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【松浦悠士の復帰戦】京王閣で感じた手応えと課題 思った以上にあった自分の中の“戦う態勢”

2025/10/17 (金) 18:00

京王閣記念で復帰を果たした松浦悠士(撮影:北山宏一)

 netkeirinをご覧のみなさん、松浦悠士です。やってしまいました…。サマーナイトフェスティバルの落車で2か月以上レースから遠ざかりましたが、先日の京王閣記念でようやく復帰できました。準決勝は残念な結果に終わり、反省しています。今回のコラムは京王閣記念の3走を振り返りたいと思います。

復帰戦は“思った以上”だった

 まずは初日特選ですが、裕友に任せて結果は6着でした。1周のタイムもすごいタイムが出ていましたが、その中でも余力を感じて走ることができました。「あとは踏むコースだけ」って感じだったんですけど…。

 内が大きく空いたときには一瞬だけ入ろうかと思いました。ただ、空いた後はだいたい閉まるイメージがあるので、「ここは外かな」と判断しました。ちょっと待ってから外へ行きましたが、間に合わなかったですね。

勝負どころの判断が難しい(撮影:北山宏一)

 久々の競走でしたが、一走してみて「大丈夫かな」と感じることができました。レースを走る恐怖心もなかったですし、ダメージはあるにはありましたが、想像していた復帰戦のキツさは特に感じず、思った以上にはできたと思います。

 ただ、内に差してしまったり、追走が下手だったなと反省しています。大きく影響することはなかったのですが、人の動きへの対応力という点には少し課題が残りました。

復帰第1戦目は確定板ならずも手応えも得た(撮影:北山宏一)

「帰ってきた」と感じた勝利者インタビュー

 二次予選は小川三士郎君と初連係。プランとしては、初手で前から2番目が理想で、流れで順番が来たら叩きたい感じでしたね。前からなら突っ張りでしたが、斬られてしまいました。そこからは「どう立て直していくか?」と後ろで見ていましたが、少し巻き返しが遅れたかな、という印象でしたね。

 自分としては決してめちゃめちゃ良いわけではありませんでしたが、去年や今年の走りと比べて良かった点も感じることができました。一戸さんの牽制で結構こけそうなくらいの煽りをもらうことになりましたが、踏み込みながら交わせました。前の動きが見えることや、踏みながら避けられた部分は良かったと振り返っています。

 慌てて内を締めたり、中を割りながら捲りに行ったりしているので反省点もありますが、前が行けないところから自分で仕掛けていけたのは良かったと思いますし、手応えを感じました。

二次予選では自力に転じて1着、場内を沸かせた(撮影:北山宏一)

 さらに、二次予選の1着では勝利者インタビューにも行くことができました。メンバー的にも菅田さんに行かれちゃうかなって感じもあって、行くことは想像していませんでした。でも本当にたくさんの方に来ていただいて、うれしかったです。久々に「帰ってきたな」と思いました。

まだまだある感覚のズレ

 初日、2日目と確実に手応えを掴みつつありました。準決勝は眞杉君と一緒になるとは思っていませんでしたし、車番的にも厳しいところがあり、「ある程度は先行も考えないといけないな」という思いで臨みました。駆け含み、先行含みの飛びつきだったり、中団取りだったりのレースを想定していました。初手は中団で、後ろ攻めになるよりは良かったのかなと思います。

 レースでは自分の斬るタイミングやスピード、踏み込むタイミングが良くなかったですね。2センター、4コーナーでもうちょっとガツンと駆けちゃってもよかったと振り返っています。持つようにというペース配分で行った分、駆け方を失敗してしまいました。

準決勝は痛恨の失格に…(写真提供:チャリ・ロト)

 あの展開ならしっかりと駆けて眞杉君と力勝負だと思ったのですが、「少しでもいい着を」と考えて走っているので、あっさり捲られて着に残れないような走りは自分の気持ち的にはナシでしたし、結局飛びつかざるを得ない感覚になってしまいました。「負けるわけにはいかない」という気持ちに体が勝手に反応してしまったと言うか…。

 また、当然あんなに横をやるつもりなどなく、思った以上に体が勝手に動いてしまったというのが正直なところです。僕も結構もたれかかってしまいましたし、相手も避けている分だけ、そのまま制御できずに行ってしまう感じに…。飛び付く前に、もっと風を切るなり、しっかりできることがあったと思います。無茶をしてしまったことを反省しています。

