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前田睦生の感情移入

【KEIRINグランプリシリーズ2020】競輪を始めるなら、今

2020/12/23 (水) 18:30 9

競輪を愛し20年、競輪記者になり15年。
競輪の酸いも甘いも知る東京スポーツの前田睦生記者。
現場記者だからこそ知り得る情報満載! 時には厳しく、時には優しく…。
臨場感あふれるコラムが本日よりスタート。レースの見どころや競輪業界へのオピニオンなど前田記者の目線でコラムを連載していきます。

 はじめまして、東スポ競輪担当の前田睦生と申します。競輪ファンを少しでも増やしたい、その思いひとつで、このコラムを書かせていただくことになりました。競輪という味わい深い物語を、ぜひ一緒に読んでいきましょう。

競輪は実は始めやすい

 まず、「競輪は難しい、とっつきづらい」と惑わされている皆様へ。

 実は全然違います。競輪は、選手の名前を覚える、この1点で楽しめます。とても、簡単です。ライン、イン粘り、北へ、ジギリ。用語が分からない…ということで足踏みする必要もありません。選手を追いかけるようにすれば、後からついてきます。12月28、29、30日、平塚競輪場で開催されるKEIRINグランプリシリーズは、競輪を始めるにはうってつけです。とりあえず2400円、用意してください。では、始めます。

ワッキー!!!

選手の思いを自分の中に取り込もう

 30日に行われる「KEIRINグランプリ2020」。まず2人の男の関係に首を突っ込むことになる。競輪は人間に着目することが、すべて。脇本雄太(31歳=福井)と平原康多(38歳=埼玉)が並ぶ。並ぶ、とは所属地域を基準に作られるラインと呼ばれる一緒のチームを組むということだ。しかし、この2人は元々の所属が違う。関羽と張遼、みたいなものだ。基本は敵。

 所属が違うのに、平原は脇本と連係することを選んだ。その意味、が競輪そのものになる。競輪をこれから始める、という方は、まずKEIRINグランプリ2020を見て、そこからの物語になるので、お楽しみに。

 平原は他地区所属の選手と連係することによって、そのレースを勝つ可能性が高まりそうな場合でも「いやいや、そうじゃないでしょう」。記者として、確認事項として「この選手の後ろは?」と聞くこともあるが、「できませんよ、ハハハ」と返されることばかりだった。関東の代表選手としての誇りがあるからだ。

 だが、22日の共同会見、衝撃が走った。脇本が「昨日(21日)平原さんから電話があって」と話した時、まさか、と思った。「平原さんがついてくれるということで」。平原の決断の奥底は、本人にしか分かりえない。だが、取材を続けてきた身としては、理由は一つと思った。

 平原は今回のグランプリを自身にとって最後のグランプリと定め、覚悟を決めたのではないか…。

平原、悩んだんだろうな…

平原康多の決断の重み

 今年で11回目のグランプリ出場になる平原だが、かつては「GIを優勝することがすべて。グランプリはおまけ、お祭りみたいなもの」という感覚だった。が、2017年静岡グランプリ、平原はゴールを前にした4角手前で落車した。

 ゆがんだ自転車、車輪を力ずくで整え、ゴールを目指した。全身は傷だらけ。そこにファンは「ヒーラハラ!、ヒーラハラ!」「頑張れえ!」と声を枯らした。グランプリ優勝はすでにない。だが、この一戦だけでなく、デビューから戦い抜いてきた男に、最後まで…の思いが託されていた。

 人生の重量があった。戦い抜くことの厳しさ、苦しさ、自分が生きている重みを平原にファンは預けた。その思いを受けた平原は無我の境地でゴールし、「グランプリを勝つことで、ファンに返したい」とグランプリ優勝を最上の目標に置いた。選手とファンは一つ。苦しみも悲しみも、喜びもともにする。その思いが、今年の平原の決断につながった。

 今年のグランプリ、勝つことしか平原には求めるものはない。ファンのために。だからこそ、節を曲げてでも、他地区選手の後ろに付ける決断をした。節を曲げて何かを決断した時、結果を残すことでしか認められない。平原は自分をそこに追い込んだ。来年以降も出場する可能性は十分ある選手だが、その覚悟を胸に秘める。

 9人各選手のコラムや、インタビューを探してほしい。それぞれの選手の思いを、自分で感じとることが、競輪世界に突入し、人間、人生に向き合う入口になる。グランプリ出場9人を見つめることが、2021年を皆様の競輪人生の第1章とすることになる。グランプリが序章(もう60章くらいの方も多いと思いますが)。

 28日のガールズグランプリ2020、29日のヤンググランプリ2020について少し。ガールズグランプリ2020、児玉碧衣(25歳=福岡)は3連覇を目指す。昔、戦後しばらく女子競輪というものがあった。競技性の低さ、配当の安さを原因として15年(49〜64年)ほどで廃止となった。いや、違う。女性でも恒久的な何かを訴えることができる、と信じて走るのが児玉だ。

アオイの涙の意味を追いかけよう

ガールズケイリンも知ってほしい

 先月の小倉競輪祭「ガールズグランプリトライアル」で他の選手の走りを見て、児玉は涙した。「こんなにすごいガールズケイリンをもっとみんなに知ってほしい」。出場する7選手も思いは同じ。その思いを感じ取れる一戦を、車券購入という形で没入してほしい。7人の内、1人だけを選ぶ作業は酷なのだが、そこから逃げてはいけない。

 ヤンググランプリ2020は前途ある若者の争い…の中で、このレースは近年、荒れがち。上述とは趣向を変えよう。年の瀬に車券を買うからには儲けないことには迎える年がないので、ここは好配当の使者を告げる。小林泰正(26歳=群馬)の2着付けだ。みんな若いだけに、肩肘張って、ギンギンに攻める。そこを、茶わん蒸しの中のギンナンのような味わいで攻めるのが小林。優勝を推奨せずに申し訳ないが、小林の2着付けで競輪の味を知ることも重要だ。

 この3レース、買い方の基本は気になる選手の1着から総流しの8点(2車単)。ヤンググランプリ2020は小林を2着付けの8点を勧めるが、3つのレースで2400円。これが競輪を楽しんでいくための、入場料となります。スマホを手に取りましょう。ネット投票を始めましょう。

 競輪一本の私ですが、ハーツクライ、ブエナビスタという馬名が好きで、今、インターマイウェイとマイネルブリッジで始まったギャンブル人生を思い出すものです。


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前田睦生の感情移入

前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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