なんでドラマや映画やアニメの主人公達は同じ過ちを繰り返すのか？
いつも疑問だった。
ホームアローンは1でやったことを、形は違えど2でもやらかす。ワンピースも毎回新しい島に着くと、前の島で痛い目にあってるのに、一旦バラバラに動き出す。ハングオーバーもしかり。
一度やらかしてるコトをもう一度やらかすことで物語が始まる。逆を言えば、一度やらかしてることをもう一度やらかさないと、物語にならないのか。
なるほど、そういうことか。
物語とは、何度も同じ過ちを繰り返すことなのだ。

12月29日〜グランプリ前日

ガールズグランプリが終わった時に、その境地に至った。
そう、寺内大吉杯はちょいちょい当たってるものの、目玉であるヤンググランプリ、ガールズグランプリはコテンパンにやられてる。
「昨年と同じだ、、、、」
ガールズグランプリも、テレビで放送していることに気がついた今年は娘と観戦。娘の前でフルボッコにされた父親は、そう呟いた。
物語が走り出したのだ。

12月30日〜グランプリ当日

前日はベビロト終わりに忘年会があったため、朝方に布団に入る。昼過ぎに起きる予定なので、寝る前に寺内大吉杯の事前投票をすます。通称、時限爆弾。散々負けまくってるので、せめてエロい夢を見られるように願いながら爆睡。
が、目覚ましもかけてないのに9時に起床。自分でも分かる。完全にソワソワしてる。時限爆弾は結局リアルタイムで見れる通常爆弾に。結果は不発弾として処理されることに。
「昨年と同じだ、、、、」
もちろん、昨年と同様、エロい夢も見れていない。
グランプリまでの時間はたっぷりあるので散々やったが、もう一度脳内レースでやってみる。
北井の絆先行から番手捲りを打つ郡司。

、、、、やはり郡司だ！！

郡司の後ろにいる岩本は、どこかで捌かれてそう。紐は新山、清水の単騎の2人に自分の走りをするであろう眞杉。そして、脇本の捲りが不発になろうとも現・輪界最強漢、古性は入れとかないと。
郡司から、その4人の折り返しの買い目を、丁寧に買う。
一応、その4人から郡司の3着も保険で購入。
年末ジャンボ宝くじを今年は買わなかったため、いつもより多めに購入。

さあ、準備は整った。

ここからベビロトの仕込みをしながら、大吉杯をチビチビ打つ。昔バイト先の居酒屋で競馬をテレビで映しながら仕込みやってる人がいたが、あの人はオーナーと喧嘩して辞めたはず。元気にしているだろうか？

いよいよ寺内大吉記念杯の決勝。コレが終わればグランプリだ。
昨年はここも外し、身も心も削られたが、今年は違う。自信がある。チビチビ打ってた分、ドカンと入れると、伊藤颯馬から松岡貴久の2着・3着、相手は別線の番手で取ってしまうのだ。いい配当がつき、この3日間がほぼトントンに。

「そういうことか〜」

『2』ならではの物語のアップグレードだ。
グランプリの車券を買い足し、いよいよ競輪芸人2の物語の最終章へ。
嫁が「不適切にもほどある」の再放送を観ていたが、強引にチャンネルを変える。適切な旦那にイラッとした嫁は、コンビニへ。前々から16時20分にはチャンネルを変えると言っていたため、問題無し。今日も娘と観戦。

ファンファーレと共に出揃う選手たち。静岡競輪場はパンパンだ。全員が興奮しているのが画面越しに伝わる。

いよいよ号砲。
まさかの関東勢がSを取った瞬間、勝負師特有の嫌な予感がする。眞杉が郡司に絡まなければいいが、と願いながら周回が過ぎていく。運命の赤板。上がってきた北井に合わせながら踏む眞杉。
「やめろ！！　やめてくれ〜！！　やるなら3番手でー！！」
と、叫ぶ父親に笑う娘。
笑われてもいい。郡司が無事なら。
願いが通じたのか、眞杉は3番手狙い。

「よぉーーし」と思ったのも束の間、紫の稲妻が飛んで来る。
「流すなーーー」と叫ぶ父親を尻目に、笑う娘と流す北井。脇本が叩いてしまう。それに乗っていく清水と新山。切り替える郡司に抵抗する北井。全てがセピア色。隊列は全く縮まらない。直線、逃げてる脇本を差す古性。3番手から清水も差す。郡司は惜しくも3着に届かず。

グランプリが終わってしまった。しかも大敗。悔しさと切なさと寂しさとやっちまったの入り交じった感情。大吉杯の決勝に戻りたい。
「ああ、終わった。まじで終わったー」
頭を抱える父親に
「大丈夫〜？」
と娘が笑いながら声をかけてくれる。優しい娘だ。嫁はまだ帰ってこない。
意を決して8歳の娘に言う。
「しいな、前にあげたお金、ママに内緒で返して」

グランプリを当ててハッピーエンドなった昨年。今年は全て失った。全ての作品の『2』が『1』を超えてるわけではない。当然『2』がコケれば『3』は作られない。が、それは映画の話。現実世界は違う。競輪芸人は『２』がコケても物語は続いていくのだ。そう娘にお金を返すまで。

ー終ー

（あとがき）
競輪芸人2〜博打のコマと共に生きる〜を読んでいただき、ありがとうございました。娘への借金は、その後のミッドナイトで大勝ちし、無事に返済できました。
ちなみに娘は二つ返事で貸してくれました。素晴らしい子どもに育っていると思います。そんな娘とオレの書き初めを添えて、新年の挨拶とかえさせていただきます。今年もよろしくお願いいたします！！
皆様にご武ウンをーーー！！

※文中の開催写真はPerfecta Navi編集部撮影のものです