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松浦悠士の“真っ向勝負!”

【松浦悠士のGP回顧】過去一番に悔しいグランプリ! 今年は“完全に納得できる走り”を求めていく

2023/01/06 (金) 18:00 72

 netkeirinをご覧のみなさん、あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。新年最初となる今回のコラムでは昨年末の「KEIRINグランプリ2022」の振り返りと今年の目標を書いていこうと思います。

単騎で挑んだKEIRINグランプリ2022(撮影:島尻譲)

“不安”との戦い

 まず、グランプリについて振り返りたいと思います。前回のコラムで「不安」と書きましたが、その不安をなかなか拭うことはできず、平塚競輪に入る時も胸にありました。単騎は文字通り1人で戦うものなので、仲間とレースの組み立てについて話せるわけでもなく、自分の戦略が正解なのかどうかも相談できません。

 ただ、会見でも話しましたが、「何もできず…」のレースは絶対に避けたいという気持ちは会場に入ってからさらに強くなっていきました。考え得るレースパターンを想像して「この場合、自分がどう行動するのが最善なのか?」とシミュレーションを重ねて、決戦前夜には他人任せにせず自分で動いていく決意もかなり固まりました。

 それでも狙っていく位置、動くタイミングに関してはスタートしてみなければわからず、レースの流れによって異なるので、コメントの出し方は難しかったです。ジカに決め打ちしていたわけではない作戦でしたので、どんな動きをしたとしても矛盾しない言葉を選び、コメントを出しました。

公開指定練習では入念に感触を確かめた(撮影:島尻譲)

感性を頼りに体が動いた

 いざグランプリの幕が上がると、前受けは北日本ラインとなりました。当然想定しているパターンのひとつではありましたが、僕は近畿勢の前受けが理想と考えていたので、「より厳しいパターンになったぞ」と頭を切り替えました。他人任せにせず自分で動いていくと決めていたので、勝利の確率を上げる最善策を取っていかなければなりませんでした。このとき北日本ラインのところに位置を求めなければ「何もできず…」のレースになり、まったく勝負にならないことは明白でしたから、動くことは決めていたのですが、「タイミングはどこで行こうか?」と悩みました。

 スタート後に並びが出揃い、「脇本さんが一気に行けば最後方の9番手になってしまう」とか「上昇するとして抵抗された場合はどうなるか」、「番手に入れたとして新田さんはどのタイミングで追い上げてくるのか」など色々な展開が頭を巡りました。ですが、感じていた不安や数々の想定パターンが完全に消えるような感覚の中で「上昇するなら今だ。今やっちゃえ!」と戦略のピントが合うような勝負勘が働き、体が自然に動き、早い周回で新田さんの位置まで上昇していきました。

迷いが立ち消え松浦選手(5番車・黄)は新田祐大選手の位置まで上昇(撮影:島尻譲)

 新田さんの前に入ってからの周回はドキドキで、心拍数が上がりました。「入れ替えはあるのか?」、「どこで追い上げられるのか?」、「新山君はどう動くのか?」、「後方の出方は?」など息つく暇もなく、頭をフル回転させながら周回を重ねました。

新山選手の番手で周回を重ねながらその後の展開に備えた(撮影:島尻譲)

過去4回出場したグランプリのなかで一番悔しい

 そのまま局面は勝負所へ流れていき、赤板で新田さんが追い上げてきて僕は下げて3番手へ。そして打鐘を迎え、新山君と新田さんを前に僕は良い位置でレースを走っていました。さきほど「近畿勢の前受けが理想」と書きましたが、そのパターンの組み立てでも、最終ホームの理想形はあの並びに近いものです。要するに、プロセスこそ違いましたが、僕の勝ち筋を考えた時に「自分がやりたかった走り」も「求めていた形」もできていました。最終ホームではボルテージも上がり、「優勝争いできる!」という確信の中で走っていました。

 しかし、その思いとは裏腹に優勝争いはさせてもらえませんでした。僕は「ここぞ」というシーンで守澤さんに一撃をもらってしまいました。守澤さんの動きにもスピードにも僕は気が付きませんでした。意識が向いていなかったです。

理想に近い形だった最終ホーム、守澤選手(4番車・青)もアクションを起こした(撮影:島尻譲)

 この一撃で僕のグランプリは終わりました。激しいスピードの中でバックを踏んでしまいましたし、あの場面で内に押し込まれては巻き返しも厳しく、脚力を完全に消耗してしまいました。最終ホームを通過するまでにしっかりとレースを作れていただけに、守澤さんに気が付けなかったのは本当に悔しかったです。

