2023/01/26(木) 18:16
今シーズン、宇都宮シクロクロスが帰ってきた。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、2年連続で中止に追い込まれていた大会だが、12月17日、18日の両日に「カンセキpresents 2022宇都宮シクロクロス」として3年ぶりに開催されたのだ。チームを有し、ジャパンカップなどの大会を運営し、自転車レースが根付いた宇都宮らしく、レースの開催を楽しませる姿勢で企画されており、会場には出店ブースや、時には移動動物園も用意され、老若男女が訪れる人気の大会だった。
今年は両日開催される男女エリートカテゴリーならびにジュニアのレースが2日間ともにUCI(世界自転車競技連合)認定の国際レースとして設定され、オーストラリアからの選手団も参戦した。エリートレースは、国内のシクロクロスリーグJCXシリーズの第6戦、第7戦としての位置づけにもなる。
会場となったのは、栃木県宇都宮市の「道の駅ろまんちっく村」。東京ドーム10個分の46ヘクタールという広大な敷地を誇り、買い物はもちろん、温泉宿泊棟への宿泊も可能で、農業体験なども可能な多目的な施設である。この「里のエリア」の広場やドックラン周辺に加え、森の斜面を利用しコースが設営された。
土地の特性を上手く生かしたコース(画像は宇都宮シクロクロス公式サイトより)
ここに、テクニックが求められる泥のキャンバー(斜面)や、森エリアの入り口には、傾斜がきびしく、長い泥の上りの三段坂などの難所が設定され、砂エリア、砂利や泥、芝生など、多様な路面が含まれる「走り甲斐のある」コースが用意された。ハイスピード系のコースではあるが、気温が下がり、霜が降りた影響で芝生から泥が露出したり、ぬかるんだりしている箇所もあり、特に鋭角のコーナーなどは滑りやすくなっているという。ここで勝つためには、テクニックも、スピード、パワーと、バランスのとれた能力が求められた。
テクニックが問われるキャンバー(斜面)セクション
この日の空は雲に覆われ、気温も低く、ある意味、ヨーロッパの冬の競技であるシクロクロスらしい環境が揃うことになった。午前中には、ビギナーカテゴリーのレースや1時間の耐久戦が開催。そして、昼からはUCIレースが始まり、ジュニア、女子、最後に男子のレースが開催された。
オーストラリアからも2名のエントリーで迎えたジュニアでは、堂々の走りで長島慧明(北桑田高校)が優勝を決めた。ジュニア期からアクセス可能な国内で国際レースを経験できることは、選手たちにとって大きなプラスとなることだろう。
ジュニアのUCIレースも開催された
ジュニアで優勝した長島慧明(北桑田高校)
女子のレースには、JCXのランキングトップを走る小川咲絵(AX cyclocross team)、現在の日本チャンピオンである渡部春雅(明治大学)、MTBの日本、並びにアジアのU23のMTBチャンピオン、さらには今季はロードのU23の全日本チャンピオンも獲得している小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)らがスタートラインに並んだ。オーストラリアからも3名の選手がエントリー。
まずは小川が飛び出し、先頭を走る。ここに主要選手らが食いついたが、ここから早々に小川と渡部の2名が抜け出した。しばらくは2名の戦いが続いたが、小川が抜け出し、独走態勢に入った。
小川咲絵(AX cyclocross team)を先頭に難しい砂セクションを走る
今季各種目でメキメキと頭角を現している小林がじわじわと追い上げ、渡部を捕らえると、そのままパスし、2番手に位置を上げた。渡部は、このまま先頭の小川を追う。
優勝は小川、2位に小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)、3位に渡部春雅(明治大学)
だが、小川も譲らず、ハイペースで周回を刻むと、1分近い差を保ったまま、独走でフィニッシュ。2位には小林が、3位には渡部が入った。
続くは男子エリート。今季敵なしの連勝中である織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)や、沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)らが参戦。全日本チャンピオンジャージを着る小坂光(宇都宮ブリッツェン)のチームのホームであり、普段宇都宮市役所に勤務する異色のレーサーである小坂の支持者も多く、小坂には、厚い注目と期待が注がれていた。オーストラリアからチャンドラー・マルクスとホブソン・マックス、ケイン・フィンの3名が参戦した。
チャンピオンジャージの小坂光(宇都宮ブリッツェン)、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)、沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)ら強豪選手がスタートライン先頭に並ぶ
注目を集めた小坂。多くのサポーターが会場を訪れ声援を送った
スタートの号砲が鳴り、好スタートを切ったのは村上裕二郎(明治大学)。そのままホールショットを獲得する。その後、織田が先頭に位置を上げ、小坂が後に続く。
村上裕二郎(明治大学)がホールショット
小坂はバイクにトラブルがあり、バイクチェンジのためピットへ向かい、若干の遅れを取ることに。あらゆる路面に強さを見せる織田は快調に飛ばし、織田と沢田、副島達海(大阪産業大学)が先頭集団を作った。
織田と沢田、副島達海(大阪産業大学)が先頭集団を形成
「このレースに全日本チャンピオンジャージで勝つこと」を今季の目標にしていたという小坂は、声援を受けながら猛烈な追い上げを見せ、先頭集団に復帰。ここから、織田、沢田の2名が抜け出し、先行した。快調に飛ばす2名だったが、隙をついた織田がアタック。さらにペースアップし、独走態勢に入った。3番手、4番手にいた2名からは、小坂が副島を振り切り先行し、2番手にいた沢田に迫った。
バイクトラブルに泣き、2度のピットインを強いられたが、魂の走りで追い上げた小坂
先行する織田に緩みはなく、滑るように軽快にコースを走り抜けていく。沢田と小坂は熾烈な2位争いを繰り広げ、ラスト1周で2人が並ぶエキサイティングな展開に。沢田は次シーズンの宇都宮ブリッツェンへの移籍が発表されていたこともあり、宇都宮の会場は大いに沸いた。
織田は危なげない走りで悠々とフィニッシュ。沢田と小坂の戦いは、前半にトラブルが続き、2度のピットインからのリカバリーで脚力を使っていた小坂が粘れず、沢田に先行を許し、沢田、小坂の順にフィニッシュした。
宇都宮シクロクロスで念願の初優勝を遂げた織田
笑顔で表彰台に立った織田、沢田、小坂
織田は、今季負けなしのJCXシリーズで6戦の優勝を飾り、勝利が過半数を超えたことから、早くも今シーズンのチャンピオンを確定させた。宇都宮シクロクロスでは初の勝利となり、「やっと勝てた」と喜びを語った。「Day2も優勝します!」と、表彰台では優勝宣言まで飛び出したが、翌日のレースでは、無敵の織田に迫れる選手が出てくるのかが焦点となった。
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【JCXシリーズ第6戦】
【結果】カンセキpresents 2022宇都宮シクロクロスDay1
男子エリート
1位/織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)0:57:30
2位/沢田時(チームブリヂストンサイクリング)+0:31
3位/小坂光(宇都宮ブリッツェン)+0:43
4位/副島達海(大阪産業大学)+1:13
5位/竹之内悠 +1:19
女子エリート
1位/小川咲絵(AX cyclocross team)0:48:47
2位/小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)+0:54
3位/渡部春雅(明治大学)+2:24
4位/石田唯(早稲田大学)+3:30
5位/大蔵こころ(早稲田大学)+4:16
画像:Satoshi ODA
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【JCXシリーズ2022-2023・レポート】
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