2022/08/13(土) 10:00 0 4
2021年10月にTIPSTAR DOME CHIBA(千葉市)で開幕した「PIST6 Championship」。すでに数多くの名シーンや名勝負が生まれているが、PIST6で勝利した選手たちはどのような感想を抱いているのだろうか。今回netkeirin編集部ではセカンドクォーターラウンド5で優勝した眞杉匠選手にインタビューを実施した。二度の特別昇級を経て、現在23歳の若さでS級1班に所属。しかも今年は記念開催(GIII)を2度優勝している眞杉選手。まさにエリート街道をひた走っている真っ只中だが「養成所にはギリギリのラインで入所できたくらい」というから驚きだ。今の強さの裏には並々ならぬ努力があったに違いない。※インタビューはオンラインで実施(取材日:2022年7月29日)
ーー眞杉選手は自転車競技の名門・作新学院の出身ですが、元々自転車競技や競輪に興味があったのでしょうか?
いえ、県立高校に落ちてしまって作新学院に入学しただけで、元々自転車部に入りたかったわけではないんです。自転車部に入りたくて作新学院に入学する人も多いのですが、僕は入学前、自転車部の存在すら知らなかったです。
ーー作新学院は当時も自転車競技の強豪校ですよね?
そうですね。とはいえ自転車部がある高校自体少ないですし、当時は県内でも3校くらいしかなかったんです。ただ、ちょうど僕が入学する頃に『弱虫ペダル』が流行っていたこともあり、自転車部を志望する人は多かったと思います。多いと言っても1学年10人くらいですが。
ーー練習や大会などを振り返って一番キツかった場面はなんでしょうか。
ロードレースの大会はきつかったですね。僕はトラック種目がメインだったので、周りについて行くのが精一杯という感じでした。
ーー自転車競技をやりたくて作新学院に入学したわけではない中で厳しい練習に耐えられたモチベーションは何だったのでしょう?
小学生と中学生の頃は野球とテニスをやっていたのですが、全然センスがなかったんです。今も車やバイクが好きですが、当時から乗り物が好きでした。自転車も乗り物ですし、パーツを色々と変えてみたり、そういった部分が好きだったから部活も楽しく続けられたんだと思います。
ーー周りの選手は皆表彰台に乗るくらい強かったんですか?
一つ下の学年の方が強かったですね。幸田光博さん(栃木・67期)の息子の幸田望夢(栃木・115期)や福田滉(栃木・115期)など強い子が多かったので、そちらの方が目立っていました。僕は国体でギリギリ入賞の経験しかなく、インターハイも予選落ちで全然目立っていなかったです。
ーー高校3年時に岩手国体では1kmタイムトライアルで入賞されています。高校時代を振り返っていかがでしたか?
「ギリ」入賞です(笑)。同期の選手と比べると皆はインターハイで優勝していたりするので僕は全然です。
ーー当時はポイントレースなど中長距離種目がメインだったとのことですが、短距離の種目は全くやっていなかったのでしょうか?
トラックレースの中長距離種目であるスクラッチとポイントレースをやっていたのですが、全国大会では予選落ちのレベルでした。短距離は全くやってなかったですね。なので、短距離は競輪学校(※競輪選手養成所)入学試験時の200mタイムトライアルもビリくらいの成績だったと思います。
年々受験生のタイムが上がっていっているので、今じゃもう受かってないと思います(笑)
ーーそこから1kmタイムトライアルという短距離に転向したきっかけは何ですか?
1kmタイムトライアルで入賞した国体が競輪学校の試験の直前だったんです。レースに出て落車などがあると試験を受けられなくなりますし、試験内容も1kmタイムトライアルだったので出場しました。
ーー元々1kmはタイムが出ていたんですか?
恐らく(1分)10秒くらいしか出ていなかったと思います。
ーー競輪選手を目指したきっかけが宇都宮のバンクでの練習時に「間近で競輪選手を見て憧れた」という話がありました。記憶に残っている選手はいますか?
同じバンクで練習していたので競輪選手はとても身近な存在でした。ただ、当時は誰が誰かは全然わかっていなかったです(笑)
ーースポーツで食べていくというのは大きな決断だと感じます。高校卒業後、競輪選手以外の道は考えなかったですか?
高校からそのまま競輪学校に行ったので、そこでは“1年間の合宿”のような気持ちでした(笑)。自転車が好きだったので、部活をそのまま仕事にした感じです。
ーー眞杉選手は思い切りが良い性格ですか?
決断は早いタイプだと思います。最初は大学に進学するつもりだったのですが、進学した先輩から「大学生は自主練が多い」という話を聞いて、自分は大学に行ってからだと競輪学校に受からないな、と思いそのまま競輪学校に進みました。
ーー「学生時代はあまり練習が好きじゃなかった」と聞きましたが、そういった部分が進路にも多少影響しているのでしょうか?