 あの場面で守澤さんの動きを察知して、押し込まれる前に僕から当たりに行くなど対応できれば、“あおり”も生まれるでしょうし、脇本さんの進路にも影響を与えることができたように思います。そうなれば結果は違うものになっていたかもしれない…、とこの部分に大きな悔いが残っています。

 守澤さんの追い上げはあって然るべきタイミングでしたし、なぜそれに気が付かなかったのか。最終直線で優勝争いができる光景が目の前まで見えていただけに、「終わった」と感じた時は本当に残念でした。間違いなく過去出場したグランプリの中で一番悔しいグランプリになりました。

最終1センター過ぎでは「勝負圏に食い込むには厳しい余力になった」と松浦選手談(撮影:島尻譲)

優勝だけを目指した走り

 結果は残せませんでしたが、レース後には多くの労いの言葉をいただきました。賛否両論があるのはわかっていましたが、僕の走りを肯定してくれる人がたくさんいることをレース後に知りました。改めて温かい応援と労いの言葉に感謝しています。ありがとうございました!

 また、「レースを潰したかったのか」や「何をしたいのかわからない」といった批判的なご意見も届きました。でも本当に優勝だけを目指してレースを組み立てて戦ったことはご理解いただきたい気持ちがあります。厳しい戦況の中で自分の勝ちパターンを手繰り寄せるための作戦は実行できたと考えています。その一点だけはレースの振り返りとともにお伝えしたかったことです。

2023年の目標について

 本当に悔しいグランプリになってしまいましたが、気持ちを新たに2023年も走っていきます。今年は「すべてのGIで決勝に乗ること」そして「GIタイトルを獲得しグランプリへ出場すること」を目標にしています。その2つの目標を達成して5回目のグランプリを走りたいです。そして、今年のような悔しさを感じることのないレースをしたいと強く思っています。

 悔しい気持ちは優勝という結果が得られなければ絶対に感じるものなのかもしれません。でも『反省点もない完全に納得できる走り』をして、結果が残せなくとも悔しさを感じないというくらいのレースをしたいです。この気持ちを胸に精一杯頑張っていこうと思います。

結果よりも内容重視の姿勢で“最高の結果”を獲りに行く(撮影:島尻譲)

読者の方から寄せられた質問に答えます

 それでは今月も質問に答えていきたいと思います! 今月は3問の質問に答えていきます!

今回は3つの読者質問に真っ向勝負!(撮影:島尻譲)

ーー広島記念からグランプリも刺繍の名前入りのレーサーパンツを履いていますが、これは決意や気合の表れでしょうか?

 いえ、決意や気合といった深い意味はまったくありません。裕友が刺繍を入れているのを見て「かっこいいな〜」と思って僕も作っただけで、特別なエピソードはないですね(笑)。

ーー「直前まで考える」というコメントの“直前”というのはどこまでを指しますか?

 発走直前までにレースパターンは想定して、それに応じた策は整えていますが、本当に発走機についても考えていますね。今回のグランプリで言えば前受けが近畿ラインになるのか、北日本ラインになるのかで、僕の“最善策”は異なります。位置を狙うにしてもピッチが上がってからなのか、早い周回から行くのかを考えます。コメント上の話であればパターンを考えるのは発走機までですかね。でも当たり前ですが、レース状況に応じた判断は走りながらのリアルタイムで決定していきます。

ーーお正月はどう過ごされました?

 今年は元旦と2日はしっかり休みました。3日から軽めの練習をスタートさせ、4日から本格始動したところです。お正月は昨年、鹿児島のトークイベントでいただいたお酒を開け、父親と少しだけ飲みました。僕は一杯、二杯だけでしたけど(笑)。あまり一緒に飲む機会もないですし、ゆったりとした良い時間となりました。

初戦は和歌山グランプリ

 それでは新年最初のコラムはここまでにしようと思います。1月は12日〜15日に和歌山記念、26日〜29日に豊橋記念を走ります。この二場所は連続して脇本さん古性君、守澤さんと一緒の開催となり、グランプリを戦った選手との戦いになります。

 突然脚力差が埋まることはないので、厳しい戦いになるのは言うまでもありませんが、「どう戦えば通用するのか」といったことは常に模索しなければなりません。新年1発目から難しいレースになると思いますが、しっかりと勝ちにこだわる走りを追求していきたいです。2023年もスタートから頑張ります!

2023年も目標に向かって(撮影:島尻譲)

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松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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