2020/03/02(月) 23:38
2月11日、群馬県のヤマダグリーンドーム前橋を会場に、子ども向けの自転車教室『第12回ウィーラースクールin前橋』が開催され、2歳から小学6年生まで、計66名の子ども達が自転車を使ったカリキュラムを体験した。
[caption id="attachment_31603" align="alignnone" width="640"] 全天候型ドームでの自転車教室。子どもたちがイキイキと走り回る[/caption]
このスクールの主催は、前橋を本拠地とするロードレースチーム『群馬グリフィン』。日本競輪選手会の群馬支部の選手たちも協力し、ロード、競輪の選手たちが講師を務める形で毎年開催され、今年で12年目を迎える恒例イベントだ。ベルギーのフランドル地方の自転車連盟に譲り受けた経典を基とし、フランドルの言葉で『自転車』を意味する『ウィーラー』を用い、『ウィーラースクール』と名付けられたメソッドで展開されている。
[caption id="attachment_31606" align="alignnone" width="640"] 群馬グリフィン、競輪選手会群馬支部の選手たちという豪華な講師陣[/caption]
毎年、ロードレースの開催がない時期に企画されるため、1~2月の極寒時期の開催となるが、全天候型のアリーナが会場とあって、ペダルなし自転車にまたがった2歳児も楽しめる環境が整っている。楽しめて、役に立って、豪華な講師陣が揃えど、参加費は無料。リピーターも多く、毎年多くの子どもたちが、この日を楽しみにしているようだ。
子どもたちは、初級のチャレンジクラスと、中上級のスポーツクラスに分かれてエントリーする。チャレンジクラスの子どもは、ペダルなし自転車に乗る幼児には、より遊び要素の大きい別カリキュラムで楽しめるゾーンを用意、ペダル付き自転車に乗れる子どもを年齢等で2グループに分類。スポーツクラスはロードバイク組と、普通車・クロスバイク組と車種で2分し、計4つのグループに。それぞれに競輪、ロードの選手たちが担当講師として振り分け、スクールが行われることになった。
まずは、座学でルールの話。「自転車はどこを走るか」「どんな走り方をしたら危ない?」など、保護者が取り巻く中で子どもたちに問いかけ、コミュニケーションをとりながら、正しい知識を伝えていく。自転車のルールを知らない大人も多いため、子どもにルールを伝える立場にある保護者にも、ルールや安全のための知識を伝えていく狙いもあるそうだ。
[caption id="attachment_31605" align="alignnone" width="640"] ルールの話のあとは、グループに分かれ、自転車チェック[/caption]
続いて、自転車を持って集まり、タイヤの空気圧やパーツの緩みの有無、ブレーキの効き具合、ヘルメットの緩みなどを確認する。こちらも、この後、保護者が自宅で子どもたちの自転車の安全確認ができるように、保護者立会いの下で進められていく。
[caption id="attachment_31602" align="alignnone" width="640"] 講師の選手が各カリキュラムの見本を見せる。真剣に見守る子どもたち[/caption]
ここからは、いよいよ自転車に乗るカリキュラムがスタート。グループに分かれ、最上級組はバンクで集団走行、初級者は『まっすぐ走る』『一本橋』、中級者はコーンの間をジグザグに走る『スラローム走行』、八の字を描く上級の『八の字スラローム走行』など、会場内で分かれて、移動しながら用意されたカリキュラムに臨んでいく。
[caption id="attachment_31607" align="alignnone" width="640"] 簡単なように見えて難しい『まっすぐ走る』。ふらつかないポイントは視線の位置[/caption]
もっとも初級のカリキュラム『まっすぐ走る』にしても、幅15/20cmの布テープの間を、はみ出さずに走るのは、実際のところ、なかなか難しい。ここをクリアした子どもは、木製の一本橋の上を渡るカリキュラムに進む。ここで得る『安定して自転車を走らせ、狙ったところで停止できる』ことは、町を走る中でも本来必須の能力。クリアできれば、グッと安全に走行できるようになる。自転車に乗れるようになったばかりの子どもや、自転車が大きすぎて巧く扱えない子どももおり、冒頭は苦戦する姿も多く見られたが、子どもたちの吸収力はすばらしく、グングンと上達していった。
[caption id="attachment_31608" align="alignnone" width="640"] 木製の橋の上を渡る。恐怖心でぐらついてしまう子どももいるが、みな着々とマスターしていく[/caption]
スラロームゾーンでは、講師から体の使い方、ブレーキの利かせ方などのアドバイスを受け、次第に自転車と一体となって、走れるようになっていく。
[caption id="attachment_31609" align="alignnone" width="640"] 最初はぎこちなかった子供たちも、次第に全身を使い、バイクを傾けてジグザグ走行ができるようになっていった[/caption]
講師たちは、カリキュラムに挑む子どもにアドバイスをするとともに、巧くできた子どもたち、勇気を持ってチャレンジできた子どもたちは、積極的にほめていく。スクールが進むにつれ、思うように走れるようになり、自信にあふれた笑顔を見せる子どもが増えて行った。
