ツアー・オブ・ジャパン2024信州飯田ステージ

2024/07/02(火) 12:15

ツアー・オブ・ジャパン2024信州飯田ステージ

国際ステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」は5月23日に折り返しを越える5日目を迎えた。開催されたのは、屈指の山岳コース「綿半 信州飯田ステージ」だ。大会の中では長く開催されてきたステージであるが、今年名称が変更になり、パレード走行がなくなって、コンパクトな運営となった。

コースは、スタート後ほどなく厳しい上りに入り、標高561mの最高標高点が山岳賞ポイントとなる。ここからは絶景が広がる下り坂。下りながら細かなコーナーが連続するテクニカルなダウンヒルを越えると、「TOJコーナー」の愛称で親しまれるヘアピンカーブに差し掛かる。ここで減速を強いられた後、一気に加速しフィニッシュを目指す1周12.2kmの「下久堅周回コース」。「アップダウンしかない」と嘆く選手も多い、本格的な山岳ステージだ。レースはこのコースを10周する120.9kmで競われる。



山岳賞設定ポイントに向けて一気に上り、そのあとは、下り基調ながらアップダウンが続く。「休める場所がない」タフなコースだ

スタートライン最前列に並ぶのは、個人総合首位のジョバンニ・カルボーニ(JCLチーム右京)、前日のステージでポイント賞首位に立った寺田吉騎(シマノレーシング)、手堅く山岳賞首位を守る中井唯晶(シマノレーシング)、新人賞首位のザッカリー・マリッジ(チームブリッジレーン)、4名の各カテゴリーのリーダーたちだ。


集まった老若男女の観客に見送られ、スタート©️TOJ2024


太鼓の演舞が会場を盛り上げる©️TOJ2024

リアルスタートとなった直後から、レースは活発に動いた。ニコラス・ヴィノクロフ(アスタナ カザクスタン ディベロップメントチーム)が飛び出したのを契機に、1周目の終わりには中井唯晶ら14名の逃げ集団が形成されていた。


メイン集団はJCLチーム右京がコントロール©️TOJ2024

周回完了時の中間スプリント ポイントはコンフォブ・ティマチャイ(ルージャイ インシュアランス)が先頭通過を果たす。2周目に設定された山岳賞では中井が先頭で通過し、7ポイントを加算する。翌日には、例年総合優勝がほぼ決まる富士山ステージが待ち受けており、超山岳として優勝者に15ポイント、上位勢にも高ポイントが付与される。中井が山岳賞リーダーを守るためには、この日ポイントを積み増しておく必要があった。


飯田ステージ名物「チョークペイント」。観客たちが路面に選手たちへのメッセージを描く©️TOJ2024


焼肉のまち飯田では、ガレージでの焼肉が市民の定番の観戦スタイル。この日もコース沿いは焼肉の香りに満ちていた©️TOJ2024

2周目に初日のステージで優勝を飾ったマックス・ウォーカー(アスタナ カザクスタン ディベロップメントチーム)が単独で先頭集団に合流。
3周目完了時の中間スプリントポイントは入部正太朗(シマノレーシング)が先頭で通過。
総合7位につけるライアン・カバナ(キナンレーシングチーム)が2位通過し、ボーナスタイム2秒を獲得した。
メイン集団とのタイム差は、2分30秒ほどまで開いており、このままでは、カルボーニの個人総合首位が覆されてしまう事態に。リーダーチームであるJCLチーム右京がペースアップを図り、1分30秒差まで集団を引き上げた。


ペースアップを図るJCLチーム右京を先頭に下りのヘアピンコーナー「TOJコーナー」を回るメイン集団©️TOJ2024

5周目に設定された山岳ポイントはウォーカーが先頭通過している。この時点で先頭グループからは脱落者が多く出ており、人数は8名まで減っていた。


先頭集団は人数が絞り込まれていく©️TOJ2024

5周目完了時の中間スプリントはカバナが先頭通過で新たにボーナスタイム3秒を稼ぎ、個人総合のジャンプアップを狙う。
レース終盤、7周目の山岳ポイントではアスタナが攻撃に転じ、ヴィノクロフが先頭通過し、ポイントを獲得。先頭集団からはさらに3名が脱落し、5名までに絞り込まれていた。
メイン集団はさらにペースアップ。じりじりと差を詰めていく。