ですね(笑)。
ーー高校時代の自転車競技の同期や先輩、後輩とは今でも連絡をとり合っていますか?
そうですね。森田優弥選手(埼玉・113期)、樋口開土選手(東京・113期)とは合宿をしたりするので、結構連絡はとってます。
ーー初参戦にあたり、練習スタイルなどPIST6に向けて調整された部分はありますか?
正直、PIST6に向けた練習は何もやっていなかったです。カーボンも去年11月の地区プロで使った後、そこから使っていなくて。ただ、同じギヤ倍数でも250mバンクと宇都宮の500mバンクだと感じ方も全く違うので、少しだけ大ギヤの練習はしました。
ーーレース後のインタビューで「ほこりをかぶっていたフレームをきれいにしてきた」と言っていましたが、本当だったんですね(笑)
そうです(笑)。半年使っていなかったので(笑)
ーー元々250mバンクを走られた経験はどの程度あったのでしょうか?
まったく経験ないです。高校生の時に3日ほど走っただけですね。当時は伊豆ベロドロームで行われる大会には出ていなかったので。競輪学校の時に少し走ったくらいでしょうか。
ーー競輪とPIST6は開催の雰囲気も違うと思いますが、初めて出場してみての感想はいかがでしょう?
やはり「1日2走」は忙しいですね。会場の雰囲気はライブみたいで楽しかったです!音響がすごいので、走っていても楽しめます。
ーー1次予選から同期の黒沢征治選手(埼玉・113期)や小松島記念決勝で対戦したばかりの志智俊夫選手(岐阜・70期)らがいる中、どのような心境でしたか?
同期は一緒に走りたくないですね(笑)。やり合ってしまうというか…。普段しないようなレースになってしまいますし…。特に同地区の同期とは本当にやりにくいですね。
ーー黒沢選手とは仲が良いのですか?
仲良いです! よく一緒に練習もしています。
ーー志智選手に関してはいかがでしょうか?
その前の小松島記念で差されそうだったので、今回も逃げ切れるようにと思って走っていました。
ーー2日目からギヤを5.00に上げています。これは決勝で戦うであろう山田義彦選手(埼玉・92期)など大ギヤの選手を見据えての調整だったのでしょうか?
山田さんは5.67のギヤ倍数で、自分と1倍くらい違ったので、それじゃ話にならないと思って上げました。ただギヤを持っていなかったので、売店で1番大きいギヤを買って付けました。
ーーその場で購入されたということは、そのギヤ倍数では一度も練習されていなかったということですよね。
そうですね。ただ、初日は4.69のギヤ倍数で走ったんですが、250mバンクですし、カーボンでディスクなこともあり、そこまで負荷がない感覚でした。なので、ギヤを5.00に上げてもいけそうだと判断しました。
ーー初戦の勢いそのまま決勝へ進出されました。入場シーンは自信に溢れた表情を浮かべてました。どんな気持ちで入場されましたか?
自信はそんなにあったわけではないのですが「楽しもう」と思って走っていました。
ーー残り1周半くらいから後方の山田義彦選手(埼玉・92期)の動きをかなり意識されていたように見えましたが、やはり一番警戒していたのは山田選手だったのでしょうか?
山田さんもですが、根田空史さん(千葉・94期)も強いですし注意していました。ただ何よりも走り方がよくわかっていなかったですね。3番手か4番手くらいのスタートポジションが良いとは聞いていたのですが、先頭になってしまったので、とりあえずは誰かが上がって来てから考えようと思っていました。結果、良いところに入れました。
ーーでは、眞杉選手にとって、残り3周のタイミングで志智選手と神田龍選手(三重・105期)が前に来たのはラッキーでしたか?
2人とも良い感じに仕掛けてくれましたし、良かったですね。
ーーゴール後は笑顔でガッツポーズをされてました。決勝1着でゴール、初出場初優勝はどんな気持ちでしたか?
素直にうれしかったです。同県のカミタクさん(神山拓弥選手・栃木・91期)は3回も優勝してますよね。競輪では追い込み選手なのに、PIST6では先行して逃げ切っちゃうので、もし自分がPIST6で優勝できなかったら帰ってから何か言われるなと思い、その緊張もありました(笑)。雨谷一樹さん(栃木・96期)も優勝してましたし、そのプレッシャーはありました。
ーー優勝インタビューで、山田選手と絡むシーンがありましたが、決勝レース後何か会話されましたか?