シリーズを終えて思うこと

 復帰戦は3走で終わってしまいましたが、思った以上に駆けられたし、息も想像以上に上がらなかったです。鎖骨や肩甲骨をやったときよりも、しっかりレースができていましたし、レース後の疲労も思いのほかなかったです。肋骨はちょくちょく痛むときがありますが、肺は大丈夫でした。

まだ肋骨は痛むが肺機能は良くなっている(撮影:北山宏一)

 失格してしまったレースではありますが、自分の思う以上に気持ちも体も“戦う態勢”になっていた点は良かったと思います。ちょっとずつレースに慣れていき、「競輪祭あたりで勝負かな」と思っていましたが、脚力的には前橋の寛仁親王牌も結構いい勝負になるかもしれないといった感覚もあります。

 とはいえ、体を思い通りに使えているわけでもなく、上下左右への体の動きや体重移動、体のキレなどはまだまだ落車の影響を感じています。この部分は引き続き乗りながらうまく課題と向き合っていければと思います。

 11月からはトークショーも再開します。関東方面でもありますので、ぜひお楽しみにしていてください。

読者の方から寄せられた質問に答えます

 それでは今月も質問に答えていきたいと思います!

ーー「調子の良さ」を判断するとき、感覚や感性を重視しますか?それとも着やタイムといった結果(数字)を重視しますか?

 これは完全に前者ですね。コンディションとかレースによってタイムはすごく変わりますし、着に関しては前の選手が頑張ってくれたとか、別線がやり合って捲り頃になったとか、本調子ではなくても取れることもあります。「調子の良さ」は感覚がいいっていうのが一番かなと思いますし、自分自身のテンションも上がりますね。

あくまでも調子は感覚でジャッジする(撮影:北山宏一)

ーーコラムで“競走脚”という表現が出てきましたが、欠場が長引くとメンタル的な部分や勝負勘のようなものにも影響がありますか?

 フィジカルもメンタルも両方に影響がありますね。2か月も3か月も空いてしまうと、覚えているものもありますけど、やっぱり日頃の練習とは全然違いますね。選手紹介前の呼び出し時間が何時なのかとか、レースに向かっていく時に、選手紹介から帰ってきて何分あるのかとか、不安ではないんですが、ちょっとそわそわする感じもあります。

 あと普段の練習では「よーい、ドン」でやることが多いですが、競輪は脚を使ってからの勝負なんですよね。脚を使ってからスピードが上がったり、対戦相手と横に並んでモガいたり、練習では違うことがかなりあります。それらはレースを走ってやっていかないと戻っていかない感覚はありますね。

 そのほか、良いときって前の選手が行くかどうか雰囲気でわかるんですよね。結果として踏む前に対応できたりします。でも今は前が踏んでからの対応になっています。

ーー落車明けなど、まだ万全ではないときに、敵は「弱っている部分を突いてくる」ものですか? また、松浦選手自身が落車明けの選手と戦うときに相手の弱点を突こうと考えますか?

 いや、そういうことはないですね。正直、他の選手が落車明けだとして、どこが弱いとかはわからないです。他の選手も僕のどこが良くないとかはわからないと思います。本調子じゃないんだろうな?くらいの感じですね。

 なので「弱い部分を突こう」とかは考えられないです。強いて言えば、例えば自力選手が復帰戦で「ちょっと長めの距離を行きそうだな」とかの想定をしてレースを組んだりとかですかね。もしも選手のコメントで「横に並ばれると厳しいです」とか書かれていたら横に並びに行くかもしれないですけど(笑)。そんな弱みを見せる選手もいないので(笑)

真っ向勝負が基本姿勢だ(撮影:北山宏一)

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松浦悠士の“真っ向勝負!”

松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2019年の競輪祭でGI初優勝を飾り、翌2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し優勝、自身2つ目のGIタイトルを獲得した。その翌年2021年には日本選手権競輪を“有言実行”で優勝。3つ目のGIタイトルを獲得し、グランドスラムへの意識を高めた。2023年はGI優勝こそなかったが、賞金順位でKEIRINグランプリの出場権利を獲得。広島カラーを象徴する3番車で挑んだ大一番は最終直線で渾身の差し切り勝ちを決め、見事グランプリ王者となった。チャンピオンとして臨んだ2024年は度重なる怪我に苛まれてS班の座を明け渡すことになったが、グランドスラムを目指す気持ちには一点の曇りなし。中国地区の大エースとしてさらなる飛躍を目論む。

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