5名となり、逃げ切りをかけて走る先頭集団©️TOJ2024

最終周回の 山岳賞に向かう登坂でメイン集団が逃げていた選手たちを飲み込んだが、これを嫌ったヴィノクロフが単独で飛び出し、単独で走行し、ダウンヒル区間へ入った。
残り3km地点で、ヴィノクロフにベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)が単独で合流し、2名でフィニッシュを目指す。メイン集団もこの2名を追う。
ヴィノクロフはラスト500mでダイボールを引き離し、単独でフィニッシュへ向かう。ダイボールはここに食らいつけず、ヴィノクロフは余裕のパフォーマンスを披露しながらフィニッシュラインを越えた。冒頭のアタックから、逃げ集団に乗り、そこから再度抜け出して、またゴール勝負にも勝つという「ヴィノクロフのステージ」となった。


「電話」のパフォーマンスを繰り広げながらフィニッシュするニコラス・ヴィノクロフ(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム)©️TOJ2024

2位には集団から飛び出したダヴィデ・トネアッティ(アスタナ カザクスタン ディベロップメントチーム)が滑り込み、ダイボールは3位となった。


笑顔で表彰台に立つヴィノクロフ©️TOJ2024

ヴィノクロフは「今日一番いい戦術は、逃げることだと考えていた」と語った。「逃げの人数が多すぎて」決まらないため「絞り込んだ」と振り返る。「最後の山岳ポイントでは全開でアタックして」単独でゴールを目指したという。「美しい日本で勝利できて、とても嬉しく思う」と喜びを語った。個人総合、山岳賞、新人賞には変わりはなかったが、ポイント賞はカルボーニが首位に返り咲いている。


ステージ勝者ヴィノクロフと各賞リーダーによるシャンパンファイト©️TOJ2024

翌ステージは、大会に組み込まれて以来、大会の総合優勝を決めてきた「富士山ステージ」が控えている。

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【結果】
ツアー・オブ・ジャパン2024
第5ステージ 信州飯田(120.9km)

1位/ニコラス・ヴィノクロフ(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム)3時間2分43秒
2位/ダヴィデ・トネアッティ(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム)+3秒
3位/ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)
4位/石原悠希(シマノレーシング)
5位/ライアン・カバナ(キナンレーシングチーム)+9秒

【個人総合時間賞(グリーンジャージ)】第5ステージ終了時
1位/ジョバンニ・カルボーニ(JCLチーム右京)12時間4分51秒
2位/アナトリー・ブディアク(トレンガヌ・サイクリングチーム)+15秒
3位/カーター・ベトルス(ルージャイ・インシュランス)+18秒

【個人総合ポイント賞(ブルージャージ)】第5ステージ終了時
1位/ジョバンニ・カルボーニ(JCLチーム右京)52P

【個人総合山岳賞(レッドジャージ)】第5ステージ終了時
1位/中井唯晶(シマノレーシング)32P

【個人総合新人賞(ホワイトジャージ)】
1位/ザッカリー・マリッジ(チームブリッジレーン)

【チーム総合成績】第5ステージ終了時
1位/キナンレーシングチーム 36時間18分31秒

画像提供:ツアー・オブ・ジャパン2024(©️TOJ2024)

※トップ写真=山間の田園風景の中を走る「綿半 信州飯田ステージ」©️TOJ2024

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ツアー・オブ・ジャパン2024レポート
第1ステージ「堺ステージ」
第2ステージ「京都ステージ」
第3ステージ「いなべステージ」
第4ステージ「美濃ステージ」(P-Navi編集部)

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