たぶん話したと思うのですが、疲れすぎて何を話したか覚えていないです(笑)。山田さんとは競輪でも開催が一緒だったら話をするんですが、今回は興奮していたのと息が上がっていたので、何を喋ったかわからないですね(笑)
ーーちなみに、PIST6の決勝レースで乗っていたARGON18はご自身のですか?高校時代も同じメーカーのカーボンフレームですか?
そうです。高校時代はBOMAとブリヂストンのアンカーに乗ってましたね。
ーー高校時代のカーボンフレームと比べて、現在のARGON18の乗り心地はいかがですか?
高校時代はセッティングの”セ”の字もわからないような感じで、サドルが高くてハンドルが低ければ良いと思って乗っていたので比較にならないと思うのですが(笑)。今競輪で普段から乗っている鉄フレームと比べると、よく進みますね。
ーー履かれていたディスクホイールは、もしかして高校時代から使用されているものですか?
選手になってから購入したものです。でも(ルール上)使用できなかったみたいで、今回は借りたもので走りました。
ーーPIST6で使用されたカーボンフレームと競輪の鉄フレームでは「硬さ」や「しなり」具合、踏み込みの感覚など、違いがあると思います。その辺りの切り替えは難しかったですか?
ギヤが全然違うという部分もあると思うのですが、カーボンの方が体へのダメージが大きい気がしました。1回でも結構脚にガツンとくる感じだったのですが、PIST6はさらに1日2走なので…
ーーそれはカーボンフレームの方が硬いからですか?
そうですね。カーボンの方が硬くて、ギヤも大きい分、脚へのダメージは大きく感じますね。
ーーデビューしてから5年目、特に今年は目覚ましい活躍をされています。当時思い描いていた選手像と現在のご自身を比較していかがですか?
特別昇進した時も「特進しちゃったよ」という驚きの気持ちでした。S級に上がった後すぐのレースでも9着が続き「S級じゃ勝てないのかな」と思っていて、すぐにA級に落ちるんじゃないかと不安でしたね。
ーー眞杉選手がそういった壁にぶつかった時、先輩から「今のスタイルを変えずに行った方が良いよ」というアドバイスがあったそうですが…
そうですね。チャレンジの時に2ヶ月おきに3回ほど落車をしてしまったことがあり、「落車したくないから先行しよう」と思い、先行するようになったことも壁を乗り越えられた要因の一つだと思います。
ーーなるほど。ちなみにラインの先頭を走る機会が多い眞杉選手ですが、単騎戦に強い印象があります。そのあたりPIST6のレースにも合っているような気がします。ご自身ではいかがでしょうか?
後ろに他の選手を連れている時は、自分がダメだと巻き込んでしまいますが、単騎戦やPIST6はそれがないので気持ちは楽ですね。
ーーラインは番手・3番手といった後ろの選手のことも考えて走る必要がありますもんね。
「道連れにしちゃいけない」という気持ちから焦ってしまい、捲りが出なくなってしまったりするのですが、単騎で「ダメでもどうせ自分だけだし」と思っている時は出し切れるんですよね。不思議なんですけど(笑)
ーー先日小松島競輪場で開催された阿波おどり杯争覇戦でも、決勝レースは単騎戦を制して見事優勝されました。あれも思い切ったレース展開だったということですか?
自分は単騎だったので周りも警戒していなかったと思いますし、行けるところからドーンと行こうと思っていました。
ーー徳島ラインの後ろでリラックスされていたように見えました。単騎だったという点が影響していたのでしょうか。
ラインの場合は「仕掛けなきゃいけない」という気持ちが強いのですが、単騎だったので、残り2周回の鐘が鳴る辺りでは、仕掛けるよりもまずは前の動きを見ていました。
ーーその決勝で戦った太田竜馬選手(徳島・109期)とは年齢も近いですが、何か会話はありましたか?
レース後には流れだったりを確認しながら「どういう作戦でしたか?」というような話はしました。
ーー今年は名古屋、前述の小松島と2度のGIII制覇に加えて、PIST6も完全優勝と躍進を遂げていらっしゃいます。ご自身が考える強さの秘訣はなんですか。
強さの秘訣と言っても、GIを走って「自分はまだまだだな」と思っています。なんとか勝ち上がれている感じです。
ーー先輩からのアドバイスにあった「自分のスタイルを変えない」部分以外に、勝ち上がるために意識していることはありますか?
去年よりも積極的に動くことを意識したら競走得点もレース内容も良くなってきましたね。
ーーご自身のレース映像は何回も見て研究されていますか?
何回もは見ていないのですが、開催が終わったら一通り目は通します。
ーー最近特に眞杉選手に対して他選手から「仕掛けどころが上手い」というコメントを向けられているニュースが目に入るので、かなり研究されているのかと思っていました。
いや、全然。不器用なので位置取りは少し苦手なんです。
ーーでは作戦というよりもその時の感覚で動くことが多いのですか?