中上級の子どもは、『できる限りゆっくり進んだものが勝つ』というバランス感覚を養うための『遅乗り競争』ゾーンや、テーブルや床に置かれたボトルを拾い、渡す『ボトル拾い』でエキサイト!難易度の高い床に置かれたボトル拾いを成功させたい子どもたちの行列ができ、何度も何度も、くじけず挑戦する姿が印象的だった。
[caption id="attachment_31611" align="alignnone" width="640"] テーブルの上に置いたミニコーンやボトルが取れたら、次は床に置いたボトルに挑戦。巧くいかず、繰り返し挑む子どもたち[/caption]
午後の部は、日本競輪選手会・群馬支部の小林潤二選手によるバイクペーサーのデモンストレーションからスタート。室内を走るオートバイと、その後ろに自転車がピッタリつく見慣れない光景に、目を丸くする子どもたち。周回を経るにつれ、エンジン音が高くなり、速度が上がっていくのを感じ取り、食い入るように足を高回転させるトラックレーサーの走りに見入っていた。最終周回では時速65kmを超えるハイスピードに達し、思わずポカンとしてしまう子どもも。走行後、バンクを降り、大きな拍手で迎えられた小林選手は、笑顔で子ども達の質問に答えていた。
午後のカリキュラムは、個人タイムトライアルからスタート。ペダルなし自転車に乗った子どもも、希望者は参加できるのだが、バンク一周の335mは、2歳児には、はるか長い旅!スタート後、行き先を見失ってしまったり、休んでしまったり、低年齢の幼児たちの部は、微笑ましくも波乱万丈のタイムトライアルとなった。年齢が上がっていくと、プロの選手のように後ろをホールドしてもらった状態からスタートする本気参戦の子どもたちも登場。大人顔負けのタイムが叩きだされていった。優勝は28秒で駆け抜けた6年生のらんと君。時速43km超えの好タイムだが、本人は「スタートを失敗した」と残念な表情。こういう中から、将来のビッグスターが出てくるのかもしれない。
[caption id="attachment_31612" align="alignnone" width="640"] ペダルなしバイクもタイムトライアルに挑戦![/caption]
[caption id="attachment_31613" align="alignnone" width="640"] タイムトライアルでは10秒刻みで一人ずつスタートしていく[/caption]
[caption id="attachment_31614" align="alignnone" width="640"] タイムトライアル女子対決も![/caption]
[caption id="attachment_31615" align="alignnone" width="640"] バイクを後部よりホールドしてスタートする本気のロードバイク参戦。優勝タイムは28秒だった[/caption]
最後は全員参加で、年齢順に走っていくジャンボリレー。個々の能力や車種でタイム差の開きが非常に大きいため、できる限り年令や車種を考慮しつつ、4つのグループに分けられた。想定外のハプニングもあるが、そこも含めて面白いのがこのリレー。アンカーを務める講師の選手たちまで、各チーム全員が走り切り、スクールは終了となった。
[caption id="attachment_31616" align="alignnone" width="640"] ヘルメットカバーで色分けし、2歳から12歳までの子どもたちが4チームに分かれて戦った[/caption]
[caption id="attachment_31617" align="alignnone" width="640"] チームを背負って、全力の力走。デッドヒートが続く[/caption]
[caption id="attachment_31621" align="alignnone" width="640"] タイムトライアルの表彰は年齢群で分類し開催された。誇らしげな子ども達[/caption]
個人タイムトライアル上位の子どもたちの表彰が行われ、入賞した子供たちは、誇らしそうに講師の選手たちから賞品を受け取っていた。この1日で見違えるほど自転車の扱いが上達した子どもたちも多く、皆、満足げな表情でグリーンドームを後にしていった。
[caption id="attachment_31622" align="alignnone" width="640"] 未就学部門の賞品は小さなお菓子。入賞した子供にとっては価値ある宝物[/caption]
[caption id="attachment_31623" align="alignnone" width="640"] 1日のスクールを終え、達成感のある子どもたちの笑顔が並ぶ。講師たちとの距離もグッと近づいた[/caption]
これまでの開催は、スクール運営に慣れたスタッフの協力を得ていたが、今回の開催からは、前橋市の公益財団法人前橋市まちづくり公社らがバックアップし、地元のボランティアスタッフも参加し、ほぼ地元のスタッフのみで運営され、地域がスクールを企画運営できる体制を示した形となった。
プロの選手たちに触れることで、憧れや関心を持った子どもたちも多いようで、ロード、競輪ともに、競技普及という面でも重要な意味があったように思う。今後このような地域に根ざしたスクールが日本各地で企画開催されていくことを祈りたい。
写真提供:ウィーラースクールin前橋 実行委員会/松島伸安 編集部(P-Navi編集部)