2023/03/04(土) 14:31
東京のお台場海浜公園に設営された特設コースで開催された「Champion System×弱虫ペダル シクロクロス東京2023」は2月12日に2日目を迎えた。金曜日には都心にも降雪があり、天候が心配されたが、12日は好天に恵まれ、気温も上がり、過ごしやすい気温の中での開催となった。
※シクロクロス東京の初日レポートはこちら
2日目は、キッズレースからスタート。このカテゴリーは2学年ごとにグループ分けされ、小学校1年生から参加できる。声援を受け、やる気に満ちた元気いっぱいのキッズライダーがコースを駆け抜けていく。コースは大人向けのコースから短縮されたものを使用するが、それでも森林や砂セクションが盛り込まれ、そうたやすいものではない。
砂セクションに果敢に挑むキッズ
バニーホップでシケイン(障害物)を跳ぶキッズも!
大人バリのクールなガッツポーズでフィニッシュ
上位選手間では、大人顔負けのレースが展開され、優勝したライダーは誇らしい表情を浮かべていた。
続いて開催されたのが、シクロクロス東京の目玉企画「90分エンデューロ」だ。
人気種目「90分エンデューロ」のスタートライン。上目遣いのウマ娘的ライダーが異彩を放つ
2~4名のチームでエントリーする耐久レースであるが、「サイクルジャージまたは仮装でエントリーすること」が推奨されている。仮装での参加が非常に多く、走る側も、観戦する側も楽しめる人気種目なのだ。画像で当日の雰囲気を感じていただきたい。
砂セクションになだれこむ選手
耳付きヘルメットの金髪熟女。背中のメッセージがアツい
ピンクレディーと、疲れ果てたドラえもん
ミニオンズ・ボブは空気抵抗と暑さにやられたようだ
軽やかに水辺を走るアーニャ
真顔のガングロギャルに追われる弱虫ペダル作者の渡辺航先生。ちなみに先生は「東堂尽八」の仮装中
この日も5年ぶりの開催を祝福するかのように、多くの参加者が仮装姿でサーキットに登場。コース上も、選手交代エリアもこれまでの雰囲気とは一転し、にぎやか、かつ、なごやかな雰囲気に。時には仮装ゆえに転倒したり、暑さに耐えられなくなって停止したりと、仮装ライダーが笑いを誘うシーンもあり、会場は笑顔でいっぱいになった。
上位勢は仮装なしのガチレース! とはいえ表彰式もインパクトが強い
大盛り上がりだったエンデューロの後はコース整備を行い、午後からは上位クラスの決戦が行われる。まずは市民シクロクロッサーの最高峰とも言えるマスターズのカテゴリー1が開催された。
マスターズ1を制した生田目修(イナーメ信濃山形&大幸ハーネス)
いよいよ最後の2レースは、世界選手権帰国組を迎えた男女のカテゴリー1レースだ。これらのレースは国内シクロクロスリーグJCXの最終戦を兼ねての開催となる。
まずは、女子のWE1だ。ここには全日本チャンピオンジャージの小川咲絵(AX cyclocross team)、世界選手権U23代表の石田唯(早稲田大学)が参戦。他の注目選手としては、ロード(U23)で全日本選手権を制し、MTB(U23)では日本ならびにアジアチャンピオンの小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)が挙げられた。
にこやかにウサギのポーズで記念撮影するWE1の出場選手
勢いよくスタート
このレースには21名がエントリー。定刻通りスタートの号砲が鳴ると、勢いよく選手が飛び出して行った。
石田唯(早稲田大学)が先行。追う小川咲絵(AX cyclocross team)に続き、少し遅れて小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)も、バイクを担いで先頭を追う
ほどなく、小川、小林、石田の3名が先行する形ができた。3名は力強くペダルを踏み込み、他の選手との差を開く。
2周目になると、先頭を行く小川のペースについて行かれず、小川と石田、小林との間の差がじわじわと開き出した。後ろを振り返ることもなく、林間をスムースに走り、砂セクションではパワフルに踏み込む小川の実力はひとつ抜きん出たものがあった。