そうですね。「ここだ」と思ったタイミングで行くことが多いです。
ーー10年目までの“次の5年”で競輪選手として何を目標としていますか?
毎年毎年レベルアップはしていきたいですね。まずはGI決勝に乗れたので、今度は優勝を目指したいです。でも実際にGIを走ってみると「だいぶ厚い壁があるな」と感じます。
ーーどういった部分で、壁の厚さを感じますか?
やはりGIの決勝となると、平然と捲られてしまいますし、自分の調子を良いところで持っていかないと勝負できないと感じました。S級S班の方々はどう調整しているんだろうといつも思います。調子が良くない時でも勝ってますし、凄いですよね。
ーーS級S班といえば関東の先輩として平原康多選手(埼玉・87期)がいらっしゃいますが、相談することはありますか?
アドバイスを貰いに行きますね。前回のサマーナイトフェスティバル(7/16〜7/18)前からあまり成績も良くなかったんです。開催中に先行していても、上手く脚を回せていなく、もう一つ加速ができていないような感覚でした。なので、「後ろについていてどうですか?」と聞いてアドバイスをもらったりしていました。
ただ、ここ最近の調子の悪さはやっぱり夏バテしてるんですかね(笑)。高松宮記念杯(6/16〜6/19)くらいから、調子が良いとは言えないんです。
ーー今年で言うと一番調子が良かったのはどの時期ですか?
5月頭のダービー(日本選手権競輪)頃ですかね。ダービーの時は調子が良くて、それ以外の開催は普通くらいだったと思います。
ーー今後の目標としてS級S班を目指されていると思いますが現実感はどうでしょうか?
まだだいぶ遠いとは思うのですが…そこは狙っていきたいです! 赤パンはカッコいいです!
ーーオールスター競輪の話も聞かせてください。ファン投票では有名選手が軒を連ねる中「第17位」でした。ご自身のTwitterでもツイートされてましたが、この投票結果の率直な感想はいかがですか?
正直に嬉しいです。選ばれると思っていなかったので(笑)。オリオン賞に出場できるのは18位までですが、昨年が20番台後半の順位だったので「10人抜きは無理かな」という気持ちだったのですが、おかげさまでギリ引っ掛かりました(笑)
ーー地元栃木には神山雄一郎選手など強豪選手がたくさんいらっしゃいますよね。普段一緒に練習をしたり、プライベートでも特に仲の良い選手はいますか?
普段一緒に練習をしているのは同期の橋本瑠偉です。あとは119期の小池千啓ら後輩達ですね。
ーー橋本瑠偉選手は自転車競技出身ですよね? 高校時代から親交があったのでしょうか?
いや、彼は4つ上で被ってないんです。
ーーオフの過ごし方なども教えてください。
アウトドアが好きなのでドライブに行ったりします。ジェットスキーも好きですね。
ーー眞杉選手のTwitterのヘッダー画像はスノボですよね?
冬はスノボ、夏はジェットです(笑)。ジェットスキーはこないだも行ってきました! 地元の友達や後輩、選手同士でも行きます。
ーーアウトドア以外でハマっているもの、好きなことはありますか? 高校時代はゲームセンターにハマっていたと聞きました。
あまり家にいたくなくて、お出かけしたいタイプなので映画を見に行くことですかね。最近はマーベルの「ソー:ラブ&サンダー」を見ました。面白かったですよ!見た方が良いです(笑)
ゲームセンターは小さい時から好きで、今も好きです。遠征の時に前泊する場合は時間があれば行ったりします。
ーー高校時代、部活の練習をサボってゲームセンターに行かれていたというのは本当ですか?
高校の時は監督が厳しかったのでサボっていないですよ! 自主練はしていなかったですが(笑)
ーー最後に、眞杉選手の活躍を楽しみにしているファンのみなさまに、一言メッセージをお願いします!
今年S級S班を目指して頑張ります! PIST6もカミタクさんの3回優勝を超えられるように頑張るので応援お願いします!
出身 :栃木県
生年月日:1999/2/1
班級 :S級1班
府県 :栃木県
身長 :175.6cm
【SNSはコチラ】
眞杉匠選手 Twitter
【netkeirinからPIST6のレースに投票しよう!】
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また、出走表の下部にはPIST6攻略法として「予想の基本」を掲載していますので「予想の仕方がわからない」といった初心者の方にも安心です。PIST6の開催日にはレース映像のライブ中継もありますので、ド迫力のスピードバトルを観戦しながら楽しくベッティングしてみてはいかがでしょう。「PIST6 Championship 2022-23」もいよいよセカンドクォーターに突入! すでに楽しんでいる人もこれからの人も目指せ的中!