アプリ限定 2023/07/12 (水) 15:00 245
毎年4月から6月にかけて男女合わせ90名近くの選手がデビューする競輪界。将来の夢に向かってスタートを切るルーキーたちがいる一方で、崖っぷちに追い込まれ、選手生命を懸けた「代謝争い」を戦う選手もいる。今回の特集では、代謝のルールや実際に代謝争いをした選手の声など、競輪初心者にもわかりやく代謝についてお伝えする。まずは、代謝の仕組みについて。
競輪選手は、国家試験である「競輪選手資格検定」に合格して初めてJKA(競輪振興法人)によって選手登録が行われ、地方公共団体が開催する各競輪場のレースに出場することが出来る。
体力や気力の限界を感じ、自ら引退を決断する選手もいるが、成績低下にともない引退を強いられる「代謝制度」によって、現役を終える選手は少なくない。代謝が存在するのは、選手のレベルを一定に保ち、ファンにレースを楽しんでもらうためだ。勝つことが出来ない選手は淘汰される。他の公営ギャンブルでは、競馬の騎手には強制引退はないが、競艇、オートレースは同様の制度が存在する。
競輪では「競輪に係る業務の方法に関する規程」第83条(3)の「成績が不良である際に選手登録が消徐される」に基づき、前期(1月〜6月)と後期(7月〜12月)の6か月ごとに、選手に相応しいかどうか成績審査が行われ、在籍クラス(級班)と競走得点によって代謝が決まってしまう。
男子の登録数は2,192名(2022年12月31日時点)。成績によってS級S班からA級3班までクラス区分けされているが、代謝対象となるのは、A級3班に在籍し、2期連続で競走得点が70点未満、さらに直後の期も加え、通算3期の平均競走得点が70点未満の選手だ。その中から毎期、成績下位30名が代謝となる。
対して女子選手の総数は175名(2022年12月31日時点)。男子が70点であるのに対して、女子は47点がボーダーライン。女子は男子のようにクラス分けされていないので、単純に競走得点だけになる。2期連続で競走得点が47点未満、さらに直後の期の加えた通算3期の平均競走得点が47点未満の中から成績下位3名が代謝となる。
代謝を決める競走得点とは何なのか? 競輪ではレースの格や着順によって選手に点数が付与され、格上レースで上位の着順を取るほど競走得点は高くなる。いわば、選手の「戦闘能力」と言っても良い。また、級班は競走得点によって決められる。
各レースには平均点が定められており、9車立てでは5着、7車立てでは4着の選手に対して与えられるのが平均点になる。着が1つ上がるごとに2点増、着が1つ下がるごとに2点減とし、競走得点を合計して出走回数で割ったものが、選手の競走得点となる。上の級班や、同じ級班でも勝ち上がることで出場できる格上レースになるほど、平均点が高く設定されている。
例えば、A級3班の選手が出走するA級チャレンジの一般戦とA級チャレンジ決勝戦の場合、競走得点は以下のようになる。なお、失格した場合は得点を獲得することはできず、落車等により競走を中止した場合や、競走不成立になった場合も同様である。
着順 | 一般戦(最終日) | 決勝戦 |
---|---|---|
1着 | 73点 | 86点 |
2着 | 71点 | 84点 |
3着 | 69点 | 82点 |
4着 | 67点 | 80点 |
5着 | 65点 | 78点 |
6着 | 63点 | 76点 |
7着 | 61点 | 74点 |
代謝ボーダー上の選手は、着が1つ変わることで人生が左右される。競輪はゴール前まで2〜3人の選手が1つのチーム「ライン」を組んで走るが、選手一人ひとりのそれまでの生き様がラインの絆となり、特に期末はファンの予想を上回る「勝負駆け」を生んできた。家族のため、仲間のため、そして自分のため、さまざまなドラマが代謝争いには存在しているのである。
今後、netkeirinでは代謝争いを経験した選手や元選手が登場予定。選手人生にスポットを当てながら、代謝についてより深堀りしていく。
netkeirin編集部
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選手人生の崖っぷちで走り続ける姿や、ラインの絆をより強く感じさせる「代謝」についてnetkeirin編集部があらゆる角度から紹介していきます。