小川を追う石田と小林
先行する小川と追う2名。石田はこのコースの突破口になる砂セクションを得意としていることがアドバーンテージとなり、小林よりわずかに先行し、単独で先頭の小川を追った。
砂セクションをたくみに走る石田
快調なペースで軽やかに走る小川には疲労も見えず、ペースも衰えない。トラブルがない限り、小川の優勝の可能性は非常に高いように見えた。残すは2位争いとなるが、中盤から小林がペースアップし、石田をかわして2位に位置を上げていた。
森林パートをスムースにこなす小林が追い上げる
終盤には、それぞれの間に差が開き、1人ずつゴールを目指す形に。
先頭でべストラップを刻み続ける小川
最終周回、小林が猛烈にペースアップし、小川に迫ったが、小川には届かなかった。小川はほとんどの周回で最速のラップタイムを刻み続け、今季の他のレースと同様、最終戦でもトップでフィニッシュ。国内での連勝記録を伸ばしたのだった。
またもや独走で優勝した小川。バイクを掲げて優勝をアピール
2位には17秒差で小林が入り、その後、石田がフィニッシュ。表彰台を確保した。
WE1の表彰式。小川、小林、石田が笑顔で皆の祝福に応える
最後のレースは、大注目のME1TOP35だ。JCXランキングトップ35位以内の選手に加え、前日のME1で、上位3位に入った3名に参加権利が与えられた。
この日は、30名の選手がスタートラインについた。
ME1TOP35のスタートラインにつく30名の選手
注目は、世界選手権に男子エリートから唯一参戦した織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)。今季国内では無敵の全日本チャンピオンだ。織田に挑むのは、MTBのタイトル経験もあり、1月の蔵王で優勝した沢田時(宇都宮ブリッツェン)や、上腕の骨折も癒え、レースに復帰した小坂光(宇都宮ブリッツェン)。さらには過去に全日本を5連覇し、今季復活を遂げ、調子を上げている竹之内悠(Cinelli – Vision)らが挙げられた。
勢いよく飛び出す集団の先頭は沢田。ホールショットを取ると、そのまま集団は砂セクションになだれ込んで行った。ここで早くも大きな番狂わせが起きる。スタート直後に織田がミスを犯し、大幅に遅れを取ったのだ。態勢を立て直し、先頭を追うが、冒頭から大きなディスアドバンテージを背負うことになった。
ホールショットは沢田時(宇都宮ブリッツェン)が獲得
好スタートを切った沢田、小坂が先頭を行き、この同チーム2名に竹之内が迫る。その後ろには、織田が順位を上げて迫ってきていた。竹之内はブリッツェン2名との差を詰めにかかったが、織田はここまでのシーズンに加え、欧州遠征の疲れや時差ボケが出たのか、思うようにペースを上げることができない。小さなミスも出ているのか、さらに順位を下げるシーンも。
先行するチームメイトの沢田と小坂光(ともに宇都宮ブリッツェン)
竹之内が先頭の沢田と小坂に合流した。誰よりも欧州でのシクロクロスレース参戦の経験が豊富で、悪路へのテクニックや身のこなしは、抜きんでたものがある竹之内は、砂セクションをも軽快に走る。合流した後も絶妙な身のこなしで、走れるラインを巧みに探し、
スイスイと砂セクションを越えていく。織田も4位まで順位を上げ、小坂をかわしたが、先月まで見せていたようなキレを見せることはできず、やはりペースをつかめない様子だった。
竹之内悠(Cinelli – Vision)が2名に合流し、先頭を走る
フライオーバー(立体交差)を越える2人
織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)が前を追うものの、思うようにペースが上がらない
先頭は竹之内と沢田の一騎討ちに。ここに砂を得意とする竹内遼(GHISALLO RACING)が順位を上げており、この2人を織田と竹内が追う構図になった。
竹之内と沢田の一騎討ちに。コース沿いは多くの観客で埋まった
力みなく、クルージングするようにこのサーキットを走る竹之内は、中盤からさらにペースを上げ、6周目には沢田を引き離し、加速すると、7周目には1周4分36秒という大会最速ラップを叩き出した。一人旅となった後も、なおも無駄のない走りで最速タイムを刻みながらフィニッシュを目指す。
