ぜひあと1つタイトルを獲って、ホンモノの一流レーサーの仲間入りをしてほしいと心から願っている。

 ちなみに拓矢の父(哲也・51期)は私より少し年下で、おとなしい雰囲気の選手だった。弟(昌司・有希)たちも活躍しており、きっと喜んでいることだろう。これからも兄弟みんなで良い走りをして、親に恩返しをしてほしいね(笑)。

有希(左)と昌司 弟たちも日々奮闘している

KEIRIN ADVANCEは“これからどうしていくか”

 最後に、先月初めて実施されたKEIRIN ADVANCEについても触れてみようと思う。まず、新しい試みをして、新規ファン獲得を狙うという取り組み、姿勢は評価をしたいと思う。賛否両論あるが、“競輪”とはだいぶ違う形態になるので様々な意見が出るのは予測できたはず。大事なのは今後どうしていくか、ではないだろうか。

 ルーキーシリーズを除く4つの開催を見て思ったことは、まず追い込み選手には厳しいなということ。車番が悪い、スタートも早いわけではないというマーク屋は、どうすることもできなかったような印象を受けた。しかもマーク屋は本能でヨコの動きをしてしまう恐れがある。アドバンスでは当然これはルール違反。マーク屋は、普通の開催を走りたいな、と思う選手が大多数なのではないか。逆に“競輪”ではなかなかポテンシャルの高さを発揮できなかった自力選手が躍動している姿も見られた。ブロックがないとわかっているので遠回りをせずギリギリのライン取りができること、普段と違い単騎なので、後ろを気にせず自分の好きなタイミングで全開で仕掛けられることがプラスに働いたようだ。

追い込み屋・佐藤慎太郎も初のアドバンスに参戦(撮影:北山宏一)

 現在はどの選手もアドバンスにあっせんされる可能性があるが、今後は事前にアドバンスへの参加意思があるかどうかを確認しておき参加希望制にしてはどうか。(斡旋課の負担が増える等の具体的問題は一旦置いておいて)。その場合、おそらくほとんどが自力選手になるだろう。無作為に選ばれた7人だとどうしても単調なレースになりがちだが、自力選手が多い構成となれば、スピード感のある白熱した争いが繰り広げられるのではないだろうか。


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山口健治

Kenji Yamaguchi

山口 健治(ヤマグチ ケンジ) 東京都荒川区出身 “ヤマケン”、“江戸鷹”の愛称で親しまれる元トップ競輪選手。兄を追い38期生として在所1位でデビューし、3年も経たずうちダービー王に輝く。その後は競輪祭を二度制覇し長らく活躍するも2009年に惜しまれつつ引退。現在はスポーツ報知の競輪評論家として活躍中。

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