2022/09/05 (月) 12:00 19
2022年8月28日に小田原競輪の「開設73周年記念 北条早雲杯争奪戦(GIII)」の決勝が行われ、深谷知広(32歳・静岡=96期)が、青板バックで落車が起こるというアクシデントに対応し、ぶっちぎりの一人旅で優勝を手にした。
深谷の記念優勝は2017年9月26日の青森以来だった。5年ぶり。そう、5年も記念を勝っていなかったのだ…。「ファ〜イブ、イヤーズ♪」。デビッド・ボウイの「Five Years」が頭の中を流れてきた。
この曲は、地球があと5年で滅ぶというニュースが流れ、その情景を歌った歌。「Ziggy Stardust」というアルバムの1曲目で、あるロックスターについて様々な物語が始まっていく。小田原バンクは深谷の優勝が決まった後、熱狂の渦が巻き起こった。
彼は、ロックスター。
バンドは違うが、深谷が見せた久しぶりのガッツポーズは、ザ・フーのピート・タウンゼントがギターをかき鳴らす時のような振り上げ方だった。深谷の原点はファンを巻き込むこと。
感情が沸騰するような地点にまでファンを導く。「記念優勝は5年ぶりですね」と取材で聞かれ「久しぶり過ぎて、あまり記憶がない」と答えていたが、ザッツロック。過去は置いてくるのがロックスターの流儀だ。
そして、あくる日の29日は伊豆ベロドローム(全日本トラック)で1キロメートルタイムトライアルを走り、1分1秒778のタイムで3位だった。過酷な戦いが、本当に似合う。かき乱れるギターのリフが重厚。
9月4〜6日の日程で川崎競輪場で開催されている「慶カップ スピチャン杯東スポ杯(FI)」に出走中だ。前検日は手をオイルまみれにしながら自転車を整備していた。32歳になったけど、子どものような姿で自転車をいじくっていた。ギターを与えられた子どものように、朗らかな表情だった。
「ファ〜イブ、イヤーズ♪」
この5年間、当方としてもずっと深谷の記念優勝、またGIの優勝を待ち続けていた。この優勝で、滅びない深谷知広の競輪ライフが復活したと思う。川崎の前検日は本当にのんびししていて、
「知り合いのYouTubeのTシャツです」
と、お気に入りのカーTシャツでウロウロしていた。ナショナルチームの活動を終える時に「すべてゼロからやっていきたい」という意向で東スポWebのロゴもユニフォームから外すことになったが、「その道を応援させてもらいますよ」と東スポとしては応援する思いは変わっていない。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。