砂セクションを得意とする竹内が淡々と追い上げる
すばらしいバイクさばきで砂の上をすべるように走る竹之内
沢田はペースを落とし、少しずつ後退し、竹内に2位の座を明け渡す。貪欲に走り、竹之内を追っていた竹内だが、9周目にミスをし、対応に時間を使ってしまう。この間に沢田が2位に復帰、再び先頭の竹之内を追い始めた。
最終周回は一気にペースアップし、最速ラップまで上げ、竹之内を追った沢田だが、開いていた差はあまりに大きく、勝利をつかむことはできなかった。
トップでフィニッシュする竹之内
竹之内は大きな声援と拍手を受けながら、単独でホームストレートに現れた。喜びをかみしめるように大きく両手を打ち合わせ、拍手をすると、ガッツポーズでフィニッシュ。5年前の大会も竹之内が制しており、5年越しの連覇となった。
チャンピオンジャージの織田も祝福に訪れた
今季から所属チームを離れ、黒いシンプルなジャージで転戦してきた竹之内。久しくビッグタイトルから離れていたが、皆が待ちわびたビッグイベントで、圧倒する走りを見せて優勝を決めることができた。竹之内本人にとって、最高の結果、最高の最終戦になったことだろう。
大勢のファンが見守る中開催された表彰式
「調整が功を奏し、パフォーマンスをしっかり出せて、勝てるレースでしっかり勝てた」と語る竹之内は、「5年前より余裕を持って走れた」と5年前の自分に思いを馳せる。応援してくれるすべての方へ、繰り返し感謝を語っていた。
ビッグレースを終え、はじけた笑顔を見せた竹之内
すでに優勝者は確定していたが、このレースが最終戦となるため、会場ではJCXのシリーズ戦の総合表彰も開催された。男子の首位は出場したレースで全勝した織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)。2位は沢田時、3位は小坂光(ともに宇都宮ブリッツェン)とな
った。
シーズンの表彰台は織田、沢田、小坂が勝ち取った
女子の首位は同じく全戦で勝利を収めた小川咲絵(AX cyclocross team)。2位は渡部春雅(明治大学)、3位は石田唯(早稲田大学)となっている。
完璧な成績でシーズン優勝を決めた小川と3位の石田唯(早稲田大学)
小さな地域の大会はまだ続くものの、この大会の終了をもって、今季のシクロクロスのメインシーズンは終了となり、競技選手や学生選手たちはロードやMTBなどのグリーンシーズンの種目へ、そして社会人レーサーたちは、本業へと戻っていく。
シクロクロス東京2日目の観客動員は9,500名(主催者発表)。2日間で述べ16,500名が訪れたことになる。5年ぶりの開催となった大会は、5年開催を待ちわびた人々に喜びを持って歓迎され、大成功を収めたと言えよう。ここからますますの発展を期待したい!
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【結果】シクロクロス東京2日目
WE1
1位/小川咲絵(AX cyclocross team)34:22
2位/小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)+17
3位/石田唯(早稲田大学)+59
4位/鵜飼千春(and more)+4:35
5位/西方舞(TRC PANAMA REDS)+5:19
ME1 TOP35
1位/竹之内悠(Cinelli - Vision)51:35
2位/沢田時(宇都宮ブリッツェン)+0:52
3位/竹内遼(GHISALLO RACING)+1:17
4位/小坂光(宇都宮ブリッツェン)+1:53
5位/鈴木来人 +2:23
画像:シクロクロス東京/Kei TSUJI
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【JCXシリーズ2022-2023・レポート】
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